周易64卦384爻占断
379、火水未済(かすいびせい)初爻
◇ 火水未済とは何か?
火水未済(かすいびせい)は、上が火(離:り)/下が水(坎:かん)の卦です。
火は上へ、水は下へ――性質が噛み合いにくく、物事がまだ「まとまり切らない」段階を示します。けれど未済は、ただの不運ではありません。整っていないからこそ、手順を踏み、焦りを抑え、積み上げを続ければ、やがて既済(ととのう、なす、わたる)ところへ届く。
つまり未済は、急いで仕上げようとするほど崩れ、落ち着いて進むと最後には整う卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
未済が示すのは、「まだ渡り切っていない時の、軽はずみを戒めよ」という知恵です。
最初は難しく見えても、腰を据えて倦まずに進めば、後で整う道が開けます。ところが、入口の段階で見通しも固まらないうちに功を焦って踏み込み、途中で息切れして引き返すことになりやすい。
未済の運びは、勢いよりも、段取りと力の配分が決め手です。
◆ 初爻の爻辞と象伝
【爻辞(こうじ)】
「その尾(お)を濡(うるお)す。吝(りん)。」
【象伝(しょうでん)】
「その尾(お)を濡(うるお)すは、また極(きょく)を知(し)らざるなり。」
● 解釈
この初爻は、まだ渡り切っていないのに、前へ出たい気持ちが先に立ち、肝心の足場や力の見積りが追いつかないまま動いてしまう姿を描いています。「尾を濡らす」とは、進みかけて早々に力が尽き、結局引き返す――その“早合点のつまずき”の象です。未済は、これから仕上げねばならない卦ですから、ここでの失速は「惜しい」では済まず、段取りを崩し、評価や信用まで傷つけやすい。それが「吝」の意味合いになります。
象伝の「極を知らざる」は、限界の見きわめができていないことです。どこまで踏み込めば危うくなるのか、どれだけ準備があれば渡れるのか、その境目を知らずに、勢いと見栄で一歩を出してしまう。すると、難所の深さに途中で気づき、慌てて止めたり撤回したりして、かえって混乱を大きくする――この爻は、そういう“尚早の妄動”を強く戒めます。
だから、この初爻の勧めは「動くな」ではなく、「今のままの動き方で進むな」です。功を急がず、手順を整え、味方や資源を固め、危うい線を見分けてから渡ること。未済は、焦りを抑えた者にだけ、後で“済う”道を開いてみせる卦なのです。
◆ 含まれる教え
- まだ準備が整っていないのに突っ込むと、途中で息切れして引き返す事になる
- 失速の原因は「力不足」よりも「限界(極)の見積り不足」にある
- 早く形にしようとするほど、せっかく開きかけた道を自分で潰しやすい
- 今は成果の派手さより、段取り・準備・力配分が最優先
- 未済は最初は“慎重”な準備が必要。そうすれば後で自然に整ってくる
◆ 仕事
仕事では、見通しが立たないうちの強行が一番の損になりやすい時です。
- 勢いで始めると、途中で破綻して撤回・やり直しになりやすい
- 投機的・強引な勝負は、信用や資金を削る形で損失を生む
- 交渉は押し切るより、条件と段取りを固めてから動くのが吉
- 独立・改革・拡張は今は控え、現状を守りつつ整えると良い
- 「進む前の準備」に力を注ぐほど、後で流れが通る
◆ 恋愛
恋愛では、「気持ちが先に走るほど、後で苦しくなる」形が出やすい爻です。
- 盛り上がりで先へ進むと、途中で無理が出て関係が息切れしやすい
- 周囲を押し切る進め方は、後で誤解や不信を生みやすい
- まだ定まらない段階での強い約束は、破談やすれ違いの火種になりやすい
- 別の誘惑や軽率な行動が、信用を一気に損なう危険がある
- 今は「進める」より、互いの事情・覚悟・距離感を整えることで安定する
◆ 火水未済(初爻)が教えてくれる生き方
未済の初爻は、「渡る前に、渡り方を整えよ」と教えます。
尾を濡らすのは、頑張りが足りないからではなく、限界を見誤って焦ったから起こること。だからこそ、今は手を広げず、足場を固め、進むべき時に進む。
早さではなく、確かさで渡る――それが未済の初爻が示す、いちばん賢い生き方です。


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