周易64卦384爻占断
377、水火既済(すいかきせい)5爻
◇ 水火既済とは何か?
水火既済(すいかきせい)は、上が水(坎)/下が火(離)の卦です。
火は上へ、水は下へ向かう性質を持ちますが、この卦ではそれが噛み合って、いったん「事が成り、整った」状態を示します。
ただし既に整っているからこそ、ここから先は前へ押し出すより、止まって保つことが肝心になります。完成のあとの一手が、吉凶を分ける卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
既済が伝える中心は、「いま整っているからこそ、外を飾るより中身を締め直せ」という戒めです。
順調さが続くほど、気は緩み、体裁や見栄が前に出て、肝心の中身が薄くなりがちです。だから既済は、過剰な演出や拡張より、節度・緊縮・実質を選ぶことで、完成を“本当の安泰”に変えていく道を示します。
◆ 五爻の爻辞と象伝
【爻辞(こうじ)】
「東鄰(とうりん)の牛(うし)を殺(ころ)すは、西鄰(せいりん)の禴祭(やくさい)して、実(まこと)にその福(さいわい)を受(う)くるにしかず。」
【象伝(しょうでん)】
「東鄰(とうりん)の牛(うし)を殺(ころ)すは、西鄰(せいりん)の時(とき)にしかざるなり。実(まこと)にその福(さいわい)を受(う)くるは、吉(きち)大(おお)いに来(きた)るなり。」
● 解釈
この五爻は、「盛大に飾り立てれば安泰が強固になる」と思いがちな心を、静かに正します。
“牛を殺す”ほどの盛大さは、一見すると力があり、誠意も深いように映ります。けれど既済の時は、整っているがゆえに、盛大にするほど驕りが入りやすい。賑やかに整えたつもりが、いつの間にか体裁や虚栄に寄り、肝心の内実が置き去りになる。そうなると、福は「見た目の立派さ」ではなく、「中味の薄さ」によって削られていきます。
そこで爻辞は、西隣の“禴祭”――簡略な祭りを持ち出します。ここで言いたいのは、ただ倹約しろという話ではありません。簡略でも、時にかなっていて、心がまっすぐであるなら、むしろそれが本当の福を受け取る形になる、ということです。象伝の「西鄰の時にしかざるなり」は、「今は盛大さを用いる時ではない」と言い切っています。つまり局面判断です。整った局面で上乗せを続ければ、均衡は崩れる。だからこそ、余分な虚飾を落とし、筋を通し、誠を中心に据える――そのほうが結果として「実にその福を受くる」へつながる。
さらに象伝は「吉大いに来る」と結びます。派手さを捨てるのは福を“実際に残す”方向へ運びを変えることだからです。外を飾るほど出費や無理が増え、内が苦しくなる。内を引き締めるほど綻びが止まり、必要な助けも得やすくなる。既済の五爻は、華美よりも誠、誠よりも時宜――その順で、安泰を守り抜く道を示しています。
◆ 含まれる教え
- 外を賑やかに整えるより、簡約でも誠を立てるほうが本当の福に通じる
- 既済の時は、盛大さが驕りに変わりやすい。だからこそ質素にして内側を充実させる
- 「時にしかざる」=いまの局面に合う運びを選ぶことが肝要
- うわべの豊かさより、収支・体力・中身の充実を優先する
- 誠実は通るが、見栄や贈り物頼みはかえって逆効果となる
◆ 仕事
仕事では、派手な拡張や演出より、規模と支出を締めて“持ちこたえる形”を作るのが要点です。
- 物入りばかり増えて成果が追いつかないなら、まず緊縮・縮小で立て直す
- いまのうちに整理を断行すれば、更生の道が残る
- 大げさに動くより、忠実で実務に強い人に任せ、自分は退いて内情の乱れを整理する
- 交渉は“目立つ勝ち方”より、実際の効果が残る方針を選ぶ
◆ 恋愛
恋愛では、外見の華やかさに引かれやすい時ほど、内実の苦しさが露わになりやすい爻です。
- 見栄で背伸びして相手を求めるほど、無理が積もって関係が崩れやすい
- 華やかさや条件より、誠実さ・生活の釣り合い・安心感を基準にするのが吉
- 「贈り物でうまく運ぶ」発想に傾くと、気持ちが空回りしやすい
- 求められても、状況が苦しい時は無理に進むのを避け、立ち止まって内実を整えたほうが安全
◆ 水火既済(五爻)が教えてくれる生き方
五爻が教えるのは、「盛大さを好み外見を飾り立てれば福は遠のき、質素して内面の充実を計れば本当の福を受けることができるが」という感覚です。
既に整ったところで、さらに体裁を飾れば、内側は空虚になり、やがて乱れが表に出てきます。簡略でも誠を立て、身の丈に合う形に整え直す――そのほうが、現実の安泰として“福”が手元に返ってくる。
既済の五爻は、完成の次に必要なのは“見栄の上乗せ”ではなく、実質の締め直しだと、静かに言い切っています。

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