周易64卦384爻占断
213、地火明夷(ちかめいい)3爻
◇ 明夷とは何か?
地火明夷(ちかめいい)は、
大地(坤)の下に太陽(離)が沈み、
光が地中へ隠される「日没の卦」です。
これは、
- 賢者が傷つけられる
- 才能が正しく評価されない
- 正道が通りにくい
という“明の受難”を象徴します。
しかし明夷とは、光が消えるのではなく
明徳が内に潜って守られている状態を表します。
外の闇に抗うよりも、
時に従い、光を内に宿して生き抜く知恵 が重要となる卦です。
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◆ 卦全体が教えてくれること
明夷が示す主眼は、
- 外に働きかければ傷つく
- 内に光(明智、明徳、聡明)を守ることで難を避けられる
- 闇の勢いは強く、明るさはまだ届かない
- しかし、退いて備える者だけが次の光を迎えられる
という“守るべき時”の智慧です。
三爻は、明夷の中でも
離火の烈しさが過度に働き、暴進の危険が生じる位置 にあります。
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◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「明夷。南に于(おい)て狩し、其の大首(たいしゅ)を得。疾(と)く貞(ただ)しくす可(べ)からず。」
【象伝】
「南狩(なんしゅう)の志は、乃(すなわ)ち大いに得るなり。」
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● 解釈
三爻は、離の明るさが極まり、
その“光としての明徳”ではなく
“火としての烈しさ”が表に出やすい地点です。
このため、爻辞の「南に狩す」は、
離が南を示し、また兵・武の象をもつことから、
柔らかい明智ではなく 火の勢いをもって物事を突破しようとする姿勢 を象徴します。
さらに「大首を得」とは、明夷の原因をつくる曖昧な主(上六=暗愚な支配層)を討とうとする意であり、
闇の根源に正面から挑む構図を描いています。
しかし、下位から上位を伐つという行為は道義に外れやすく、
精神としての正しさがあっても、行動の仕方を誤れば大きな凶に転じます。
象伝の「大いに得る」とは、強烈な行動が世論の同意を得る場面もあるという寓意を含みますが、
同時に爻辞は「疾く貞しくす可からず」と強く戒めます。
それは、たとえ正しいと信じる行動であっても、
急いで行えば道理を損ない、拙速は必ず破局を招くという意味であり、
明夷において “正義でも、時にそぐわなければ動いてはならない” という大原則を示しています。
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◆ 含まれる教え
三爻が伝える教訓は次の通りです。
- 穏和な手段では動かない局面に見えるが、急進は禁物
- 闇に向かって正義を執行しようとすると、逆に傷つけられる
- 強行突破は必ず凶、時を待つ柔軟さが吉
- 一度退いて状況を整えれば、後に大きな成果を得られる
- 闘う前に「民意・時運・体制」の支持が必要
明夷の中心テーマである “光を内に潜める” という態度が、
三爻でもっとも重要な鍵となります。
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◆ 仕事
仕事における三爻は、
- 権力者や上層との対立
- トラブル・訴訟・争論
- 強引な改革の挫折
- 穏便策では収まらない状況
を示し、同時に、
- 焦って突破すれば必ず傷を負う
- 一度退くことで運が開ける
- 目的達成には 大きな代償 を伴う
という強い警告を含みます。
新規計画を急ぐのは凶。
改革や対決は、時期を見て慎重に動くべきです。
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◆ 恋愛
恋愛では、
- 感情が激しくなりやすい
- 相手への失望や衝突が増える
- 魅力に惹かれても、その裏に問題が潜む
- 玉の輿・地位・財への期待は必ず後悔に変わる
- 良縁とは言い難い
という象が出ます。
ただし、
再縁・復縁には吉 と出る場合があります。
一度距離を置き、冷静になることで関係が再構築される可能性があります。
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◆ 地火明夷(三爻)が教えてくれる生き方
三爻の人生メッセージは、
「正しいことであっても、急げば必ず傷つく。
光を急いで振りかざすより、いったん隠して守れ。」
というものです。
- 時が悪いときには動かず守る
- 明智を内に保ち、外の闇を刺激しない
- 焦り・怒りによる行動は必ず後悔を招く
- 適切なタイミングを待てば、状況は必ず開く
- “退く勇気” が未来の光をつくる
明夷は日没の卦ですが、
日没は新たな夜明けの準備でもあります。
三爻は、
闇を焦って討つのではなく、
光を守り、時を待つことが最大の智慧である
と教えているのです。

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