今週行われる世界の伝統的な祭典(2025年6月16日〜22日)

世界の祭典

梅雨の季節でしっとりした日本とは対照的に、世界各地では今週も多彩な伝統祭が繰り広げられます。今回は、2025年6月16日〜22日の週に海外で開催されるユニークな宗教行事・祭典を3つご紹介します。それぞれ宗教も地域も異なり、静謐な儀式から賑やかな祝祭までバランスよくピックアップしました。文化・旅行好きな皆さん、ぜひ世界の祭典巡りの旅気分をお楽しみください。

1、アンブバチ・メラ(Ambubachi Mela)
アンブバチ・メラで賑わうインド・アッサム州のカーマキャー寺院
祭典日: 2025年6月22日〜26日(毎年6月下旬の4日間)  
開催地: インド北東部アッサム州グワハティ近郊・ニラーチャル丘陵のカーマキャー寺院(Kamakhya Temple) 

歴史と特色: 「アンブバチ・メラ」は、ヒンドゥー教の女神カーマキャー(シヴァ神の妃サティーの化身)の年に一度の“月経”を祝う祭典です。

インド有数の聖地であるカーマキャー寺院は、女神のヨニ(子宮)を祀る珍しい寺院で、石の割れ目から湧く清水を女神の象徴としています。毎年雨季の頃に「大地の母」が生理を迎えるとされ、寺院は最初の3日間閉門。

この間、農作業や日常の礼拝も控え、女神の静養と大地の肥沃を祈る風習です。4日目の明け方、寺院は清めの儀式を経て再開し、待ちわびた信徒たちが押し寄せます 。豊穣と女性性の神秘を讃えるアンブバチ・メラは、インドでも最もパワフルで神秘的な祭典の一つと称され、**毎年数百万人の巡礼者や修行者(サドゥ)**が世界中から集う壮観な宗教集会です。

期間中は境内や麓の町に露店が立ち並び、普段は人前に姿を見せないタントラ僧もこの時ばかりは現れて独特の秘儀を披露するなど 、熱気とスピリチュアルな雰囲気が渾然一体となっています。夜通しマントラが響く中、女神のご加護を求めて長蛇の列に並ぶ人々の姿からは、大地の生命力と女性の神聖さを崇めるインドならではの信仰心が感じられます。  

参考リンク: カーマキャー寺院公式サイト(祭日カレンダー) 、現地メディアによる解説記事  

2、エル・コラチョ(El Colacho)

祭典日: 2025年6月22日(聖体節直後の日曜日) 
開催地: スペイン・カストリーリョ・デ・ムルシア村(カスティリャ・イ・レオン州ブルゴス県) 

歴史と特色: 「エル・コラチョ」は、17世紀頃から400年以上続くとされるスペインの奇祭で、カトリックの聖体祭(コーパス・クリスティ)の一環として行われています。

小さな村で繰り広げられるこの伝統行事では、なんと悪魔に扮した男たちが生後1年以内の赤ちゃんを次々と飛び越えるのです! 祭りの主役「コラチョ(悪魔)」は赤と黄色の派手な衣装に悪鬼の面をつけ、大きなキャスタネットと鞭を手に村人を追い回します。

一方、黒いマント姿の「アタバレロ」(太鼓役)が厳かに太鼓を叩きながら現れると、人々は道にマットレスを敷いて赤ん坊たちを横たえます。太鼓の合図で始まるクライマックスの**「コラチョの跳躍」では、悪魔たちが助走をつけてずらりと並んだ赤ん坊たちを一気にジャンプ** 。悪魔が赤ん坊の上を飛び越えることで罪や邪気が払い去られ、健やかな成長がもたらされると信じられてきました。

起源には諸説ありますが、悪魔払いと豊穣を祈る古い異教風習とカトリックの洗礼信仰が融合したものと考えられています。この風変わりな儀式に対し、「原罪は洗礼で清められるべきだ」とするカトリック教会から批判もあり、かつてベネディクト16世が自粛を求めたこともあるほどです。

しかし村人たちは誇りをもって伝統を守り抜き、祭りは悪魔をも笑い飛ばすような陽気さに包まれています。笛や太鼓の行進、広場での音楽と踊り、美しい花で飾られた祭壇行列など1週間にわたる村の聖体節のお祭りはフィナーレの「エル・コラチョ」へと最高潮に達します。異様にも微笑ましい赤ちゃんジャンプの光景は、観光客にも「世界の奇祭」として知られるようになり、村には国内外から好奇心旺盛な人々が訪れるようになりました。悪魔役の男が無垢な赤ん坊を飛び越えて福をもたらす——そんな逆転の発想が400年受け継がれてきたこと自体、この村の信仰とユーモア精神を物語っています。

参考リンク: スペイン観光ポータル(祭り紹介), ナショナルジオグラフィック記事 

3、アイマラの新年祭(冬至祭ウィルカクティ)

祭典日: 2025年6月21日(南半球の冬至) 
開催地: ボリビア・ラパス県ティワナク遺跡(およびボリビア国内のアンデス高地各地) 

歴史と特色: ボリビアの先住民族アイマラにとって、冬至は新年の始まりです。南半球では6月が一年で最も夜の長い時期にあたり、太陽が再び力を取り戻すこの日をアイマラの人々は古来「ウィルカクティ(太陽が戻る日)」と呼び、新年として祝ってきました。

太陽崇拝や大地母神パチャママへの供物など、インカ帝国以前から伝わるアンデスの信仰行事で、農耕サイクルに合わせた冬至祭でもあります。スペイン植民地期には弾圧され忘れられかけた伝統ですが、アイマラ文化の復興に伴い1970年代以降に徐々に復活し、2010年にはボリビア政府が「アイマラ新年」として6月21日を正式な祝日(アンデス・アマソニカ新年)に制定しました  。毎年この日、首都ラパス近郊の世界遺産ティワナク遺跡では、アイマラの人々と訪れた観光客が夜明け前から集い、新年の儀式を行います。石造りの太陽神殿の東門に差し込む一年最初のご来光を仰ぎ見る瞬間は、厳かな静寂と感動に包まれます。

夜明けとともに先住民の司祭(アマウタ)が太陽と大地に感謝を捧げる儀式を執り行い、人々は空に向かって両手を掲げて新しい太陽のエネルギーを浴びます。会場ではリャマ(アルパカ)の生贄や聖なる焚火、コカの葉や地酒シンガニを捧げる伝統的な祭祀が行われ、カラフルな民族衣装に身を包んだアイマラの男女が太鼓や笛の音に合わせて夜通し踊り明かす姿も見られます。

厳粛な祈りとともにどこか素朴な高揚感に満ちたお祭りで、日の出後には先住民の手工芸市や音楽・舞踊ショーが開かれるなどお祝いムード一色です。

年によってボリビア大統領が参加することもあり、新年(アイマラ暦5533年)を迎えるこの冬至祭は、いまやボリビア国民の文化的誇りともなっています。  

参考リンク: ボリビア政府観光局サイト(アイマラ新年), ボリビア現地情報サイト 

以上、今週開催の世界の伝統的な祭典を3つご紹介しました。それぞれの祭りには長い歴史とその土地ならではの信仰や風習が息づいており、静かに祈りを捧げる儀式から度肝を抜くような奇祭まで実に様々です。機会があれば、旅先でこれらの祭典に直接触れてみるのも面白いかもしれません。異文化の祭りを通じて、人々の暮らしや信仰への理解が一層深まりますように。どうぞ良い旅を!  

コメント

タイトルとURLをコピーしました