周易64卦384爻占断
366、風沢中孚(ふうたくちゅうふ)上爻
◇ 風沢中孚とは何か?
風沢中孚(ふうたくちゅうふ)は、「まこと(孚)」が内側に満ちて、人と人の間に通い合う卦です。
外から飾って信じさせるのではなく、内実の誠が自然に表へにじみ出て、信頼が形になる――その働きを示します。
互いに兌口を接して親和し、心を通わせるのが中孚の姿です。
◆ 卦全体が教えてくれること
この卦が繰り返し示すのは、信頼は「器用さ」より「一貫した誠」によって立つ、という点です。
誠が一点に定まっていると、人の助けも得やすく、物事の筋が通ります。反対に、心が別の方向へ向いた途端、落ち着きはなくなり、人間関係も仕事も不安定になりやすい。
中孚は、信じ合う関係を“育てる”卦であると同時に、心の散りを“戒める”卦でもあります。
◆ 上爻の爻辞と象伝
【爻辞(こうじ)】
「翰音(かんいん)天(てん)に登(のぼ)る。貞(てい)なれば凶(きょう)。」
【象伝(しょうでん)】
「翰音(かんいん)天(てん)に登(のぼ)るは、何(なん)ぞ長(なが)かるべけんや。」
● 解釈
上爻は卦の極点にあり、中孚の「まこと」が薄れて、見せかけの“誠らしさ”だけが浮き上がりやすいところです。
ここでいう「翰音(かんいん)」は、羽ばたきの音――つまり、音だけは高いのに、実際の力が伴わない状態を表します。飛ぶ力がないのに、さも飛べるかのように羽音を立てる姿に、内側の空虚を覆い隠し、誠があるように装う様子が重ねられています。
象伝が「何ぞ長かるべけんや」と言うのは、そうした“外側の勢い”が続かないからです。
声、体裁、勢いに頼るほど、どこかで綻びが出て、信を失いやすい。そこで「貞(てい)」――正しいとして守り抜こうとするなら凶になる、と釘を刺します。
大切なのは志そのものを否定することではなく、足場(実力・計画・根拠)が薄いまま高みを求める偏りを改めることです。
また、この爻は変じて「節(せつ)」の方向を帯びます。
つまり、いま必要なのは拡大や誇示ではなく、分を知り、節度を守って内実を整えること――それが凶を呼ばない道になります。
◆ 含まれる教え
- 誠は「声の大きさ」ではなく「中身」で決まる
- 体裁や勢いで押すほど、長続きしない
- 実力と堅実な計画・実行が伴わない上昇志向は、凶に転びやすい
- いま必要なのは前進より節度、拡大より整備
- 「正しい」と思い込んで固執すると、傷が深くなる
◆ 仕事
仕事では、掛け声先行・見栄の拡大・計画倒れに注意が出ます。
- 目標を高く掲げても、裏づけ(人・金・時間・手順)が薄いなら見直しが必要
- 評判や名声が先に立つ時ほど、慢心せず、実務の積み上げで支えること
- 無理な約束、強引な押し通しは反発や信用の失墜につながりやすい
- いまは攻めるより、節度を持って「できる範囲」を確実にするのが吉
- 交渉は、誠意を示すなら“言葉”より“条件・履行・実行”で示すこと
◆ 恋愛
恋愛では、見かけ・雰囲気・評判に引かれて判断がぶれやすい時です。
- 立派に見える言葉や体裁だけで決めると、後で落差が出る
- 間に立つ人の口添えや噂は、鵜呑みにせず事実を確かめる
- 無理を通そうとする関係は、かえって不安定になる
- いまは“派手さ”より“誠実な積み重ね”を選ぶのが安全
- 隠し事や二重の関係は露見して傷になりやすいので、早めに整理する
◆ 風沢中孚(上爻)が教えてくれる生き方
この爻が教えるのは、誠は“飾って保つ”ものではないという一点です。
羽音を高くしても、飛ぶ力がなければ天には届かない。外側を立派に見せるほど、内実の薄さが露わになり、信は長続きしません。
だからこそ、ここでは「節」に立ち返り、分を守り、足場を固めることが勧められます。
見せ方より中身、勢いより確かさ。
それを選ぶとき、中孚の「孚(まこと)」は空名ではなく、実際に人を動かす力として息を吹き返します。

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