周易64卦384爻占断
189、雷風恒(らいふうこう)3爻
◇ 恒とは何か?
雷風恒(らいふうこう)は、「長く続くこと・節度を守ること・持続の道」を表す卦です。
雷(震)は動き、風(巽)は従い、外は揺れつつも内には柔らかな順応がある。
その調和によって、恒(つね)の道は形になります。
恒とは、ただ固定するのではなく、
変化に飲まれず、しかし柔軟に対応しながら、正しい歩みを積み重ねること。
中庸と節度――これが恒の本質です。
◆ 卦全体が教えてくれること
恒の卦は、
「正しく続けるには、心の落ち着きと節度が必要である」
という原則を示します。
初爻では求めすぎ、
二爻は続ける力によって悔いを消し、
しかし三爻では巽の“落ち着かなさ”が極まり、
継続すべきところで続けられなくなる。
恒の道を外れれば、
正しくても、力があっても、
持続できないことで失敗につながる。
“続ける徳”が揺らぐかどうか。
それが三爻の最大のテーマです。
◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「其の徳を恒にせず。或いは之(これ)に羞(はじ)を承(すす)む。貞吝。」
【象伝】
「其の徳を恒にせざるは、容るるところなきなり。」
● 解釈
三爻は巽の性質が最も強く現れる場所です。
巽には「進退・揺れ動く・果たさない・落ち着かない」という特徴があります。
この不安定な性向が極まった場所に三爻があるため、
- 陽で陽位にいる(本来は正しい)
- しかし“続ける徳”が伴わない
- 心が揺れ、節度を守れず、継続ができない
という矛盾が生まれます。
恒とは、本来“続ける徳”を最も重んじる時。
ところが三爻は、巽の躁をそのまま背負っているために、
一つのところに止まれず、心が動揺し、他から羞を受ける。
これが「或いはこれに羞を承む」です。
夫婦に喩えるなら、
“妻が夫以外の男性と関係を持ち、結果として羞を蒙って身の置き所を失う”
というほどの不安定さであり、
「容るるところなきなり(身の置き所がない)」
とはそのような状態を指します。
正しい位置にいても、
“恒の徳がない” という一点で凶を免れません。
◆ 含まれる教え
- 技量や力量があっても、節度・継続できる徳がなければ信用を失う
- 利を急ぐと節制が失われ、羞を受ける
- 心の落ち着きが失われると、恒の道は崩れる
- 正しい位置にいても、行動が不安定だと凶に傾く
恒の卦が最も嫌うのは、
「心が揺れて続けられないこと」 なのです。
◆ 仕事
仕事においては、
軽挙妄動から窮地に陥る象。
- 短期的な利益を追いすぎる
- 手段を選ばず走り回る
- 落ち着きがなく、信用を失う
- 一貫した方針を保てない
こうした状態が強く出ます。
特に巽は利欲とつながるため、
“目先の利益に引きずられて方針転換を繰り返す”
という悪い傾向が出やすいです。
事業は、
- 方針変更を余儀なくされる
- 対外的な信用が落ちる
- ゆっくり衰える兆し
と判断され、非常に慎重を要します。
◆ 恋愛
恋愛では、
気持ちが定まらず、揺れ動きやすい時。
- 心が落ち着かず、気まぐれになりやすい
- 気持ちが他へ動きやすい
- 既存の関係に問題が起きる
- 秘密の交際や不安定な関係に流れやすい
特に「羞を承む」の語が示すように、
周囲に知られて恥をかく、
関係が乱れて信用を落とす、
こうした象意があります。
すでに交際中の人がこの爻を得た場合、
関係の悪化が離別に発展しやすく、
十分に警戒が必要です。
◆ 雷風恒(三爻)が教えてくれる生き方
三爻はこう告げます。
「続ける力がなければ、どれほど正しくても、
どれほど強くても、徳は成らない。」
恒とは、
深く求めすぎず、
投げ出しもせず、
中庸を保って歩む道。
心が揺れすぎると、
“羞を受け、身の置き所がなくなる”
という戒めがここにあります。
落ち着くべきところに落ち着き、
欲に動かされず、
静かに節度を守る――
それが三爻が示す、
“恒の道の核心” です。

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