周易64卦384爻占断
111、地沢臨(ちたくりん)3爻
◇ 臨とは何か?
地沢臨(ちたくりん)は「臨む」の意で、人や事に対して近づき、導き、育成する姿を示します。勢いが盛んで、人が互いに感応し合う時です。上に立つ者は下に降りて臨み、下にある者は上に臨まれて応じることで、和が整い、世が泰平に向かうことを象徴します。しかし、この勢いをどう使うかで吉凶は分かれます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
臨は「勢いと感応の盛んな時」を意味し、人と人が互いに惹かれ合い、協力して大きな成果を得ることができます。しかしその勢いにおごりや甘さが入り込むと、逆に失敗を招くことになります。臨む姿勢は謙虚でなければならず、誠実さと慎みが最も大切です。
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◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「甘臨。利ろしき攸なし。既にしてこれを憂うれば咎なし。」
【象伝】
「甘臨は位あたらざるなり。既にこれを憂うれば、咎長からざるなり。」
解釈
三爻は陰が陽位にあり、正を得ていないため、その臨み方は「甘臨」とされます。これは、事の重大さを軽んじ、口先だけの甘い態度で臨む姿です。兌卦の主爻にあたり、笑いや弁舌に頼るが実がなく、空元気だけの傾向があります。初爻や二爻のように正しい応援もなく、傲慢さや慢心から物事を軽く見下してしまいがちです。そのため「利ろしき攸なし」とあり、良い結果は望めません。
しかし、自分の態度が不遜であることに気づき、それを憂えて改めれば「咎なし」となります。つまり、過ちに気づいて悔い改めれば、咎は長引かず救いがあるということです。象伝が「位あたらざるなり」と指摘するように、そもそも地位や立場に合わない無理をしているために誤りが生じるのです。
この爻が変じると「泰」となります。泰は天地交わり通じ合う大吉の卦であり、もし三爻が自らの甘さに気づき態度を正すならば、その大きな咎もやがて収まり、通泰へと転じることを意味します。
臨の卦の中では、この三爻が最も危うい爻とされています。
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◆ 含まれる教え
- 勢いに任せて甘く臨むと必ず失敗する。
- 自分の不実や軽率さに気づき、悔い改めることが救いになる。
- 地位や能力に見合わないことを強引に進めてはならない。
- 慎みを忘れず、謙虚さを取り戻せば咎は長引かない。
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◆ 仕事
三爻を得た時の仕事運は「過信と軽率さに注意」となります。計画を甘く見積もったり、安易な楽観に流されて取り組むと、必ず失敗につながります。また、口先だけで実務を軽んじる態度は信頼を失う原因になります。逆に、自分の至らなさを素直に認め、態度を改めることで大きな失敗を回避できます。必要に応じて勇退や撤退を考えるのも賢明な選択となるでしょう。
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◆ 恋愛
恋愛では「甘い言葉や軽い気持ち」に注意が必要です。相手を軽んじたり、言葉ばかりで誠意が伴わないと、関係は破綻しやすいでしょう。遊び半分の関係や気まぐれな態度は不調和を招きます。ただし、自分の姿勢を省みて、誠実に相手と向き合うならば関係の改善は可能です。甘えや慢心を改め、真心をもって臨むことが求められます。
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◆ 地沢臨(三爻)が教えてくれる生き方
「軽率さと甘さを戒め、誠実さを取り戻せ」と教えています。勢いがある時ほど、人は自信過剰になり、物事を軽んじがちです。しかし、その油断が最大の落とし穴となります。過ちに気づき、心を改めれば咎は続かず、やがて泰へと向かうことができるのです。謙虚さと真心をもって臨むことが、安泰へと至る道を開きます。
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