周易64卦384爻占断
363、風沢中孚(ふうたくちゅうふ)3爻
◇ 風沢中孚とは何か?
風沢中孚(ふうたくちゅうふ)は、「孚(まこと)」――胸の奥の誠が、言葉や態度ににじみ出て、人の心に届く卦です。
上の巽(風)は“通い入って伝える力”、下の兌(沢)は“受けとめて和する場”。押しつけではなく、誠が先に立って自然に通うところに本道があります。
◆ 卦全体が教えてくれること
中孚は、信頼の土台が「中心の真実さ」にあることを教えます。
ただし、誠があるからこそ関係が近づきやすく、近づくほど感情も揺れやすい。
誠が揺らぐと、同じ“結びつき”が、たちまち不安定さに変わります。つまり、孚は人を結ぶ力であると同時に、揺れの起点にもなりうる――その両面を見よ、というのが中孚の深さです。
◆ 三爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「敵(てき)を得(え)て、あるいは鼓(こ)し、あるいは罷(や)み、あるいは泣(な)き、あるいは歌(うた)う。」
【象伝】
「あるいは鼓(こ)しあるいは罷(や)むは、位(くらい)当(あた)らざればなり。」
● 解釈
この三爻は、本来なら心が通い合うはずの相手がいるのに、気持ちが落ち着かず、相手を“敵”のように感じてしまう局面を描いています。
ここでの「敵」は、単なる憎しみの相手というより、気になる・求める・期待するがゆえに、反発や疑いが生まれ、心が対立の形を取ってしまう相手、と捉えるのが自然です。
爻辞は、心の振れ幅をそのまま列挙しています。
勢いよく進もうとして鼓す一方で、急に力が抜けて罷む。悲しみに傾いたかと思えば、今度は歌う。つまり、行動の方向が定まらず、感情が先に立って自分の足場が揺れているのです。
象伝の「位当たらざれば」は、この不安定さの根を示します。落ち着くべき位置に落ち着いていないため、誠の働きが一定せず、気持ちがそのまま外に噴き出してしまう。
中孚は本来、誠が通って調和へ向かいますが、三爻では、お互いに結びつきは強いが位が正しくないので些細な不安や誤解で心が乱れ、結果として“敵”のような構えになりやすい。ここに凶意が出ます。
したがって、この爻が促す第一の態度は、前へ押し出すことではありません。
衝動で動けば動くほど揺れが増し、途中で止まる・壊れる・感情的に終える、という形になりやすいからです。まずは心が波立つ状況から距離を取り、判断を落ち着かせ、行動を整えることが要ります。
中孚の「孚」は、熱量で証明するより、落ち着いた継続の中で育つものだからです。
◆ 含まれる教え
- 心が引かれるほど、好悪の振れも大きくなる
- 勢いで進むと、やめたくなる反動が必ず出る
- 感情が先に立つと、行いが中途半端で終わりやすい
- 相手のせいに見えても、実際は自分の軸の不安定さが原因になりやすい
- まず止まり、冷静を取り戻してから、誠を通すべきである
◆ 仕事
仕事では、方針が揺れて定まらず、着手と中断を繰り返しやすい象です。
- 勢いで始めた案件ほど、途中で気持ちが折れやすい
- 相手(取引先・上司・同僚)への感情で判断がぶれやすい
- “頼りにした人が期待どおりに動かない”と感じて不満が増えやすい
- 交渉は熱くなるほど破綻しやすいので、条件を絞り、段取りを固めてから臨む
- 無理に前へ出ず、守りを整えて小さく確実に積み上げるようにすると立て直せる
◆ 恋愛
恋愛では、惹かれ合うのに不安定で、悲喜が交互に出やすい象です。
- 好きだからこそ疑い、疑うからこそ相手が敵のように見える
- 試す・駆け引き・勢いの言動が、関係を壊しやすい
- その場の感情で「別れる/戻る」を繰り返しやすい
- いったん距離と時間を置き、言葉を整えてから誠実さをもって向き合うと持ち直す
- まとまりにくい縁は、熱意で押すほどこじれやすいので、急がないことが肝要
◆ 風沢中孚(三爻)が教えてくれる生き方
心が乱れているとき、誠はあっても、その誠がまっすぐ届きません。
惹かれ合う関係ほど、感情が先走って、鼓し、罷み、泣き、歌う――そんな揺れを生みます。
だからこの爻は、まず「止まる」ことを教えます。
衝動で動くのをやめ、言葉を減らし、やることを絞り、冷静を取り戻す。
そのうえで、中心の誠を立て直す。
誠実は熱で証明するものではなく、揺れない態度で育てるもの――三爻は、その現実的な戒めを示しています。

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