周易64卦384爻占断
353、風水渙(ふうすいかん)5爻
◇ 風水渙とは何か?
風水渙(ふうすいかん)は、「渙=散らす」卦です。
ただ散って無くなってしまうのではなく、閉塞して通らなくなったものを散らし、滞った流れを通すところに眼目があります。
心のこわばり、誤解、隔たり、行き詰まり――そうした“固着した障害”がゆるみ、動き出す入口を示します。
◆ 卦全体が教えてくれること
渙の時は、これまで艱難があった人は、辛苦から解放され、これまで順調だった人は、渙散の危険に晒されます。
停滞を吹き散らすには、独りで抱え込むより、信頼できる助力者・仲介者・仕組みを借りて、まず流れを生む。
散らすべきもの(疑い・こだわり・混線)を散らし、守るべき核心(誠・筋道)は残す――この仕分けが、渙の吉凶を分けます。
◆ 5爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「その大號(たいごう)を渙汗(かんかん)す。王居(おうきょ)を渙(ち)らして咎(とが)なし。」
【象伝】
「王居(おうきょ)咎(とが)なきは、正位(せいい)なればなり。」
● 解釈
五爻は、この卦で中心となって事を動かす立場です。
ここでいう「渙汗」は、熱がこもった体が汗で軽くなるように、重い不安や行き詰まりを外へ出して鎮める喩えです。つまり「大號」とは、人々の迷いを断ち切るための、はっきりした方針の提示や大きな決定です。小さな言い訳や場当たりの対応ではなく、筋の通った方向づけが求められます。
ただ、それだけでは足りません。渙の苦しさは、心だけでなく生活や現場にも及びます。
そこで「王居を渙らす」が続きます。「王居」は住まいのことではなく、上にある者が握っている備え――資源、蓄え、配分の権限、支援の手段といったものを指します。つまり、言葉で励ますだけでなく、必要な所へ実際に手当てを回し、困窮から解放してゆく。そうした現実の支えが加わって、初めて世の空気が変わります。
象伝が「咎なし」を「正位」と結びつけるのは、ここが私情の施しではなく、責任ある立場として行うべき配分だからです。えこひいきや私益が混じれば、渙は成功せず、別の不満を生み出します。正しい位置に立って、正しく配るからこそ、全体が落ち着き、怨みが残らないのです。
まとめると、五爻は「宣言」と「手当て」の二本立てで、渙の停滞を抜く働きです。大きく示し、実際に支える。その姿勢で対処することにより、停滞した事態は打開されてゆきます。
◆ 含まれる教え
- 停滞して迷いが広がっている時ほど、方針は大きく明確に示す
- 言葉だけでなく、実際の支え(資源・配分)も伴わせる
- 私益ではなく、公のための判断として行う
- 一度動き出したら、途中で腰砕けにならず初志を通す
◆ 仕事
仕事では、組織や現場の不安・混乱を、方針と手当てで鎮める局面です。
- 立場のある人ほど、曖昧な慰めではなく「何をどうするか」を打ち出す必要がある
- ルール整備・制度改定・方針の明文化など「大号」が効く
- それに加えて、予算・人員・時間配分などの「王居」を動かすと、停滞がほどける
- 強く押す場面はあってよいが、理屈だけで押し切らず、相手にも利益が残る形にするのが吉
◆ 恋愛
恋愛では、散っていた気持ちや状況を、はっきりした言葉と、誠実な行動で整える象です。
- 関係を曖昧にせず、意思表示を明確にするほど流れが良くなる
- 「口だけ」ではなく、実際の支え(会う時間、気遣い、現実面の配慮)が伴うほど信頼が固まる
- 迷いが増えるほど縁が薄くなりやすいので、心をしっかりと定める事が必要
◆ 風水渙・5爻が教えてくれる生き方
渙のまっただ中で、人が困るのは「固着した憂悶の中で何を信じて進めばよいか」が見えなくなる時です。
五爻はそのとき、大きな方針を打ち出すことにより、憂悶を汗のように外へ出し、加えるに現実の支えも差し出して人心を安んじることを教えます。
正しい位置にある者が、公のために動くなら咎はない。むしろ、そこで力を出し切ってこそ、暗い停滞を一掃し、渙を亨通へ変えていける――それがこの爻の骨子です。

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