周易64卦384爻占断
83、火天大有(かてんたいゆう)5爻
◇ 火天大有とは何か?
火天大有(かてんたいゆう)は、上卦が離(火)、下卦が乾(天)で成り立つ卦です。大有とは「大いに有つ」、すなわち大きな富や勢いを意味します。太陽の光が天を覆い、乾の力強さと離の明るさが相まって、豊かさが満ちあふれる様を象徴します。ただし、その富と勢いをどう用いるかによって吉凶が分かれます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
大有の卦は、物質的・精神的に満ち足りた状態を表します。しかし同時に、富は人の心を驕らせ、争いや妬みを生みやすいものでもあります。そのため、この卦が伝える根本の教えは「有ることを慎み、分を守って運用すること」です。正しく制御し、誠実に活かすならば、豊かさは社会や人々に広く及び、長く繁栄を保つことができます。
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◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
厥(その)孚(まこと)・交如(こうじょ)、威如(いじょ)、吉(きつ)。
【象伝】
厥孚・交如は、信をもって志を発するなり。威如の吉は、あなどりて備え无きなり。
解釈
五爻は大有の主位であり、中心に立って国や組織を治める地位にあります。「厥孚」とは真心や誠意のことで、支配者が誠実さをもって治めようとする志を示します。
「交如」とは、部下や仲間とよく交わり、協調することを意味します。特に2爻や4爻といった力強い陽爻を重用し、共に働くことで大有の豊かさを保つことができます。
ただし、「威如」とあるように、ただ優しく交わるだけでなく、必要な威厳を示し、上下の分を明らかにすることも大切です。威がなければ軽んじられ、秩序が乱れやすくなるからです。誠実さと威厳の両立こそが、長く吉を保つ条件であると教えています。
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◆ 含まれる教え
• 誠意(孚)をもって人と交わることが繁栄を支える。
• 同時に威厳を保ち、秩序を明確にすることが不可欠。
• 富や権勢が大きいときほど、寛容と厳格のバランスを誤らないこと。
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◆ 仕事
地位や事業は大きく発展する時期です。信頼できる部下や協力者を大切にし、誠実に接することで成功が持続します。ただし、寛容に流れすぎれば軽視され、規律が乱れる恐れがあるため、節度と威厳を保つことが重要です。
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◆ 恋愛
誠意をもって相手に接することが良縁を育みます。しかし、ただ甘く接するだけでは関係が乱れる場合もあり、尊重と厳しさの両立が求められます。誠意と威厳を保てば、安定した関係を築けるでしょう。
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◆ 火天大有(五爻)が教えてくれる生き方
富や地位の中心にあるときこそ、誠実な心を基盤にし、周囲と良好な関係を築くこと。そして同時に、軽んじられぬよう威厳を示して秩序を守ることです。「孚と威の両立」こそ、大有を長く持続させる道であると、この爻は教えています。
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