春が深まり、新緑のまぶしい季節になると、日本各地の神社では地域に根ざした伝統的な祭典が相次いで行われます。今回は、2025年4月21日から27日の間に開催される3つの祭典を、東日本・中部・西日本からそれぞれ1つずつ厳選してご紹介します。どれも長い歴史と地域の人々の信仰に支えられた、春ならではの行事ばかりです。
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① 三之宮比々多神社(神奈川県伊勢原市)例大祭「三宮祭」
•祭典日:2025年4月21日(月)・22日(火)
•御神徳:国土安泰、酒造繁栄、産業振興
•所在地:神奈川県伊勢原市三ノ宮
三之宮比々多神社は、関東地方でも有数の古社とされ、その創建は神代に遡るといわれています。縄文時代の祭祀跡が社地内から多数発見されており、古代から人々の信仰を集めてきた「聖地」です。主祭神である豊斟渟尊(とよくむぬのみこと)は国土生成の神、また酒解神(さかとけのかみ)は酒造・穀物の神として知られ、現在でも酒造業関係者の参拝が絶えません。
毎年4月21日・22日に開催される春の例大祭「三宮祭」は、地域最大の祭礼として知られ、氏子町内からは3基の山車が出されます。それぞれの山車には、加藤清正・熊谷直実・仁木弾正といった武将のからくり人形が載せられ、町中を巡行します。この人形たちは頭や腕が巧みに動く精巧な仕掛けが施されており、子どもたちにも大人気です。
また、祭礼の期間中には境内に約200軒もの苗木業者が軒を連ねる「植木市」が開かれ、花や盆栽、庭木などを求める人々でにぎわいます。春の陽気のなかで植物と触れ合い、古の神々に祈りを捧げるひとときは、まさに心洗われる体験です。
•参考リンク:伊勢原市観光協会「三之宮比々多神社」紹介ページ
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② 横松神明社(愛知県阿久比町)春祭り「横松地区祭礼」
•祭典日:2025年4月26日(土)・27日(日)
•御神徳:五穀豊穣、地域安泰、家庭円満
•所在地:愛知県知多郡阿久比町横松
阿久比町に鎮座する横松神明社は、天照大神を主祭神とする神社で、村の守護神として古くから厚く信仰されています。中でも春祭り「横松地区祭礼」は、山車や芸能奉納が盛大に行われることで知られ、明治時代初期から続くとされる地域伝統の祭りです。
見どころは、屋根の上に人が乗ることができる大型の「横社山車」。毎年、若衆たちが山車を曳いて町内を巡行し、要所で披露される**大回転(どんでん)**は大迫力。宵宮では108張もの提灯が灯された幻想的な夜山車が登場し、ゆっくりと進む山車の姿が地域の夜を照らします。
昭和34年の伊勢湾台風により山車は一度解体されましたが、平成4年に地元住民の努力により復元され、再び町の誇りとして活躍するようになりました。太刀振りや三番叟といった郷土芸能も奉納され、地域の若者や子どもたちがその継承を担っています。
この春祭りは、ただの行事ではなく、地域の絆を再確認する場であり、過去から未来へと受け継がれる信仰の形そのものです。
•参考リンク:阿久比町公式サイト「横松春祭り」紹介ページ
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③ 元伊勢 籠神社(京都府宮津市)例大祭「葵祭」
•祭典日:2025年4月24日(木)
•御神徳:産業繁栄、再生、五穀豊穣
•所在地:京都府宮津市大垣
「元伊勢」の名を持つ籠神社は、伊勢神宮に豊受大神が遷座される以前に祀られていたとされる、日本最古級の神社のひとつです。社殿は格式高く、全国の神社の中でも別格の存在といえます。毎年4月24日に斎行される「葵祭(あおいまつり)」は、平安時代の宮中祭祀に源流を持つ、非常に由緒正しい祭典です。
この祭では、藤の花が咲き誇る境内で、豊受大神の御神霊を神輿に遷しての「御神幸(ごしんこう)」が行われます。鳳輦(ほうれん)を中心とした渡御行列は、荘厳な雰囲気の中で進み、各所では神職や地元の人々による太刀振り、剣鉾、神楽などの神事芸能が奉納されます。
これらの奉納芸能は京都府無形民俗文化財にも指定されており、太古から続く「神の再生」を象徴する舞いや所作の数々は、神社に集う人々の心を静かに打ちます。また、祭の名にある「葵」は豊受大神とゆかりが深く、祭礼の季節には境内の藤とともに、神聖な花として飾られます。
歴史と神話が交差する荘厳な空気の中で、日本人の精神文化の根幹に触れることができる、貴重な祭典です。
•参考リンク:籠神社公式サイト「葵祭」紹介ページ
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おわりに
今回ご紹介した3つの祭典は、それぞれ異なる土地と歴史、そして文化を背景に持ち、それぞれの地域に根ざした祈りと伝統が息づいています。春という季節は、自然の生命力とともに、人の想いや記憶も芽吹かせてくれるもの。
旅先として神社祭典を訪れることで、ただの観光とは違う「心に響く時間」に出会えるかもしれません。ぜひ今年の春は、地域の祭りに足を運んで、日本の豊かな文化を体感してみてください。
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