周易64卦384爻占断
192、雷風恒(らいふうこう)上爻
◇ 恒とは何か?
雷風恒(らいふうこう)は、「正しい節度を保ちながら続けること」を象徴する卦です。
雷は外で動き、風は内で入る。
外は揺れつつも、内は静かに従う――その調和が恒の基礎となります。
恒とは、ただ続けるだけでなく、
“ほどよく続け、過ぎず、不足せず” の中庸の継続。
変わらぬように見えて、
実は繊細な調整を積み重ねてこそ成立するのが恒の道なのです。
◆ 卦全体が教えてくれること
恒の成功は「動」と「静」、「柔」と「剛」の調和にあります。
必要な時には静まり、動く時には静から発する。
上爻はその極にあたり、
本来なら 動かず守り、節度を固めるべき位置 です。
ところが上爻は震(動)の極みに位置し、
“動きすぎる”という矛盾を抱えています。
恒を保つべきところで、
恒を振り動かしてしまう――
ここに凶の核心があります。
◆ 上爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「恒を振う。凶。」
【象伝】
「恒を振うて上に在り。大いに功なきなり。」
● 解釈
上爻は卦の最上位で「終わり」「極まる」を示し、
しかも動卦である震の極に位置します。
震の極=振(ふる)う、奮動する勢い。
本来、恒の極では
安んじて守ることが最上の徳 なのに、
上爻は激しく動き、恒を揺らし壊してしまいます。
「恒を振う」とは、
動かしてはならぬ時に動くこと。
守るべきものを、自分で揺さぶり壊すこと。
象伝の
「大いに功なきなり」
とは、努力は大きいが結果が出ず、
奮闘が無駄に終わる――という深い警告です。
恒の終点において、
“動かぬ勇気”が求められています。
◆ 含まれる教え
- 動くべきでない時に動けば、努力は全て空回りする
- 恒の道は「守る力」を忘れると崩れる
- 必死の努力は必ずしも成果に結びつかない
- 奮闘が過ぎれば自ら破綻を招く
- 「今は動くな」という天意を読む必要がある
上爻は、
「動かぬことが最も難しい時」 を象徴します。
◆ 仕事
仕事運は停滞というより 空回りの兆し が強いです。
- 努力しても形にならない
- 動くほど損失が増える
- 打開策を求めて動くほど事態が悪化
- 周囲との摩擦が生じやすい
事業では、
労力・資金・信用の消耗だけが増える時 です。
今は「守り」に徹し、
一時退いて構想を練り直すほかありません。
動いて突破しようとすると必ず失敗します。
◆ 恋愛
恋愛は 奔走しても報われにくい時 です。
- 相手の選択を誤りやすい
- 努力が空回りして関係が安定しない
- 強引に進めると破談・疎遠・誤解が生まれやすい
- 想いが先走って相手が離れる
この時期は、
焦らず・追わず・動かず・守る のが最良です。
無理に進めるのではなく、
一度静かに距離を置き、
心の恒(つね)を取り戻すことで道が開けます。
◆ 雷風恒(上爻)が教えてくれる生き方
上爻はこう語ります。
「動くことより、動かぬことが難しい。」
恒の終わりには、
誰しも焦りが出ます。
“何かしなければ”
“動けば変わるはずだ”
と心が揺れます。
しかし、恒の道はこう教えます。
- 続けるには、今は止まる勇気が必要
- 奮ってはならぬ時に奮えば、全てが崩れる
- 守ることこそ、真の恒の力
上爻は、
「無為の時期を知る賢さ」 を示す爻です。
焦らず、急がず、
静かに心を整えてこそ、
次の恒が生まれるのです。

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