239、雷水解(らいすいかい)5爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

239、雷水解(らいすいかい)5爻

◇ 解とは何か?

雷水解(らいすいかい)は、「ほどける」「解ける」「難が去る」ことを象徴する卦です。

上卦は震(雷)、下卦は坎(水)。雷が鳴り、水が動き、停滞していた気が一気にほぐれて流れ出す――そんな転機の相を持ちます。

ただし解は、ただ楽になる卦ではありません。

難を生んでいた“結び目”をほどくには、まず何が障りであったかを見定め、不要なものを退け、筋道を立て直す必要があります。解は、その「整理と解除」を正しく行う智慧を教えます。

◆ 卦全体が教えてくれること

解の卦は、難の原因となる「陰の小人」を除いて、滞りを解くのが骨子です。

しかし、ただ力で押し切って排除すればよいのではなく、

  • 正しく結び目をほどく(解く)こと
  • 人を用いて整えること(任せる・従う)
  • 小人の側も「退くしかない」と悟るように運ぶこと

が要となります。

五爻は、この卦の中心にあって、解の方針を定め、二爻・四爻の力を用いて小人を退かせる立場です。ここで重要なのは、「君子が解く」ことは、相手を屈服させる勝利ではなく、全体をほどいて争いの火種を消す“解消”である、という点です。

◆ 五爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「君子(くんし)維(こ)れ解(と)くあり。吉。小人(しょうじん)に孚(まこと)あり。」

【象伝】

「君子(くんし)解(と)くあるは、小人(しょうじん)退(しりぞ)くなり。」

● 解釈

五爻は陰位に居りますが、卦の主となって難を解く役目を担います。

ここで鍵となるのが「維れ」です。これは単なる指示語ではなく、互体にある坎の性(誠・孚)を帯びた語として読むべきで、ひとすじに難を解こうとする“真実の心”が底にあることを示します。

この爻の解き方は、自分が全面に立って断行するよりも、二爻・四爻という陽の力を用い、筋を通して整理し、陰の小人を「退かせる」運びです。

そして、その運びが誠にかなっていれば、小人の側も感銘し、自ら分をわきまえ、抗わずに退く――これが「小人に孚あり」の意味です。象伝が端的に「小人退くなり」と断じるのは、その帰結がここにあるからです。

ただし同時に、五爻自身も陰であるため、心情としては忍びがたく、また自分に十分な実力がなくて人を信用して任せるしかない、という不快や辛労を伴いがちです。けれども、その「任せる」「従う」ことこそが、破敗を防ぎ、解の功を成す道となります。

◆ 含まれる教え

この爻が教えるのは、解消の技法です。

  • 自力で押し切るより、適材を用いてほどけ
  • 甘言や見た目の良さに惑わされるな
  • むしろ気兼ねのある“骨のある意見”に従え
  • まとまらないなら、無理に固めず「解消」が吉となる場合がある
  • 解とは勝つことではなく、争いの種を退かせること

爻辞に「吉」とあるのは、成就の形が必ずしも“成立”とは限らず、むしろ解けて終わることが後の幸になる、という含みも持ちます。

◆ 仕事

仕事においては、積極拡大より「欠陥の除去」「整理」「体制の立て直し」が先となります。

自分の好みで動くと、欺かれたり損をしたりしやすい時なので、

  • 甘い提案・耳ざわりの良い人を警戒する
  • 現場を知る実務者(番頭・支配人に当たる役)に任せる
  • 目に見える成果より、火種の解消を優先する

が要点です。交渉や取引も「固める」より「ほどく」方向に傾きやすく、うまく固まらずに解消することがありますが、それが損に見えても、後で禍根を残さないという意味で吉に転じます。

◆ 恋愛

恋愛・縁談では、「まとまらない」「機が熟さないうちに取り止めになる」という見方が強く出ます。

周囲が誠意をもって世話を焼いてくれていても、当人の内実やタイミングが整わず、形にならずに終わる――しかしそれは、

  • 無理に結べば後に苦労する縁を、先に解いておく
  • 期待や口約束がほどけ、双方にとって却ってよい

という場合が多い、と見ます。感情的には惜しいとしても、ここでの「吉」は、解消が後日の安穏につながる、という吉です。

◆ 雷水解(五爻)が教えてくれる生き方

五爻が教える生き方は、「ほどく勇気」と「任せる智慧」です。

自分の力だけで整えようとせず、骨のある意見に従い、甘言を退け、欠陥を除いていく。

そして、まとまらないものは無理に固めず、解消すべきは解消する――その決断が、後の破敗を防ぎます。

解の吉は、派手な成功ではなく、禍根を断ち、争いの芽を退かせ、静かに地ならしを終えることにあります。

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