周易64卦384爻占断
106、山風蠱(さんぷうこ)4爻
◇ 蠱とは何か?
山風蠱(さんぷうこ)は「やぶれ」「腐敗」「乱れ」を意味し、それを繕い、治めることを課題とする卦です。過去の不具合や旧弊をそのまま放置すれば、さらに深刻化してゆきます。しかし誠実で柔らかな心構えをもって対処すれば、必ず再生への道を開くことができます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
蠱は「過去から受け継いだ問題を改革していくこと」を主眼にしています。前任者や先人の誤りを受け継ぐことは避けられない場合がありますが、それをどう処理するかが自分の徳や未来を決めます。急進や強硬策ではなく、柔らかさをもって徐々に改善していくことが大切です。
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◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「父の蠱を裕(ゆた)かにす。往けば吝を見る。」
【象伝】
「父の蠱を裕やかにするは、往きて未だ得ざるなり。」
解釈
四爻は陰位に陰で正を得ていますが、力弱く因循的で、大きな責任を果たすには不十分な位置にあります。裕とは「多くする」「増やす」という意味であり、ここでは父から受け継いだ蠱(乱れや破れ)を繕うどころか、かえって拡大してしまう危険を示しています。
蠱の課題は本来「破れを治す」ことですが、この爻は才覚や実行力に乏しく、問題に取り組むよりも事態を複雑化させてしまいやすい状態です。そのため「往けば吝を見る」とあり、積極的に進めばかえって恥や不利益を招きます。ここでは軽挙妄動を避け、守りに徹して機会を待つことが賢明なのです。
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◆ 含まれる教え
- 力が不足しているときに無理をすれば、かえって破れを大きくする。
- 動かずに時を待つ勇気もまた知恵である。
- 小さな焦りや功名心が大きな失敗を招くことを忘れてはならない。
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◆ 仕事
今は改革や新規事業に着手すべき時ではない。続けてきた仕事も一区切りつけて退く方が安全。下手に立て直しを試みれば破綻が広がる。現状維持と内部整理に徹し、時を待つことが必要。
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◆ 恋愛
相手や関係性の中にある問題を改善しようとしても、力不足でむしろ悪化させやすい。感情的に踏み込むより、冷静に距離を取り状況を見守る方が賢明。無理に動けば誤解や不信を招きやすい時期。
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◆ 山風蠱(四爻)が教えてくれる生き方
「力の不足を自覚し、焦らず退いて機を待て」と教えています。進めば恥や損失を招くが、守れば大難を避けられます。動かない勇気と忍耐こそが、やがて訪れる正しい時をつかむための備えとなるのです。
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