282、沢水困(たくすいこん)上爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

282、沢水困(たくすいこん)上爻

◇ 困とは何か?

沢(兌)の水が下へ漏れ落ち、水(坎)が深い穴へ沈みこむ象から、外に助けが見えにくく、内には焦りが募りやすい「困窮・行き詰まり」の時を表します。上爻はその極みにあたり、困の辛苦がそろそろ終わりに向かう一方で、気持ちはまだ揺れて定まりにくい——そんな「転機手前の不安定さ」が強く出る位置です。

◆ 卦全体が教えてくれること

困の時は、力任せに押すほど深みに入りやすい。けれども、ただ耐えるだけでも抜け出しにくい。大切なのは、焦りのまま動いて悔いを増やすのではなく、いったん思い直して、機が熟したところで筋を通して動くことです。困の終盤ほど「今だ」と「まだだ」の見分けが難しくなるので、落ち着きと立て直しの決断が問われます。

◆ 上爻の爻辞と解釈

【爻辞(読み)】

「葛藟(かつるい)に困(くる)しむ。おい(ここ)に臲卼(げつごつ)。曰(いわ)く、動(うご)けば悔(く)ゆ・と。悔(く)ゆる有(あ)って往(ゆ)けば吉。」

【象伝(読み)】

「葛藟(かつるい)に困(くる)しむは、未(いま)だ当(あた)らざるなり。動(うご)けば悔(く)ゆ。悔(く)ゆる有(あ)れば吉にして行くなり。」

● 解釈

上爻は、卦のいちばん高いところにあります。初爻が「切り株」にたとえられたのに対して、上爻は「葛藟(つる草)」にたとえられます。つる草は絡みつき、風に揺れ、落ち着きにくい。ここでいう「臲卼(げつごつ)」も、足場が悪いというより、心がふらつき不安定で、揺れが止まらない感じを表しています。

この不安定さのまま動けば、困の中でさらに迷いを深めやすい——それが「動けば悔ゆ」です。ここでの“悔い”は、あとから「しまった」と苦い結果に結びつく悔いです。だからこそ、上爻は自分に言い聞かせるように「今は軽々しく動くな」と戒めています。

けれども、そこで終わりではありません。後半にある「悔ゆる有って往けば吉」の“悔い”は、同じ字でも中身が違い、「悔い改める」「立て直す」という意味合いです。つまり、焦りに任せた動きをいったん引き戻し、考え直して出直すなら、そこで初めて道が開ける。困が極まって終わりに向かう転機を、「不安の揺れ」と「更改しての前進」に分けて示しているのが、この上爻の核心です。

さらに、変じて天水訟(争い・言い分の衝突を招きやすい象)に向かう面も含むため、競り合う気持ちで先を争うと、いらぬ対立を生みやすい。だからこそ、急がず落ち着いて、転機の見極めを誤らないことが大事になります。

◆ 含まれる教え

  • 不安が強い時ほど、焦りのまま動くと「苦い悔い」になりやすい
  • いったん思い直し、立て直してから動くと「吉」に転じる
  • 困の終盤は転機が近いが、その見極めがいちばん難しい
  • 争う気持ち・競り合う姿勢は、対立を招きやすい
  • 「今すぐ」でも「投げ出す」でもなく、機を見て筋を通すこと

◆ 仕事

状況は開けそうで開けきらず、こちらの気持ちだけが先に焦る——そういう局面に出やすい時です。急いで打ち手を増やすより、いったん方針と順序を整え、「出直す」形で仕切り直す方が結果につながります。交渉や対外対応は、言い勝とうとするほどこじれやすいので、争点を増やさず、落ち着いた言葉で段取りを固めるのが安全です。

◆ 恋愛

進めばうまく行きそうに思えるのに、どこか不安が消えない——そんな揺れが出やすい時です。勢いで押すと「動けば悔ゆ」になりやすく、逆に諦めてしまうのも早い。いったん気持ちを整え、言い方や距離感を改めてから動くと、同じ一歩でも“吉になりやすい一歩”に変わります。焦って結論を急ぐより、「出直して整える」ことがこの爻の要点です。

◆ 沢水困・上爻が教える生き方

揺れている自分を責めるより、まず「揺れのまま動かない」こと。そして、思い直して、立て直して、機を見て動くこと。困の終わりは近いのに、その転機は見えにくい——だからこそ、軽率な一歩を慎み、改めた一歩を選ぶ。上爻は、「悔いを“苦い結果”にせず、“立て直し”に変えよ」と静かに教えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました