周易64卦384爻占断
11、坤為地(こんいち)5爻
◇ 坤とは何か?
「坤(こん)」は、大地のような広く深い包容力を象徴する卦です。陽の創造に対して、陰はそれを受け入れ、支え、育む存在。静けさと従順、柔和と忍耐といった徳を重んじ、「補佐すること」「受け容れること」に本質的な強さを見出す卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
坤為地は、「従うこと」の中にある真の力を説く卦です。表に出て主張するのではなく、状況や人に応じて柔軟に動き、調和と安定をつくりだす道を教えてくれます。第五爻は、そうした陰の徳が最高の形で結実する位置。静かな品位と賢明なリーダーシップが示されます。
◆ 五爻の爻辞と解釈
爻辞:黄裳(こうしょう)、元吉(げんきつ)。
象伝:黄裳元吉は、文中に在るなり。
「黄裳」とは、黄色い裾(すそ)の衣。古代中国では「黄」は中庸・正統を意味し、また帝王の色でもあります。ただし「裳(も)」は衣の下半分、つまり表立ってではなく、控えめな美徳を象徴します。
つまり、上に立つ者が地味で控えめな姿勢を守りつつ、内にしっかりとした信念と節度を持っていること。これが「元吉」とされる大いなる吉兆なのです。
◆ 含まれる教え
この爻は、陰の卦の中にありながら「君位」にあるという、非常に象徴的な位置です。自ら前面に出ず、周囲の有能な者に信頼を置き、彼らの力を引き出すことで政治や組織がうまく回るという、柔らかな指導者の理想像を示しています。
第五爻の陰爻が、第二爻の陽爻(賢臣)を用いることで、最大の安定がもたらされるという解釈も重要です。上に立つ人が自らの柔和さを強みとし、剛健な者を用いる——その協調こそ、坤卦における理想の統治です。
◆ 仕事
組織の中で責任ある立場にある方にとって、この爻は大きな教訓を与えてくれます。自分一人で抱え込まず、周囲の力を信じて任せることが成功の鍵。特に、才能ある部下を見いだし、正しく用いることができれば、自然と成果はついてきます。静かで節度ある姿勢は、周囲の信頼を深め、穏やかで持続的な成果を導くでしょう。
◆ 恋愛
恋愛においては、自分を飾りすぎず、自然体でいることが信頼と安定を生みます。主張しすぎず、相手の気持ちや状況に寄り添いながら、穏やかな関係を築いていく姿勢が「元吉」へとつながります。関係を育むのは、派手な演出ではなく、静かな思いやりと継続的な配慮なのです。
◆ 坤卦(五爻)が教えてくれる生き方
「目立たぬ美徳は、やがて最も大きな吉を生む」。
この爻は、上に立つ者が決して驕らず、誠実で節度ある姿勢を保ち、有能な他者を信頼することの尊さを教えています。控えめであることが弱さではなく、むしろ最も安定した強さになるという、陰の力の本質がここに示されています。
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