2025年6月9日から15日にかけて、世界各地でユニークな伝統宗教祭典が開催されます。今回は、日本以外で行われる3つの祭典をご紹介します。それぞれ異なる宗教・地域に根ざした行事で、静粛な儀式から賑やかな祝祭まで多彩な雰囲気を楽しめます。
1、スリランカ仏教の「ポソン・ポヤ祭」
祭典名: ポソン・ポヤ祭(Poson Poya Festival)
祭典日: 2025年6月10日(火)
開催地: スリランカ(主にアヌラーダプラおよびミヒンタレー)
歴史と特色: ポソン・ポヤ祭は、スリランカに仏教が伝来した瞬間を記念する由緒ある仏教行事です。紀元前3世紀、インドの阿育王(アショーカ王)の子である僧マヒンダがスリランカ王デワナンプイヤ・ティッサに仏教を説いた故事にちなみ、毎年6月の満月の日に祝われます  。当日は国民の祝日となり、スリランカ中の仏教徒が白い衣服をまとって聖地ミヒンタレーや古都アヌラーダプラへ巡礼に訪れます  。仏教寺院では特別な礼拝や読経が行われ、多くの参拝者が静かに祈りを捧げます。また夜には紙製の提灯が灯され、信者による音楽や舞踊の伝統芸能が披露される一方、貧しい人々に無料の食事やお茶が振る舞われる慈善も行われます 。お祭り全体が厳かながらも温かい雰囲気に包まれ、スリランカ仏教の信仰心と文化に触れることができるでしょう。肉や酒の販売も自粛されるなど宗教的敬意が払われ、心洗われるような静謐さの中で人々は灯籠の明かりと満月を仰ぎ見て、自らの信仰と向き合います。
参考リンク: [Poson Festival – National Today ](https://nationaltoday.com/poson-festival/) / Poson – Wikipedia
2、ポルトガル・リスボンの「サント・アントニオ祭」
祭典名: サント・アントニオ祭(リスボンの聖アントニオ祭)
祭典日: 毎年6月13日(聖アントニオの記念日)を中心とする祝祭〔2025年は6月12日夜〜13日〕
開催地: ポルトガル・リスボン市内各所(特にアルファマなど歴史地区)
歴史と特色: サント・アントニオ祭は、リスボン出身のカトリック聖人・聖アントニオ(パドヴァのアントニオ)を祝う、リスボン最大級の伝統祭です。その起源は13世紀にさかのぼり、1195年生まれの聖人アントニオへの信仰が元になっています 。毎年6月13日が聖人の祝日にあたり、この日前後には「リスボン祭(Festas de Lisboa)」として1か月にわたりイベントが繰り広げられます  。6月12日夜の前夜祭は「聖アントニオの夜」と呼ばれ、旧市街の路地という路地が無数の提灯や旗でカラフルに飾られ、街中が陽気な踊りと歌に沸き返ります  。アルファマやバイロ・アルトといった歴史地区では、住民たちが家の前で炭火焼きイワシ(イワシの塩焼き)を振る舞い、芳ばしいイワシの香りとともに人々が集いビールやワインで乾杯します  。6月13日当日には、花嫁花婿が市をあげて集団結婚式を挙げる「聖アントニオ婚」が執り行われるほか 、昼には聖人像を担いだ宗教行列が大聖堂周辺を練り歩き、祝祭に宗教的な彩りを添えます 。夜には目玉イベントの「マルシャ(行進)パレード」がリスボン目抜き通りの自由通り(アベニーダ・ダ・リベルダーデ)で開催され、各地区代表の踊り子たちが華やかな衣装と振り付けで競演します 。陽気なファドの歌声や伝統舞踊、焚かれた焚火を囲むダンスなど、街全体が一大パーティー会場と化す賑やかな祭典です。リスボンっ子の郷土愛と歓迎ムードにあふれ、旅行者も一緒になって踊り明かせることでしょう。
参考リンク: [Festas de Lisboa – Visit Portugal公式  ](https://www.visitportugal.com/en/content/festas-de-lisboa) / Lisbon’s Saint Anthony Festivals – Luisa Paixão Blog
3、ボリビア・ラパスの「グラン・ポデール祭」
祭典名: グラン・ポデール祭(Fiesta del Gran Poder)
祭典日: 聖三位一体の祝日直後の土曜日〔2025年は6月14日(土)〕
開催地: ボリビア・ラパス市中心部一帯
歴史と特色: グラン・ポデール祭は、ラパス市最大のフォルクローレ(民俗芸能)の祭典で、「偉大な力」を意味する名のとおりキリスト教のイエス・キリスト(大いなる力の主)への信仰に端を発しています  。起源は20世紀初頭、先住民居住区チョキニ地区の小さな教会で奇跡を起こしたとされるキリスト像の絵画を巡るろうそく行列でした 。その素朴な巡礼が時を経て発展し、現在では5万人以上の踊り手と楽隊が参加するカーニバルさながらの大パレードへと変貌しています  。祭り当日のラパスは朝から熱気に包まれ、色とりどりの派手な衣装に身を包んだ踊り手のグループ(60以上の舞踊隊)が次々と街に繰り出します 。先スペイン時代から伝わる先住民の農耕・収穫儀礼に由来する踊りや、スペイン植民地時代の影響を受けたモレナーダ(黒人王の舞踏)やディアブラーダ(悪魔の踊り)など、多彩な演目が朝から夜中まで続きます 。例えば、女性たちはボンボン帽に三つ編みという伝統衣装で優雅に舞い、男性たちは征服者や悪魔に扮した仮面を付け勇壮に踊ります。ブラスバンドの陽気な演奏に合わせ、山岳都市ラパスの通りは終日人波と音楽にあふれます。聖なる像への敬虔さを背景に持ちながらも、祭り自体は先住民アヤマラ文化の色彩が濃く 、観客も一緒になって踊り飲み明かす熱狂的なストリート・パーティーです  。この祭典は2019年にユネスコ無形文化遺産にも登録されており、ボリビアの多文化融合の象徴ともいえるイベントです。きらびやかな衣装には数千ドル規模の費用と数か月の準備が費やされ、踊り手たちはプライドをかけて技を競います 。ラパスにこの時期を訪れれば、カトリックと先住民信仰が融合した独特の祝祭空間で、一生に一度の感動的な体験ができるでしょう。
参考リンク: ボリビアの祭りグラン・ポデール(旅行記) / [UNESCO無形文化遺産: ラパスのグラン・ポデール祭  ](https://ich.unesco.org/en/RL/festival-of-the-santisima-trinidad-del-senor-jesus-del-gran-poder-in-la-paz-01389)
世界には、静かに祈りを捧げる祭典もあれば、心踊るリズムと色彩があふれる祝祭もあります。それぞれの土地で大切に受け継がれてきた祭りには、信仰と文化、そして人々の思いが深く息づいています。
今週紹介した祭典を通して、異なる宗教や地域に根ざした価値観や美意識に触れていただけたなら幸いです。来週もまた、世界のどこかで行われる魅力的な祭典をご紹介しますので、どうぞお楽しみに。
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