244、山沢損(さんたくそん)4爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

244、山沢損(さんたくそん)4爻

◇ 損とは何か?

山沢損(さんたくそん)は、「余りあるところを減らして、足りないところを補う」卦です。

上卦は艮(山)、下卦は兌(沢)。沢の潤いが山に吸い上げられるように、下から上へと力が移り、結果として全体の均衡が整っていきます。

損は単なる「損失」ではありません。

大事なのは、どこを減らし、どこを満たすかという配分の智慧です。

減らすべきものを減らし、補うべきところに速やかに手当てすることで、かえって組織も関係も健全に回り出す――それが損の核心です。

◆ 卦全体が教えてくれること

損の卦は、

  • 自分の側の余力を差し出す局面
  • 欠乏・不如意を「手当て」で回復させる局面
  • 先延ばしが傷を深くする局面

を示します。

そして損の運用には二つの要点があります。

一つは、処置を遅らせないこと。

もう一つは、自我を張って背く(睽)方向へ動かないこと。

四爻はとくに、「不足を抱える側」が、下からの援助によって欠けを補い、動けなかったものが動けるようになる――その回復の要点を示します。

◆ 四爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「其の疾(やま)いを損す。遄(すみや)かならしむれば喜び有り、咎なし。」

【象伝】

「其の疾(やま)いを損するは、また喜ぶべきなり。」

● 解釈

四爻は、外卦にあって「乏しさ」を抱えやすい位置です。

しかも陰爻で、力が足りず、思うように身動きが取れない――その状態を爻辞は「疾」と呼びます。ここで言う疾は、病気そのものよりも、働きが鈍り、思うように動けない弱さ・欠けの象徴です。

そこで「其の疾いを損す」とは、

欠けや弱さを“減らす”=補って取り去るという言い方です。

健康になると言わず、病を減らすと言うのと同じで、損の卦意に合わせた表現になっています。

そして鍵は「遄かならしむれば」です。

この不足は、迅速な手当てによってこそ癒える。遅れれば遅れるほど、欠けは広がり、背反(睽)の兆しが生まれます。

だから、下(応爻=初爻)からの助けを借りて、迷わず整えるなら「喜び有り、咎なし」となるのです。

象伝が「また喜ぶべきなり」と言い添えるのは、単に危機を免れるだけでなく、本来の働きを取り戻し、全き力を発揮できる状態へ回復すること自体が喜びだからです。

ただし変ずれば火沢睽に入る――ゆえに、背く動き・意地・対立を起こす方向は慎むべき、と含意されます。

◆ 含まれる教え

この爻が教えるのは、損の局面における「回復の作法」です。

  • 不足は“努力”より先に“手当て”で減らす
  • 迷って遅らせず、処置は迅速に
  • 自力に固執せず、下からの助けを借りる
  • 立て直しの局面で背反(睽)に走らない
  • 回復は「免れる」だけでなく「働きを取り戻す」喜びである

損の四爻は、素早い補完が、咎を消し、喜びを生むことを明確に示しています。

◆ 仕事

仕事では、次のような「機能不全」が出やすい時です。

  • 人手・資材・体制が足りず回らない
  • 手順が複雑化し、判断が遅れて損が増える
  • 自分の力だけでは処理しきれない

ここでの最善は、不足を“気合”で埋めるのではなく、具体的に補って減らすことです。

応援要員を入れる、外注する、段取りを切り替える、優先順位を絞る。

そして何より、処置は「遄かに」。先送りが一番の損です。

また、他者の助力でまとまる運もあります。交渉・取引も、援助を得て成立しやすい。

ただし新規拡張より、現状の困難克服に力を注ぐべき局面です。

◆ 恋愛

恋愛では、

  • 自分側の不利(事情・負担・弱み)が障害になる
  • 気持ちはあっても、動きが鈍って進まない
  • 些細な背きが対立へ転じやすい

という形で出ます。

ここで大切なのは、弱さを隠して強がることではなく、不足を正直に認め、助けを借りて整えることです。

話し合いの場を作る、誤解の芽を早めに摘む、生活面の課題を具体的に手当てする。

迅速に整えば「喜び有り、咎なし」。遅れれば睽(背き)が立ち上がります。

縁談は総じて芳しくないとされますが、婿養子など「助けが家を支える形」では働きが出る――という読みも、この爻の「下から補って機能を回復する」象意と一致します。

◆ 山沢損(四爻)が教えてくれる生き方

四爻が教える生き方は明快です。

「弱さは責めず、減らせ。

不足は嘆かず、素早く補え。」

  • 自分だけで抱えず、助けを受け取る
  • 手当ては早く、躊躇で損を増やさない
  • 回復したら、背反の方向へ動かない

損の時は、減らすべきものを減らし、補うべきところを補う。

その“正しい手当て”ができる人は、咎を免れるだけでなく、働きと喜びを取り戻していけるのです。

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