周易64卦384爻占断
35、天水訟(てんすいしょう)5爻
◇ 訟とは何か?
『訟(しょう)』の卦は、「言(げん)」を争うと書くように、理や言い分の対立、あるいは訴訟や言い争いを象徴します。
しかしこの卦が伝えるのは、単なる勝ち負けではなく、「どのようにして争いを収めるか」という深い道理です。
そのなかで、五爻は訟の中で最も重要な位置を担います。争いを裁く側に立ち、公平で中正な判断を下す役割を持つのです。
◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
訟、元吉。
【象伝】
訟、元吉は、中正を以てなり。
「元吉」とは、最も大きな吉を意味する言葉です。
この五爻が「元吉」である理由は、乾(天)の卦の中で最も適切な位置にあるためです。剛健でありながら中正の徳を持つ、まさに公正無私な判断者であるからです。
訟を起こす者ではなく、それを裁く者として理に基づいた判断を行うので、「元吉」と言われるのです。
象伝にも、「中正を以てなり」とあります。正しい中心を保ち、私心のない判断ができるからこそ、すべてを円満に収めることができるのです。
◆ 含まれる教え
この爻は、「正しい立場と見識によって、混乱を調停し、平和をもたらすことの尊さ」を教えています。
争いの渦中にある人々に対して、公平な目を持ち、偏らず、情に流されることなく事を裁く。
それによって訟の紛争は治まり、世は落ち着いていく。
このように、裁くべき人がしかるべき位置にいることこそが、最上の吉(元吉)をもたらすということです。
◆ 仕事
この爻を得た時、あなたは中心的な判断を下す立場にあります。
部下同士や取引先との間で意見の対立が起こっている場合も、あなたの一言が状況を整える鍵となるでしょう。
ただし、ここで重要なのは「中正」の姿勢です。
たとえ感情的に近しい者がいても、公平を欠いてはいけません。
正義に基づいた判断を貫くことが、信頼と吉運を生み出すのです。
また、評価や裁定を下す立場に立つことで、これまで見えなかった人の本質を知る機会にもなるでしょう。
◆ 恋愛
恋愛では、過去のわだかまりやすれ違いが和らいでいく兆しです。
この時期においては、相手と冷静に話し合い、公正な視点で関係を見つめ直すことが大切です。
過去に起きたことを蒸し返すよりも、今の状況をどう受け止め、どう向き合っていくかを重視してください。
あなたが冷静に対応すれば、相手も歩み寄ってくる可能性が高く、和解や前進へとつながります。
また、仲介者が現れて助けてくれる可能性もあります。その人物を信頼して相談するのも吉です。
◆ 天水訟(五爻)が教えてくれる生き方
五爻が伝えるのは、「真に強い者とは、公平であろうと努める者である」という教えです。
争いの中で自分の感情に流されず、理に従って冷静に判断を下すこと。
それが自分自身の心を守ると同時に、他者の信頼を得、ひいては社会の秩序を保つのです。
中正な態度を失わずに物事に向き合えば、たとえ困難の中にあっても必ず「元吉」に導かれるでしょう。
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