周易64卦384爻占断
298、火風鼎(かふうてい)4爻
◇ 鼎とは何か?
火風鼎(かふうてい)は、古いものを取り除いて器を整え、新しい中身を入れて煮あげ、世を養うことを象(かたど)った卦です。
鼎は「料理の器」であると同時に、「人や才を用いて価値を世に出す仕組み」でもあります。だからこそ、中身が良くても、支える足・持ち上げる耳・運ぶ手順に過失があると、鼎ごと倒れてすべてを失う――という厳しい教えも含みます。
四爻は、まさに「重みを受け止めきれず、ひっくり返してしまう」局面です。
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◆ 卦全体が教えてくれること
鼎が教える大枠は次の通りです。
- 責任が重くなるほど、支える側の基礎(人選・分限・公正さ)が問われる
- 背伸びや偏りがあると、鼎は倒れ、成果も信用も一度に失う
- 鼎は「うまく煮る」だけでなく、こぼさず供する責任まで含む
四爻は、ここを最も強く戒めます。
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◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞(読み)】
鼎(かなえ)・足(あし)を折(お)る。
公(こう)の餗(そく)を覆(くつがえ)す。
その形(かたち)渥(あく)す。
凶(きょう)。
【象伝(読み)】
公(こう)の餗(そく)を覆(くつが)えす、信(まことに)如何(いか)にせん。
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● 解釈
四爻も鼎の「実(み)」がある、つまり中身はあります。しかも三陽の極に当たり、内容の重さが最も大きくなりやすいところです。
ところが、その重さを支える土台が弱い。ここで言う土台は「鼎の足」で、足が折れれば、鼎は傾き、最後はひっくり返ります。これが「鼎、足を折る」です。
結果として起こるのが「公の餗を覆す」。餗は鼎の中の珍味で、しかも「公の」とわざわざ言うのは、自分の私的な楽しみではなく、上の役目(大切な使命・公の用)に供するものだからです。
つまり四爻は、
- 中身は立派
- 任されている役目も重い
- けれど支えが弱く、扱いを誤って全部こぼす
という凶の筋道がはっきり描かれます。
そして「その形渥す」。ここは、単に恥をかく程度ではなく、重い罰・取り返しのつかない処分に及ぶほどの失態として言われています。
象伝の「信如何せん」は、言い換えると、信(まこと・信用・誠実さ)をどうして保てようか、保てるはずがないという嘆きです。
一度ひっくり返して「公の餗」をこぼすと、能力の有無以前に、任せる側から見て「任せられない」と見なされ、信用が立ちにくい。ここが四爻の怖さです。
またこの爻には、偏りの構図が含まれます。
本来は、上の重責にふさわしい助け(筋の通った支え)を得て、鼎を安定させるべきなのに、足の弱いところ(否き疾いを抱えるもの、私的に惹かれるもの、甘さを誘うもの)へ寄ってしまい、大事を倒す。
「自分の好むところに溺れて本分を損ねる」という要点は、ここに集約されます。
要するに四爻は、
職務が重くなるほど、土台・人選・節度に相応したものがあるかが問割れる爻であり、背伸びや私的な偏りが入ると、鼎ごと倒れて、責任だけが残る――という凶意です。
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◆ 含まれる教え
- 中身が立派でも、支える基礎が弱ければ、全てをこぼす
- 公の場に供するものを失えば、能力より先に信用が崩れる
- 分限を越えた欲・背伸び・偏りは、倒壊を招く
- 任せるべき支えを誤ると、足が折れる(体制が崩れる)
- ここは「押し切る」ではなく、断然止まって整える局面
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◆ 仕事
仕事では、大役・高利益・重要案件を抱えやすい一方で、足場が薄いと一気に崩れます。
典型は、
- 体制や人員が足りないのに案件だけ大きくする
- 基礎の確認を省いて突き進む
- 信頼できない人物(利を誘う者、足を引く者)に寄ってしまう
などです。
今は拡大や勝負より、
- 足場(資金繰り・手順・契約・責任分界)を固める
- 人選を見直す
- 背伸びする条件を切る
が最優先。ここを誤ると、成果だけでなく信用まで同時に倒れます。
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◆ 恋愛
恋愛では、分相応を越えた期待や、私情の偏りが強い時に、この爻の凶が出やすいです。
勢いで押し通そうとしたり、相手を見誤ったり、無理にまとめようとすると、かえって大きく壊れます。
四爻は「強いて進むな」の警告が強いところなので、今は
- 焦って形にしない
- 不安定な要素(信用できない点、隠れた問題)を見過ごさない
- いったん止めて整える
が安全です。
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◆ 火風鼎・四爻が教える生き方
鼎は、価値あるものを煮あげて人に供する器です。四爻は、その器が重みに耐えきれず倒れる怖さを示します。
中身があるからこそ、任される。任されるからこそ、失敗は「こぼした」だけでは終わらず、信用の損失まで伴う。
だから四爻は、
好むところに溺れず、分限を守り、足場を固め、支えを正しく選べ
と厳しく言います。
ここで踏みとどまり、基礎を整え、背伸びをやめれば、倒れる凶を避けられる――それが四爻の現実的な教えです。

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