89、地山謙(ちざんけん)5爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断
89、地山謙(ちざんけん)5爻

◇ 地山謙とは何か?

地山謙(ちざんけん)は、上卦が坤(地)、下卦が艮(山)で成り立ちます。山が地の下に隠れる姿を表し、謙虚・控えめの徳を象徴します。外に出て目立つのではなく、自らを低くして徳を養い、他を立てることによって安泰を得る卦です。

◆ 卦全体が教えてくれること

謙は「謙は益す」と言われるように、謙虚さは人を遠ざけるどころか、かえって人を集め、助力や恩恵をもたらします。しかし、謙の道を最後まで保つことは難しく、地位が高くなるにつれて謙徳を忘れやすくなります。地山謙はその試練を示し、最後まで謙を守り抜くことの大切さを教えます。

◆ 五爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「富まず、其の鄰を以ゆ。用いて侵伐するに利ろし。利ろしからざるなし。」

【象伝】

「用いて侵伐するに利ろしきは、服せざるを征するなり。」

解釈

五爻は君位に当たりながら陰爻であり、力の弱さを内包しています。それが「富まず」の意味です。富や力を誇らず、隣(周囲の有力者や臣下)の助けを得ることで国を治め、事をなすのがこの爻の姿勢です。つまり、自力でなく周囲の賢者の協力を得て決断していく「謙徳」を示しています。

ただし、君位にありながら過度に謙ると、他から侮られる危険もあります。そのため、もし謙を軽んじて服従しない者が現れれば、討伐(侵伐)して秩序を保つべきです。象伝が「服せざるを征するなり」と説くように、謙徳を持ちながらも必要な時には毅然とした態度を取ることが求められます。

また、この爻が変ずれば「水山蹇」となり、困難や停滞を意味します。君位にありながら力が弱いため、容易に難局に陥りやすく、それを救うのが謙徳であると示しています。

◆ 含まれる教え

  • 謙虚であることは大切だが、過ぎれば弱腰と見られて侮りを受けやすい。
  • 周囲の助力を得ることで、自分の弱さを補い、秩序を保てる。
  • 謙を守る一方で、必要な時は毅然とし、不服従には厳しく臨むこと。
  • 力の乏しさを自覚したうえで、内政の整備と周囲との協調を大切にする。

◆ 仕事

この時期は基盤が脆弱で、単独では大きな成功は望みにくい状態です。無理に事を起こせば失敗しやすく、時を待つ姿勢が必要です。ただし、信頼できる協力者や身近な援助者を頼ることで、困難を打開できます。内部の秩序を整えることを優先し、外への拡張は控えるべきです。

◆ 恋愛

恋愛では、相手を尊重しつつも、必要な時は自分の意思をはっきり伝えることが大切です。相手に迎合しすぎると軽んじられ、関係が不均衡になる恐れがあります。誠実さと同時に、適度な強さを見せることで信頼が深まります。

◆ 地山謙(五爻)が教えてくれる生き方

五爻は、謙の徳を持ちながら君位にあるという難しい立場を示しています。弱さを自覚しつつ、周囲の賢者を尊重して助力を得ることが吉を生みます。しかし、謙が過ぎて威を失えば侮りを受けます。謙と威の調和を取り、必要な時は断固として行動する――これが地山謙五爻の生き方の指針です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました