7月28日(月)から8月3日(日)にかけて開催される神社祭典

神社祭典暦

はじめに

日本各地では夏になると伝統ある神社の祭典が盛大に催され、人々の心を躍らせます。今年(2025年)の7月28日(月)から8月3日(日)にかけて開催される祭典の中から、東日本・中部・西日本を代表する3つの神社祭礼をご紹介します。どれも長い歴史と独自の文化を誇り、地域の誇りとして愛されているお祭りです。それぞれの来歴や神事の内容、地域との関わり、そして見どころをたっぷりとお伝えします。

1、東日本代表:八戸三社大祭(青森県八戸市)

八戸三社大祭(はちのへさんしゃたいさい)は青森県八戸市で毎年7月31日から8月4日に開催される、八戸地方最大の夏祭りです 。その歴史はおよそ300年にも及び、江戸時代中期の享保6年(1721年)に始まったと伝えられています 。当時、凶作に悩んだ八戸の人々が龗(おがみ)神社に五穀豊穣を祈願し、無事に秋の収穫を迎えられた御礼として神輿を造り、翌年に長者山新羅神社まで渡御したのが祭りの起源とされています 。このため八戸三社大祭は龗神社・長者山新羅神社・神明宮の三社による合同の例大祭という形で受け継がれてきました 。

八戸三社大祭の一番の見どころは、古式ゆかしい三社の神幸行列と、地元各町内が趣向を凝らして制作する山車(だし)の豪華絢爛な競演です 。高さ約10メートル・幅8メートルにも及ぶ巨大な山車が、市内を練り歩く様子は圧巻で、神話や歴史、歌舞伎の場面を題材に彩られた全27台もの山車が次々と目の前を通過するたびに、沿道の観客から大きな歓声が上がります 。昼間は迫力満点の山車行列が街を埋め尽くし、夜には提灯や照明でライトアップされた山車が闇夜に浮かび上がり幻想的な雰囲気を醸し出します。これら昼夜で表情を変える山車の美しさも八戸三社大祭の魅力の一つです。さらに行列には大神楽や虎舞、駒踊りといった郷土芸能も加わり、笛や太鼓のお囃子が響く中、祭り全体が熱気に包まれます 。5日間の祭典期間中、八戸の街には例年100万人を超える人出があり 、東北地方の津軽エリアで有名な青森ねぶた祭や秋田竿燈祭りにも引けを取らない活気と規模を誇ります 。

この伝統ある祭りは文化的価値も高く評価されており、2004年には「八戸三社大祭の山車行事」として国の重要無形民俗文化財に指定され、2016年12月には他地域の山車祭礼とともにユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」に登録されました 。地域の人々にとって八戸三社大祭は郷土愛の象徴であり、各町内の若者からお年寄りまで総出で祭りに参加します。三社の神々を迎え送りする厳かな神事と、住民が一体となって創り上げる華やかな祭り絵巻が融合した八戸三社大祭は、まさに地域の誇りと伝統を未来につなぐ盛典と言えるでしょう。その歴史に思いを馳せつつ、豪壮な山車と熱気あふれる祭り囃子を全身で感じれば、八戸という土地と人々の絆の深さを実感できるに違いありません 。

2、中部代表:桑名石取祭(三重県桑名市)

中部地方からは、三重県桑名市の**桑名石取祭(くわないしどりまつり)**をご紹介します。桑名市の春日神社(地元では桑名宗社とも称される)を中心に毎年8月第1日曜と前日の土曜に行われる祭礼で、その勇ましさから「日本一やかましい祭り」あるいは「天下の奇祭」として全国に知られています 。2025年は8月2日(土)に試楽、8月3日(日)に本楽(本祭)が開催され、旧東海道の町並みや市街地一帯が祭り一色に染まります 。

石取祭の最大の特徴は、精巧な彫刻や豪華な装飾を施した約40台もの祭車(山車)に取り付けられた鉦(かね)や太鼓を、祭り参加者たちが一斉に打ち鳴らす轟音です 。豪華絢爛な祭車が繰り出す勇壮な音の競演は初めて聞く人を圧倒し、そのあまりの賑やかさに「日本一やかましい」と評される所以となっています 。祭りのクライマックスでは、本楽当日に各町内の祭車が決められた順序で春日神社に宮入し、神社前で力強い石取囃子(いしどりばやし)を奉納します 。この祭囃子の披露は「渡祭(とさい)」と呼ばれ、神様への奉納行事であると同時に、各町の誇りをかけた技と熱気の競演でもあります。太鼓や鉦の音に合わせて担ぎ手たちが掛け声をあげ、祭車を激しく揺すりながら練り歩く様子は荒々しく勇敢で、見る者の胸を熱くします 。夜には提灯の灯りに照らされた山車が街を巡り、昼間とはまた違った妖艶な美しさを見せてくれます。

石取祭の起源は江戸時代初期に遡り、その名の通り「石を取る」神事に由来します。かつて夏の禊(みそぎ)として町屋川(現在の員弁川)で身を清め、清浄な川原の小石を採取して春日神社に奉納し、祭場を清めたことが始まりでした 。この石取御神事が発展して庶民も楽しむ夏祭りとなり、江戸時代には桑名城下の町人や武士たちが心待ちにする一大娯楽行事へと成長しました 。町ごとに所有する豪華な祭車を自慢の彫刻や人形、提灯で飾り立て、一年に一度の祭りに向けて丹念に準備する様子からは、地域の誇りと結束が感じられます。祭り当日には老若男女を問わず町中の人々が参加し、鉦や太鼓の音が街いっぱいに響き渡る様子はまさに圧巻です 。石取祭の祭車行事は2007年に国の重要無形民俗文化財に指定され、2016年には八戸三社大祭と同様「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されました 。地域に根差した伝統文化として、その保存・継承にも力が注がれており、子ども達も小さい頃から太鼓や鉦の音に親しみ、祭り好きの「桑名っ子」として育っていきます 。

勇壮な石取祭は、見る者の五感を刺激するエネルギッシュな祭典です。夜明け前の午前0時、春日神社前で合図の提灯が振られるや否や一斉に鉦と太鼓を叩き出す「叩き出し」の瞬間から祭りは最高潮に達します 。この叩き出しは一瞬でも早まると翌年の参加停止という厳格な掟があり、参加者全員が心を一つにして合図を待つ緊張感も伝統の一部です 。豪華な祭車が織りなす視覚の豪華さと、日本一とも称される大音量の祭囃子の迫力。その両方を体感できる桑名石取祭は、桑名の町に脈々と受け継がれてきた文化と誇りを肌で感じられることでしょう 。

3、西日本代表:住吉祭(大阪府大阪市・堺市)

西日本からは、大阪の夏の風物詩である**住吉祭(すみよしまつり)を取り上げます。住吉祭は大阪市住吉区の住吉大社で行われる夏祭りで、愛染祭(あいぜんまつり)、天神祭と並んで「大阪三大夏祭り」の一つに数えられる由緒ある祭典です 。毎年7月30日から8月1日にかけて開催され、2025年も同様の日程で実施されます 。その歴史は古く、『住吉大社神代記』によれば奈良時代には既に「六月御解除(みはらえ)」**として夏越しの大祓が恒例化していたと伝えられ 、平安時代以降、住吉大神に夏の厄災払いを祈る祭礼が営まれてきました。中世から近世にかけては祭りの規模・格式ともに「大坂の天神祭を超える」ほどであったとされ 、400年前の祭礼行列の様子が描かれた「住吉祭礼図屏風」などの古絵巻にもその賑わいが記録されています。

現代の住吉祭は、「大阪を丸ごとお祓いして清める」ことを目的に行われるとも言われ、3日間で約30万人もの人出で賑わう大阪夏の一大イベントです 。7月30日の宵宮祭(よいみやさい)に始まり、境内では祭太鼓の演奏や龍踊り(じゃおどり)などの催しが行われ、夜店の屋台も約300店が立ち並んで祭り気分を盛り上げます 。7月31日にはメインの夏越祓神事(なごしのはらえしんじ)と例大祭が斎行されます 。夏越祓神事は大阪府指定無形民俗文化財にもなっており 、白装束に身を包んだ稚児や選ばれた女性「夏越女(なごしめ)」たちが、茅で編んだ大きな輪(茅の輪)をくぐって半年間の罪や穢れを祓います 。境内では雅楽が奏でられる中、厳かな雰囲気で執り行われるこの神事は、暑気払いと無病息災を祈る古式ゆかしい儀式です。続いて第一本宮では例大祭の神事が執り行われ、神前にて熊野舞や住吉踊りといった伝統芸能も奉納されます 。

そして8月1日にはハイライトとなる神輿渡御祭(お渡り)が行われます 。この祭りでは大阪市の住吉大社から、南隣の堺市に設けられた宿院頓宮(しゅくいんとんぐう)まで、全長約4メートル・重量約2トンにも及ぶ巨大な神輿が担ぎ出されるのです 。古くは住吉大社の氏地が大阪側と堺側で地続きでしたが、江戸時代に大和川の付け替え工事で二つの地域が川によって隔てられてしまいました 。それでも神輿が川を越えて堺に渡御する伝統は途切れることなく続き、現在も「お渡り」と呼ばれて堺の人々に厚く信仰されています 。神輿一行は7月31日夕方に住吉大社を発ち、8月1日午後に大阪市と堺市の境界をなす大和川に到着します 。ここで担ぎ手たちは掛け声勇まかしく神輿ごと川の中へと入っていき、膝上まである水位の川を渡るのです。大勢の男衆が神輿を水しぶきとともに担いで進み、川の中州で一旦神輿を高々と差し上げる様は圧巻で、見物客から大歓声が上がります 。この大和川の川渡りこそ住吉祭最大の見せ場であり、力と技と気迫が結集した勇壮かつ珍しい神事として知られています 。川の中州で神輿を大阪側から堺側の担ぎ手へと引き継ぎ、堺側の担ぎ手が再び「ワッショイ!」と神輿を担いで川を渡り切ると、堺市側の堤防では堺太鼓の力強い音や火縄銃保存会による祝砲が迎え、神輿の到着を祝福します 。こうして無事に堺宿院頓宮に神輿が納められると、住吉大神は堺の地で一夜を過ごし、翌日再び大和川を越えて本宮へ還御します。

この住吉祭をもって、大阪の夏祭りシーズンは幕を閉じるとも言われています 。住吉の大神が大阪のみならず堺の街も清め守護するというこの祭りは、二つの都市を結ぶ絆の象徴でもあります。地元の人々にとって住吉祭は地域の誇りであり、古代から連綿と続く伝統行事への参加を通じて郷土愛が育まれてきました。茅の輪をくぐり厄を祓う子供達の真剣な表情、神輿を担ぐ男衆のかけ声と汗、そして川を渡る壮大な神輿行列――その一つ一つが1300年の歴史を持つ住吉大社と周辺地域の深いつながりを物語っています。夏の盛りに繰り広げられる住吉祭は、歴史と熱狂、そして清めの祈りが融合した大阪ならではの祭典として、見る者の心に強い感動を刻むことでしょう 。

おわりに

7月末から8月初旬にかけて開催される神社祭典を、東日本・中部・西日本から一つずつご紹介しました。それぞれのお祭りは地域の歴史や風土と深く結びつき、独自の進化を遂げながら今日まで受け継がれてきたものです。八戸三社大祭の豪壮華麗な山車絵巻、桑名石取祭の魂を揺さぶる轟音の響宴、そして住吉祭の神聖にして勇壮な川渡り神事――どの祭典にも地域の人々の熱い思いと誇りが込められており、見る者を強く惹きつける魅力があります。ぜひ公式情報や現地の観光案内なども参考にしつつ 、実際に足を運んでこれら伝統のお祭りを体感してみてください。きっと、その土地ならではの熱気や感動、そして神様への畏敬の念を肌で感じる特別な体験となることでしょう。日本の夏を彩る神社祭典の数々が、皆様にとって忘れられない思い出となりますように。

参考資料: 八戸三社大祭公式観光サイト 、八戸市公式サイト 、桑名市観光ガイド 、石取祭公式ホームページ 、大阪観光情報(OSAKA-INFO) 、住吉大社公式サイト など.

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