周易64卦384爻占断
130、山火賁(さんかひ)4爻
◇ 賁とは何か?
山火賁(さんかひ)は「飾る」「装う」ことを意味し、外見や体裁に注意を向ける場面を象徴します。ただし、ここで言う「飾り」とは単なる虚飾ではなく、内実を伴った美しさをどう表現していくかということが問われる卦です。
本卦は内卦に「火(離)」、外卦に「山(艮)」をもち、火が山を照らすように、内なる明徳が外に表れて他を照らすこと、つまり内実を備えた飾りのあり方を教えています。
◆ 卦全体が教えてくれること
賁の卦が伝えているのは、外見を整えることが大切な時であるという教えです。しかし、それは中身を伴わない虚飾ではいけません。真の賁とは、内実が充実してこそ表面が映えるというものであり、過度な見栄や無理な演出は災いを招く可能性があります。
全体を通して、自然な美しさ、節度を守った表現、内面の誠実さが最も重要であるという価値観が一貫しています。
◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「賁如(ひじょ)。皤如(はじょ)。白馬翰如(かんじょ)。寇(あだ)するに匪(あら)ず婚媾(こんこう)せんとす。」
【象伝】
「六四は位に当たり疑うなり。寇するに匪ず婚媾せんとするは、終(つい)に尤(とが)めなきなり。」
解釈:
賁の四爻は、外卦「艮」の初めに位置しており、「飾り」の意味が内から外へと現れていく過程を象徴します。
「賁如(ひじょ)」は飾ろうとする姿勢、「皤如(はじょ)」は純白でまだ何の飾りも施されていない状態を示し、「白馬翰如(はくばかんじょ)」は白馬が飛ぶようにすばやく向かう姿を表しています。つまり、この爻には飾り気がない質素な者が、速やかに他に向かおうとする意志が見て取れます。
四爻は初爻の陽と正応関係にあり、これに向かって進もうとする動きがあるのですが、比爻である三爻がその間にあって隔てています。しかし、この向かい方は「寇するに匪ず」、つまり敵意あるものではなく、「婚媾せんとす」とあるように、親和を求めるものであるため、最終的にはとがめを受けることはないとされています。
象伝は、「疑いはあるが、とがめられることはない」とまとめています。これは、外形的には誤解を受けそうな動きであっても、意図が正しければその本質は咎められるものではないという教訓です。
◆ 含まれる教え
- 飾り気のなさがかえって美徳となる場面がある。
- 誤解を招きやすい行動でも、意図が純粋であれば理解される。
- 飾りや体裁よりも、誠意と節度をもった接し方が重要である。
◆ 仕事
この時期は、周囲との関係において誤解が生まれやすいときです。自分では誠実なつもりでも、外から見ると「目立ちたがり」や「出しゃばり」に見える可能性があります。特に上司やクライアントとのやりとりでは、慎重に対応する必要があります。
一方で、目立つ業績や外見ではなく、地道な努力や誠意が認められるタイミングでもあります。自分の意図がきちんと伝わるよう、説明や表現に一工夫することが求められます。
また、複数の案件や人間関係の間で迷いが生じることもあるでしょう。決断には慎重を期し、「より堅実で信頼できる道」を選ぶのが賢明です。
◆ 恋愛
恋愛においては、第三者の登場や複数の選択肢によって、心が揺れやすい時です。現在の関係に加えて、より魅力的に見える人が現れたとしても、感情に流されず、長い目で見て信頼できる相手を選ぶことが重要です。
また、誤解を受けやすい行動には注意が必要です。好意を持っての接触でも、相手に勘違いされて関係がこじれる場合もあります。丁寧なコミュニケーションが求められます。
◆ 山火賁(四爻)が教えてくれる生き方
この爻が教えてくれるのは、「飾る」ことよりも「誤解されないこと」が大切な場面もあるということです。飾らない姿、白馬のような清らかで誠実な姿勢で人に向かって行くことが、時にもっとも尊ばれる「賁」であると説いています。
また、たとえ周囲に不理解や迷いが生じても、誠実さと内面の一貫性を保つことで、最終的には咎められることなく、本来の目的を果たすことができるのです。誤解を恐れず、しかし節度と配慮を忘れずに人と接することが、この時期の賢い生き方といえるでしょう。
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