周易64卦384爻占断
164、沢風大過(たくふうたいか)2爻
◇ 大過とは何か?
沢風大過(たくふうたいか)は、「大いに過(す)ぎる」を意味し、物事がその限界を超えて重圧となる時を象します。
上卦は沢(兌)で「悦び」、下卦は風(巽)で「順う」。
内に剛陽が四つ集まり、外は柔陰で包む形を取り、重厚にして不安定な構造をなしています。
これは、大木が老いて枝葉は繁りすぎ、今にも折れんとするような状態――過剰・過熟・重圧の象です。
しかしこの「過ぎる時」においても、ただ危ういだけでなく、極に至って反転し、更新が生じる契機も秘めています。
大過は「危うき中の再生」「限界からの転換」を教える卦でもあります。
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◆ 卦全体が教えてくれること
大過の卦は、物事がすでに飽和し、力の均衡を欠いた状態を示します。
すべてが頂点に達し、これ以上積み上げれば崩壊する――そのような時に必要なのは、柔軟な受け入れと、再生への心構えです。
重きを支えつつも、内に蓄えた力を次の新生に向ける。
この卦が告げるのは、**「極まりて、また生ず」**という生命の循環の理です。
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◆ 二爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「枯楊(こよう)梯(てい)を生ず。老夫(ろうふ)其の女妻を得たり。利ろしからざる无(な)し。」
【象伝】
「老夫の女妻は、過ぎて以って相い与(とも)にするなり。」
解釈:
二爻は、沢のほとりに立つ木を象徴します。
「枯楊(こよう)」とは、すでに水気を失い枯れかけた楊(やなぎ)の木。
巽の木が本来「風を受けて水を呼ぶ」性質を持つのに対し、この時は陽多くして乾き、まさに「枯死せんとする」状態にあります。
しかし、その枯楊の根元には、下の初爻(陰)から潤いの気が上がる。
これが「梯(ひこばえ)を生ず」――すなわち、枯れ木に再び新芽が吹き出すという象です。
人事に喩えれば、老境の人が再び縁を得て、若き妻を迎えるようなもの。
年齢も力も過ぎているが、そこに自然の再生力が働き、思いがけない喜びが訪れるのです。
象伝の「過ぎて以って相い与にする」とは、
老いた者が若い者と結び、陰陽の交わりを得て再び生命を得る意。
「過ぎたる」状況の中にも、なお再生と成果があることを示しています。
ゆえに爻辞は「利ろしからざる无し」と結ばれ、
すべてにおいて有利――ただし「過ぎた中の一時的な幸運」であることを忘れてはなりません。
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◆ 含まれる教え
- 枯れたものにも、再び命は芽吹く。 それを信じて心を緩めよ。
- 再生の兆しは、陰(柔)の助けによって訪れる。
- 過去の縁・事業・想いが、形を変えて甦る時。
- ただし、過ぎたものに固執すれば再び枯れる。執着を捨てよ。
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◆ 仕事
この爻を得た時は、停滞していたものが再び動き出す時期です。
長く低迷していた事業が、目下の援助(初爻=陰の助け)によって息を吹き返します。
忘れかけていた案件や古い取引先との再縁によって、予期せぬ利益が生じることも。
ただし、新しい挑戦や拡張には不向き。
「再建・再出発・復活」にこそ吉があり、古きを活かして新しきを生む方針が最善です。
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◆ 恋愛
恋愛・婚姻においては、過去の関係・旧縁・再燃が特徴的です。
かつて離れた相手と再び結びつく、あるいは過去の想いが形を変えて戻る時。
しかし、これも「枯楊の梯(ひこばえ)」の象であり、
根は老いていても一時的な芽吹きであることを忘れてはなりません。
情が残っているままにずるずると関係を続けると、
やがて家庭の不和や誤解を招くおそれがあります。
特に中年以上の男性は、愛人・外縁関係などの色難に注意が必要です。
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◆ 沢風大過(二爻)が教えてくれる生き方
この爻が教えるのは、
「衰えの中にも、再生の気は宿る」ということです。
人生には、枯れたように見えても根が生きている時がある。
その時、無理に新しいものを求めるのではなく、
古き縁・過去の経験の中に芽吹く再生の芽を大切にすること。
老木がひこばえを生むように、
人もまた、静けさの中から新しい力を得ることができるのです。
それこそが、「枯楊、梯を生ず。利ろしからざる无し」――
大過の二爻が示す、生命の再興の知恵なのです。

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