周易64卦384爻占断
347、兌為沢(だいたく)5爻
◇ 兌為沢とは何か?
兌為沢(だいたく)は、「兌(よろこび)」が重なる卦です。
人の心をほぐし、場を和らげ、交流を滑らかにする力があります。
ただしその悦びは、放っておくと軽さや甘さへ傾きやすく、言葉・好意・快さが「芯」を削る形で働くこともあります。
兌為沢は、悦びを徳として活かすために、誠実さと節度の両方を求める卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
悦びは、単に数を増やすものではなく、これに溺れることを抑えて和順を保つものでもあります。
誰と交わり、どこまで許し、どこで止めるか。
兌為沢は、和やかさを失わずに、しかし甘さに流されず、悦びを正しく運用する筋道を教えています。
◆ 五爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「剝(はく)に孚(まこと)す。厲(あやう)きあり。」
【象伝】
「剝(はく)に孚(まこと)するは、位(くらい)正当なればなり。」
● 解釈
五爻は、この卦の中心に近い尊い位置で、剛(しっかりした芯)を保ちながら中を得るところです。
だからここには「孚(まこと)」――誠で人に接し、信を置いて扱う姿勢が現れます。
ところが爻辞は、その誠が向けられる先を「剝」と表現します。
「剝」は、物事の力をそぎ落とすような作用であり、ここではとくに、悦びや言葉の力で人の剛健さを鈍らせる要素を含んだ相手・状況を指していると読みます。
つまり五爻は、そうした“削ぐ力”を持つものに対しても、誠をもって接しようとする。
しかしそれは、当然ながら「厲(あやう)きあり」――危うさを伴います。
では、なぜ象伝は「位正当なればなり」と言うのか。
それは、五爻が正しい立場と安定した基礎を備えているからです。
立場が弱ければ、危うい相手は隔てるしかありません。けれど立場が確かなら、ただ切り捨てたり排除したりするのではなく、包み込みつつ導くという選択が可能になります。
ここでいう「孚」は、相手に迎合する甘さではありません。誠の扱いで相手の歪みを正し、最終的に真実の和順へ寄せる――その方向を含みます。
ただし、誠は扱いを誤ると裏目に出ます。
親切が、相手の都合に利用される形へ変わることがある。
善意が、言葉や楽しさの綾に絡め取られる形になることがある。
だからこの爻が求めるのは、
誠を失わず、しかし境目を失わないことです。
要点はここです。
- 「信じる」ことは大切だが、任せ切るのとは違う。
- 「包む」ことは徳だが、線を引くことがセットで要る。
この二つを揃えられるとき、危うさを抱えながらも、五爻が“主の徳”を持つものとして成り立ちます。
◆ 含まれる教え
- 悦びや巧い言葉は、人の芯をそぐことがある。だからこそ慎重が要る。
- 危うい相手でも、正しい立場にある者は誠実さをもって応対し、和順へ向け直せる。
- ただし誠が甘さに変わると、利用されて剝の害が表に出る。
- 「誠」+「節度(境目)」+「真実の和順をもって相手を従わせる」が揃って、はじめて吉に近づく。
◆ 仕事
仕事の場面では、
人当たりの良さ・口のうまさ・魅惑的な提案に引き寄せられやすい時です。
こちらが善意で動いたことが、相手に都合よく使われる危険もあります。
- 条件や責任の範囲を曖昧にしない
- 約束は形にして残す
- 一度にすべてを任せず、段階を踏んで確認する
こうした“境目”が、五爻の「孚」を生かします。
前へ出るより、慎みをもって接するほうが無難です。
◆ 恋愛
恋愛では、魅力や言葉に「信」を置きやすい一方で、
相手側に隠れた事情があるなど、あとで剝のように削られる形になりやすい含みがあります。
- 急いで結論を出さない
- 事実確認を丁寧にする
- 仲人口や雰囲気だけで決めない
欠点を知った上で選ぶなら別ですが、基本は慎重な対応がよい爻です。
◆ 兌為沢・五爻が教えてくれる生き方
この爻が教えるのは、
誠だけでも足りず、警戒だけでも足りないということです。
誠実さを保ちながら、巧言をもって人に取り入ろうとする危険を持つものに対する。
危うい相手を排除せずに扱うなら、なおさら筋を立てる。
五爻は、甘言や悦びに惑わされずに和順をもって従わせる――その「主の節度」を示しています。

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