周易64卦384爻占断
156、山天大畜(さんてんたいちく)上爻
◇ 大畜とは何か?
山天大畜(さんてんたいちく)は、「大いに畜(たくわ)える」ことを意味します。
上卦は山(艮)、下卦は天(乾)。内なる強い推進力(乾)を、外からの静止(艮)が適切に抑え、徳・知・力・財・人材を内に養う時をあらわします。
拙速に発せず、時を待って充実させる――静の蓄養がこの卦の本旨です。
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◆ 卦全体が教えてくれること
大畜は、止むべき時に止まり、蓄えてから動くという道を説きます。
抑制は弱さではなく、将来の大成へ向けた能動的な準備。
十分に畜えた後は、阻むものなく大道が開け、養った力と人材を一挙に用いる段へ移ります。
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◆ 上爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「何天(かてん)の衢(く)。亨。」
【象伝】
「何天(かてん)の衢(く)は、道(みち)大(おお)いに行(おこ)なわるるなり。」
解釈:
「衢(く)」は四通八達の“ちまた”、どこへでも通じる要路。
上爻は大畜の成卦主で、五爻の君を輔ける師傅・顧問の位にあり、まるで天を肩に担うほど責務が大きい位置です。
ここでの「何天の衢」は、長く続いた畜止が解け、妨げなく大道が開く象。
これまで頻りに畜え養った賢者・資本・技術・知見を登用して、大川を渉る大事業を成し遂げる時に至ったことを告げます。
象伝の「道大いに行わるるなり」とは、大義にかなう道が広く施行される意。亨通(とおる)まさに極まる段です。
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◆ 含まれる教え
- 長期の抑制と蓄養が満ち、四通八達の時運が到来する。
- 個人的成功にとどまらず、大道が社会的規模で実行される。
- 人材・資金・技術を時機に応じて総動員し、停滞なき亨通を得る。
- これは偶然ではなく、蓄養の正しさが開通を呼ぶという因果の証し。
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◆ 仕事
今まで抑えてきた力や構想が一気に表面化・可動化します。
人材登用・資源配分・決裁の通りが格段に良くなり、案件は次々と円滑に進展。
とくに、蓄えた技術・在庫・知的財産・関係資本が時勢に合致して、廃品さえ価値化する波及効果が見られます。
交渉・合意形成は円満に収束。ボトルネックが消え、横串の連携が一挙に通る相です。
変卦は地天泰。大畜から泰へ移る通暁は最良の吉象で、平安と通達の定着が望めます。
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◆ 恋愛
機は熟し、思い叶って晴れて夫婦となる相。
障害が解け、関係・環境・家族間の調整が四通八達に運びます。
準備してきた誠実さと配慮が評価され、式や新生活の段取りも円滑。
過度に演出するより、これまでの歩みを素直に示すことが吉です。
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◆ 山天大畜(上爻)が教えてくれる生き方
蓄えて、時を待ち、そして一気に通す。
大畜の到達点は、抑制の美徳をもって大道を開くことにあります。
「何天の衢」は、天命にかなう者に与えられる大路開通の刻。
蓄養の歳月は、いま大道の施行として実を結ぶ――
私利を超え、大義に資する用い方をすれば、亨はさらに深く永く続きます。
止むべき時に止まり、動くべき時に大きく動く。
それが大畜・上爻の要諦であり、亨通の極致です。

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