周易６４卦３８４爻占断
２４５、山沢損（さんたくそん）５爻
◇ 損とは何か？
山沢損（さんたくそん）は、「減らして補う」「身を削って不足を救う」ことを象徴する卦です。
上卦は艮（山）、下卦は兌（沢）。沢の潤い（ゆとり）を減らして山の不足を補う──つまり、余裕ある側が譲り、足りない側を支えるという構図が根本にあります。
損は、単なる「損失」を意味しません。
むしろ、時に応じて 必要な削減を行い、正しい配分を回復する ことで、全体の破綻を防ぐ卦です。
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◆ 卦全体が教えてくれること
損の卦が教えるのは、次の一点です。
「今は足すより先に、減らして整えるべき時がある」。
- 余っているものを抱え込めば、別の場所が崩れる
- 出し惜しみすれば、機を失い、かえって損が大きくなる
- ただし、削り方を誤れば、道義を損ね、破綻へ傾く
ゆえに損では、“急ぐべき損”と“慎むべき損”が厳密に分かれます。
この卦の要点は、減らす行為そのものよりも、「どれを、どこまで、いつ損するか」の判断にあります。
六五は、損の道が進んだ先で、思いがけぬ助けが上から与えられる地点です。
自力で取りに行くのではなく、徳により、自然に集まる益を受ける──ここに「元吉」の理由があります。
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◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「或るいは之を益す。十朋（ぽう）の亀（き）も違（たが）う克（あた）わず。元吉。」
【象伝】
「六五の元吉は、上より祐（たす）くるなり。」
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● 解釈
五爻は陰爻で君位にあり、損の卦においては、謙徳をもって下に聴く明君の象とされます。
この位置は「損して益する側」ではなく、不足を補われる側ですが、ここに「損すべきものが最早や無い」意味があります。
「或るいは之を益す」と“疑いの語”が入るのは、益が確定した努力の成果ではなく、
期待せずして到来する助けを示すためです。
応位の九二は「損せずして之を益す」とあって下から上を益しません。
ゆえに六五の益は、比爻の上爻、あるいはさらに高いところ（天の祐け）から来る──これが象伝の「上より祐くるなり」です。
「十朋の亀」とは最高額の価値を持つ元亀で、
それほどの霊験・重みある徴（しるし）でも 違うことができない、つまり占うまでもなく「元吉」だという強い断です。
この吉は、奪い取る吉ではなく、守り、徳を損ねず、時を違えずして受ける吉です。
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◆ 含まれる教え
この爻が教えるのは、損の極における転機の掴み方です。
- 益は「取りに行く」より「受け取れる器を整える」
- 期待や欲で動けば、かえって福が逃げる
- 守ってこそ来る助けがある
- 人の力（上の祐け）を借りることを恥じない
- 好調な時ほど、驕りを慎み、地盤を固める
損の卦の終盤で「元吉」が出るのは、削るべきを削り、
私心を減らしたところへ、自然に益が集まるからです。
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◆ 仕事
仕事では、資金難・資源不足・詰まりが解消しやすい象です。
ただし、自分から拡大を仕掛けて獲るのではなく、
- 体制を整える
- 相談役・顧問格の人物を重用する
- 目上や先輩の力を借りる
- 地盤を固め、無理に前へ出ない
こうした「守って整える」姿勢が、そのまま成果になります。
談判・取引も順調に運び、利益を得やすいが、独断よりも上位者の名義・助力が鍵となります。
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◆ 恋愛
縁談・恋愛では、概ね良縁と見ます。
特に、
- 仲介者に恵まれる
- 周囲（目上）からの後押しが入る
- 形が整い、まとまりやすい
という象が強い。
ただし「上より祐くる」には、上から押し付けられるような形も含まれるため、
当人の気持ちと周囲の事情の調整が必要です。
受け身の吉である分、焦って強引に固めるより、落ち着いて整えていく方が結果が良いでしょう。
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◆ 山沢損（五爻）が教えてくれる生き方
五爻が教える生き方は、こうまとめられます。
「福は、奪って得るものではない。
削るべきを削り、守るべきを守る者に、上から自然に与えられる。」
- いまは攻めるより、足場を固める
- 調子が良い時ほど、心を引き締める
- 助けを受け取れる“器”を整える
- 目上・先達の導きに従い、道を外さない
そうして得た益は、「十朋の亀も違う克わず」と言うほど確かな吉となり、
無理なく、しかし大きく、人生を押し上げる力となるのです。
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