周易64卦384爻占断
125、火雷噬嗑(からいぜいごう)5爻
◇ 噬嗑とは何か?
火雷噬嗑(からいぜいこう)は、火(離)が上にあり、雷(震)が下にある卦で、光明と行動がひとつになって「噛み砕いて通す」ことを象徴します。道を塞ぐ障害を断ち切り、正義と秩序を回復させる卦です。噬嗑は厳正な断罪を意味するだけでなく、理と誠実をもって悪を除く「明断の徳」を教えています。
⸻
◆ 卦全体が教えてくれること
この卦は「誤りや不正を放置せず、痛みを伴ってでも正すべき時」を示します。悪を除くための行動は、時に自らを危険にさらしますが、それでも正しいことを貫く勇気が求められます。重要なのは、裁きの力ではなく、光(理性)と仁(誠意)をもって臨むこと。真正直に、清明な判断であれば、たとえ危うい場面でも最終的には「咎なし」となるのです。
⸻
◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「乾肉を噬(か)みて、黄金を得。貞(ただし)けれども危(あやう)し。咎(とが)なし。」
【象伝】
「貞けれども危し咎なきは、当るを得るなり。」
解釈
五爻は噬嗑の主爻であり、為政者や指導者の立場にあたります。この爻の「乾肉」は、四爻の「乾胏」よりも柔らかく、比較的噛みやすい肉を意味します。つまり、問題や障害がまだ処理しやすい段階にあることを示しています。しかし、それを裁く位置にあるのが「君位」であるため、軽率な判断や過剰な介入は危険を伴います。
「黄金を得」とは、正しい判断と行いによって、正義の実(報い)を得ることを象徴します。黄金は「正義の価値」や「道理の明らかさ」を示し、ここでは、誠実かつ明確な態度で臨めば、最終的に成果を得るという意味になります。
ただし「貞けれども危し」とあるように、いくら正しいことでも、自らの立場(君位)で直接手を下すのは危険です。権力をもって裁きを行うことは、少しでも誤れば他者の怨嗟や反発を招くからです。とはいえ、象伝の「当るを得るなり」とあるように、この爻の持つ明徳(離の光)と正義感は当を得ているため、最終的には「咎なし」となります。つまり、正しい理に基づいて慎重に判断すれば、危険を乗り越えられるということです。
⸻
◆ 含まれる教え
- 正しいことを行うにも、時と方法を誤ってはならない。
- 正義は孤立しやすいが、誠意と理性を持てば道は通る。
- 「危うき中に吉あり」──慎重さが真の成功を導く。
⸻
◆ 仕事
仕事では、重要な責任や判断を任される時期です。あなたの決断が組織全体に影響するような局面に立たされています。ここでの成功は、勇気と同時に「理性ある慎重さ」にかかっています。多少のリスクを恐れず、真っすぐに進めば最終的に評価されますが、強引さは禁物です。
また、「乾肉を噬みて黄金を得」とあるように、努力に見合う成果が手に入る兆しです。困難を避けずに挑戦することで、信頼と報酬を手にすることができるでしょう。
⸻
◆ 恋愛
恋愛運としては、障害や試練を伴いながらも、真心によって関係が実を結ぶ時です。相手との関係にすれ違いや誤解が生じても、誠実な姿勢を貫くことで、やがて信頼が回復します。「貞けれども危し」は、誤解されやすい状況を暗示しますが、「咎なし」とあるように、誠実さを保てば最終的に吉へ転じます。特に、長く続く関係や復縁の時期には良い兆しです。
⸻
◆ 火雷噬嗑(五爻)が教えてくれる生き方
五爻は、「正しい信念を貫きつつ、慎重に行動すること」の重要性を教えています。正義を行うことは尊いが、同時に危うい。だからこそ、力で押すのではなく、光(智慧)と誠(信義)をもって事にあたることが求められます。
「乾肉を噬みて黄金を得」とは、努力と節制の果てに真価を得る象徴です。危うさの中にこそ成長の種があり、迷いながらも誠実に歩むことで、あなた自身が黄金のように輝きを増していく──それがこの爻の教える人生の姿です。
コメント