周易64卦384爻占断
374、水火既済(すいかきせい)2爻
◇ 水火既済とは何か?
水火既済(すいかきせい)は、上が水(坎)/下が火(離)の卦です。
火は上へ、水は下へ向かう性質を持ちますが、この卦ではそれが噛み合って、いったん「事が成り、整った」状態を示します。
ただし既に整っているからこそ、ここから先は前へ押し出すより、止まって保つことが肝心になります。完成のあとの一手が、吉凶を分ける卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
既済が教える中心は、「もう一歩」を欲しがる気持ちを抑え、成果を守り抜く知恵です。
小さな欠品や遅れが見えると、人は取り返そうとして動きます。けれど既済の時は、その動きがかえって乱れを呼びやすい。
いまは、喪失したものを追い回すより、整った全体を崩さないこと――その“中道”が、結果として最もよく通ります。
◆ 二爻の爻辞と象伝
【爻辞(こうじ)】
「婦(ふ)・茀(ふつ)を喪(うしな)う。逐(お)うことなかれ。七日(なのか)にして得(え)ん。」
【象伝(しょうでん)】
「七日(なのか)にして得(う)るは中道(ちゅうどう)をもってなり。」
● 解釈
二爻は、「全体の一部」をふと喪失する場面を描いています。茀(ふつ)は飾りとも、車の覆いのような“外へ出るための備え”とも言われますが、ここでの核心は、欠けが出たことで前へ進みにくくなるという点です。すると心は騒ぎ、失ったものを追いかけ、今すぐ元通りにしたくなる。けれど既済は、いま無理に動けば動くほど、整っていた流れのほうを壊してしまう時です。だから爻辞は、はっきり「逐うことなかれ」と言います。
「追わない」とは、何もしないということではありません。失ったものの穴を埋めようとして走り回らず、まず全体の形を守り、余計な乱れを起こさないように“保つ”。その静かな選択が、既済の安泰に合っています。そして「七日して得ん」は、取り戻しが“力づくの回収”ではなく、一巡して自然に戻る性質のものだという示しです。焦って動くほど遠のき、落ち着いて保つほど戻りやすい――その逆説がここにあります。
象伝が「中道をもってなり」と言うのは、まさにその間合いです。悔しさや不安に駆られて追い立てない。けれど投げやりにもならず、姿勢を正して待つ。そういう“ほどよい保ち方”が、結果として回復を呼び込みます。さらにこの爻は、小さな失策がむしろ大きな安全になることも示します。少し止められたおかげで、危うい流れに飛び込まずに済む。取り返そうと無理を重ねるより、いまは腰を据えて内情を整え直すほうが、既済の道にかなうのです。
◆ 含まれる教え
- 喪失を取り返そうとして動くほど、全体が乱れやすい
- 追わずに現状を保つことで、自然に戻る運びが生まれる
- 「七日」は回復の間合い。焦らず待つほうが得策
- 小さな不都合が、かえって大きな安泰を守ることがある
- 中道――追い過ぎず、焦らず、普段通りを守り、力を蓄え、自然に戻る機を待つ―が吉を呼ぶ
◆ 仕事
仕事では、取り返す動きより、腰を据えて内部を整えるほうが結果に直結します。
- 小さな齟齬や手落ちは、焦って埋め合わせをするより、全体の安定を守って修正の機を待つ
- いまは旧来の流れを守り、無理な改革・強行突破をしないほうがよい
- 力を出し切れず歯がゆい時でも、急いで動くと進退が苦しくなる
- 交渉は押すより、相手の出方を待ち、準備と蓄えを厚くするのが吉
- 時を待てば道が開けるので、今は足元の整備と充実に努める
◆ 恋愛
恋愛では、「失った」「外した」と感じる出来事ほど、追わないほうが戻りやすい時です。
- 不安から答え合わせを急ぐほど、関係の流れを乱しやすい
- 小さなすれ違いは、追及よりも落ち着きを取り戻す時間を作る方が効く
- その場の焦りで応対すると、かえって信用を傷つけやすい
- いったん引いて丁寧に状況を整理するほど、自然に“戻る”機会が来やすい
- 縁が終わったように見えても、近く本筋の良縁が現れやすいので心を乱しすぎない
◆ 水火既済(二爻)が教えてくれる生き方
二爻が教えるのは、喪失したものを取り返そうと追わない強さです。
失ったものを追い回せば、整っていたものまで崩しやすい。けれど中道を保ち、焦らず待てば、一巡ののちに自然と戻る。
いまは、取り返すより、守る。動くより、整える。
その静かな選び方が、既済の安泰を長く保たせる――それが二爻の道です。

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