周易64卦384爻占断
203、雷天大壮(らいてんたいそう)5爻
◇ 大壮とは何か?
雷天大壮(らいてんたいそう)は、
陽気が盛んに張り出し、勢いが高まる時 を示す卦です。
下に乾(天)の強剛、
上に震(雷)の激動。
力がみなぎる一方で、
その勢いが行き過ぎれば破れを招くため、
扱いの難しい「強さの時」 でもあります。
◆ 卦全体が教えてくれること
大壮は、
勢いを持つ時ほど、節度を求める
という教えをもっています。
- 強さは抑えねば凶に傾く
- 度を越さないことが吉
- 「進む」よりも「進み方」を問われる
特に5爻は “陰” であり、
強さの中心にいながら強くない立場 という特徴をもつため、
大壮の気に飲まれず「静かに吉を守る」位置になります。
◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「羊を易(さかい)に喪う。悔いなし。」
【象伝】
「羊を易に喪うは、位当らざるなり。」
● 解釈
5爻は
- 阴爻(柔)
- 君位(中心)
という組み合わせであり、
大壮における主体的な力を持たない存在 です。
卦全体は羊(=陽の勢力)に例えられますが、
5爻はその「羊の飼い主」でありながら、
自身は強くなく、制御する能力も乏しいため、
羊(=強さ)が囲い(=支配の枠)を越えて逃げても
それを追いかけず、そのまま手放す。
これが
「羊を境に喪う」
という表現の意味です。
重要なのは
“強さを使わない” ではなく、
「そもそも強さを持たないから、追うこともできない」
という受動的・柔弱な状態であり、
その消極姿勢がむしろ吉を保つという点です。
積極的に行動しても成果は出ず、
害が多くなるため、
手放すこと・関わらないこと が正しい姿勢となります。
これが「悔いなし」の本意です。
◆ 含まれる教え
この爻が示す教訓は、
「自分の力量に応じて退く」 というものです。
- 無理をしない
- 争わない
- 名誉や役割に執着しない
- 強い者とは距離を置く
- 面倒ごとに巻き込まれないよう慎む
力が不足している時に
勢いの場に踏み込むと、
たちまち損失が生じます。
柔の立場らしく身を引き、
無難を守ることが
最善の吉をつくると説く爻です。
◆ 仕事
仕事では、
以下の傾向が出やすい時です。
- 自分より強い勢力が動く
- こちらは主導権が取れない
- 深く関わるほど損をする
- 「逃げ場を確保する」賢さが必要
したがって
関与を減らし、距離を取り、守勢に徹する
ことが大切です。
新規拡大・強気交渉・組織争いはすべて不可。
静かに現状維持をし、
嵐が過ぎるのを待つのが吉です。
◆ 恋愛
恋愛においても
力のバランスが悪く、
相性が噛み合いにくい時です。
- 相手のペースに振り回されやすい
- 主導権を握れない
- 深追いすると苦労する
- 自然と距離が空く
積極的に動くよりも、
手放す方が心が軽くなる 流れ。
無理に縁をつなぐより、
いったん静観するのが吉です。
◆ 雷天大壮(5爻)が教えてくれる生き方
この爻の生き方は
「力が弱いときは、強い場から身を引く」
という大原則です。
- “できないこと” を無理にしない
- 大きな人物・勢力とは適度に距離をとる
- 欲を出さず、静かに役目を果たす
- 逃げ道をふさがない
- 自分の守るべき範囲だけを守る
“攻めない知恵” が
最大の無事につながります。
大壮は勢いの卦ですが、
その中心にある5爻はむしろ
「勢いを使わないから吉」
という、独特で奥深い教えを与えます。

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