周易64卦384爻占断
37、地水師(ちすいし)初爻
◇ 師とは何か?
『師(し)』の卦は、「軍」を意味します。
争いや戦、または集団で行動するときの規律と指導を象徴する卦です。
この卦は、下に水(坎)=困難があり、上に地(坤)=順応がある形。
すなわち「困難のなかを、従順さと規律をもって進む」という構図を示しています。
◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
師は出づるに律をもってす。否(しか)らざれば、臧(よ)きも凶。
【象伝】
師は出づるに律をもってす。律を失えば凶なり。
初爻は軍を起こす出発点にあたります。
「律」とは、古代においては音律を司る管のことですが、ここでは軍律=規律・統制を意味します。
つまり、軍を動かす時は、きちんとした指揮命令や組織的秩序が必要だということ。
仮に正義の戦いであったとしても、規律なくして出陣すれば、善しとされる行いも凶に転じると戒めています。
◆ 含まれる教え
この爻が示すのは、何事も出発においてまず秩序と方針が必要であるという基本原理です。
軍を率いるにあたっては、「誰がどのように動くか」「どのタイミングで命令を出すか」などを明確にしていないと、内側から崩れていくのです。
これは軍に限らず、組織運営、プロジェクトの始動、家庭や人間関係においても同様です。
◆ 仕事
仕事においてこの爻を得たときは、新しいプロジェクトや人を巻き込む活動のスタート段階にあります。
このとき、最も大切なのは「秩序」と「ルール」です。
誰がどの役割を持つか、何を優先とするかなど、明確な方針と共有された目的意識がなければ、たとえ目的が正しくても、空中分解する恐れがあります。
勢いで始めるのではなく、慎重に準備と調整を重ねること。
それが成功の鍵です。
◆ 恋愛
恋愛においてこの爻は、関係の始まりや転機に際しての心構えを表しています。
相手との関係を深めたい、または関係に変化を加えたいと望むとき、まずはお互いの気持ちや距離感、価値観についての確認が必要です。
いきなり情熱に任せて突き進むのではなく、相手と調和を取りながら歩調を合わせる姿勢が求められます。
特に、自分だけが進んでしまう、もしくは一方的に主張を通そうとするような行動は、思わぬ誤解やすれ違いを生むもとになります。
◆ 地水師(初爻)が教えてくれる生き方
この爻が私たちに教えてくれるのは、「正義や熱意だけでは物事は成り立たない」という現実的な戒めです。
たとえ目的が立派であっても、準備不足や規律のなさがすべてを台無しにすることもある――
それは人生のあらゆる局面で当てはまる真理です。
だからこそ、始める前にはよく調べ、整え、心を合わせること。
この慎重さこそが、やがての成功と平和を呼び込むのです。
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