周易64卦384爻占断
238、雷水解(らいすいかい)4爻
◇ 解とは何か?
雷水解(らいすいかい)は、「ほどける」「解き放つ」「難(なん)を解く」ことを象徴する卦です。
上卦は震(雷)、下卦は坎(水)。険(坎)の中に停滞していたものが、雷の動きによって一気にほどけ、固着していた縛りや絡まりが解消へ向かう姿を示します。
ただし解は、力任せに突破する卦ではなく、難の原因(小人・しがらみ・私情・旧縁)を見極め、要(かなめ)を「解く」ことで道を開く卦です。どこを切り、どこを残すか、その分別が吉凶を分けます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
解が示すのは、
- これまでの拘束や停滞がほどける局面に入っている
- しかし「原因」を外さなければ、同じ難が蒸し返す
- 情に引かれれば義を失い、義に立てば進路が通る
- 解くべきは“敵”ではなく“よからぬ旧縁”である
という、解消の作法です。
特に四爻は、解の中心的な働きどころであり、「旧い結びつき」を断ち切る痛みを引き受けて、君位(五爻)を助け、難の根をほどく方向へ事を進める爻です。
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◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「而(なんじ)の拇(おおゆび)を解(と)く。朋(とも)至(いた)りて斯(こ)れ孚(まこと)す。」
【象伝】
「而(なんじ)の拇(おおゆび)を解(と)くとは、いまだ位(くらい)に当(あた)らざるなり。」
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● 解釈
四爻の「拇(おおゆび)」は、足の親指の象であり、足(震)と切り離せぬ“身近で密着した関係”を指します。ここでは、四爻が応じ合う初爻(陰)を「親指」に見立て、日頃の結びつきが深く、離れがたい縁であることを表しています。
しかし解の時にあって四爻は、天下の難を解くために、君位の五爻を助けて進まねばならない立場です。たとえその関係が、足と親指のように自然で、互いに交わること自体は「義において咎なし」であったとしても、相手が陰の小人であるなら、情を忍んでこれを解き離さねばならない。これが「拇を解く」の核心です。
象伝が「いまだ位に当らざるなり」と言うのは、四爻が陽で陰位に居る“不正”ゆえに疑われやすい位置にある、ということです。ゆえに、少しでも疚(やま)しい結び目を残せば、疑いは晴れず、解の働きは鈍ります。そこで先に拇を解き、曇りを断ってから進む。
そうして初爻との旧縁を断ち切った時、同じく陽である二爻(朋)が来て、互いに孚(まこと)を通わせ、力を協せて解の功を成す。爻辞の後段「朋至りて斯れ孚す」は、その“正しい離別”が、より確かな協力関係を招く道筋を語っているのです。
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◆ 含まれる教え
この爻が内包する教訓は明快です。
- 重大な役目に立つ時は、旧い結び目を清算せよ
- 私情に忍びなくとも、義のために離別せねばならぬ
- 小人を抱えたまま大事を為せば、必ず足を引かれる
- 疑いを晴らすには、先に“解くべき一点”を解け
- 正しい断ち切りは、真の協力(朋)を呼び込む
解は「敵を倒す」より、「縛りを外す」ことに本質があります。四爻は、その痛みを引き受けて解の成就を近づける爻です。
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◆ 仕事
仕事では、日頃親しくしている者・旧来の関係・惰性の仕組みが、今の役目には荷厄介になる時です。
- 私情では切りにくい関係を、義のために清算する局面
- 責任が重くなることで、旧態を改めざるを得ない
- 愛着や遊興、内輪の甘えに溺れれば、本務が崩れる
- 先に“足を引く一点”を外すと、協力者(二爻)が得られる
また、交渉や談判が進まぬ時は、こちら側に未清算の負担があることが多い。借財・未処理・曖昧な約束など、「拇」に当たる小さな結び目が全体を止めます。まずそこを解くことが先決です。
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◆ 恋愛
恋愛では、関係そのものというより「こちら側の荷物」が障りとなりやすい爻です。
- 旧縁や曖昧な繋がりが露見して進展が止まる
- 情で抱えたまま進むと、疑いが晴れず不利になる
- 先に清算できれば、誠が通じる道がひらく
縁談も同様で、こちらに解くべき事情があると纏まりにくい象です。問題の核を放置して押し通そうとすると、かえって破れやすい。解は「正直な整理」が最大の味方になります。
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◆ 雷水解(四爻)が教えてくれる生き方
四爻が伝える人生の要諦はこうです。
「大事を為すには、情より先に“結び目”を解け。正しい離別は、真の信(まこと)を招く。」
- 自分の立場が重くなるほど、旧い腐れ縁は泣きどころとなる
- 切り離す痛みを恐れず、義を選ぶ
- 疑いを残さず、先に整理して進む
- その後に来る協力者と、誠で結び直す
解の四爻は、解放の前にある“決断の一点”を示します。解くべきものを解いた者だけが、難の核心をほどき、次の通路へ進めるのです。

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