周易64卦384爻占断
103、山風蠱(さんぷうこ)初爻
◇ 蠱とは何か?
山風蠱(さんぷうこ)は「腐敗」「乱れ」「やぶれ」を意味し、それを正しく治めることを課題とする卦です。過去の誤りや積み重なった問題をそのまま放置すれば腐敗が広がりますが、正しい態度で受け継ぎ、改革と修復を進めるならば、かえって大きな吉へとつながると教えています。
◆ 卦全体が教えてくれること
蠱の卦は「旧弊を改めること」を示しています。自分自身が作り出した問題ではなくとも、前の世代や前任者が残した乱れを受け継ぐことがあり、その責務を果たすことが求められます。大切なのは「責任転嫁」ではなく「改革の主体者」となる覚悟です。腐敗の根を断ち、健全な基盤を再生することによってのみ未来は拓かれます。
◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「父之蠱(こ)を幹(かん)す。子有れば考(こう)咎无し。厲けれども終には吉なり。」
【象伝】
「父の蠱を幹するは、意・考に承(う)くる也。」
解釈
初爻は「父の蠱を幹す」とあり、父が残したやぶれを子が受け継ぎ、それを正そうとする立場を示します。幹とは樹木の幹であり、全ての枝葉を支える中心です。ここでは「幹す」とは「その責務を担い、正していく」という意味になります。
「子有れば考咎无し」とは、子が責任を受け継ぎ修復すれば、やぶれを残した父(考=亡き父)も非難されずに済むということ。これは親子の継承の理であり、過去の過ちも、後代が修復することで功徳となると教えます。
初爻はまだ蠱が小さい位置にあるため、問題は深刻化していません。しかし陰爻で力は弱く、過激な行動は取れない半面、慎重に対処することで結果的に吉となります。条件付きの吉であり、正しい態度で責務を果たすことが肝要です。
◆ 含まれる教え
- 過去の誤りを見て見ぬふりをせず、自分の責任として引き受けること。
- 小さい乱れのうちに正せば、大きな災いになるのを防げる。
- 問題を避けて新しいことを始めるのではなく、まずは既存の欠陥を修復することが先。
◆ 仕事
前任者の残した赤字や不具合を背負うことになる時期。困難を感じるが、改良・改善を積み重ねることで業績を黒字へと転換できる。改革に取り組むことで、信用を得られる可能性が大きい。新規の事業よりも、現状の修復が優先される。
◆ 恋愛
家族や過去のしがらみを引き受けるような関係を示す。例えば、相手に過去の問題(借金や家庭の複雑さ)があっても、それを受け止めて共に解決していく姿勢が求められる。困難を共に担えば、絆はむしろ深まる。
◆ 山風蠱(初爻)が教えてくれる生き方
「前の世代の過ちや不具合を受け継ぐことがあっても、それを正すことができれば大きな徳となる」と教えています。責任を避けず、真摯に修復に取り組むこと。苦労はあっても、最後には必ず吉となるでしょう。
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