周易64卦384爻占断
362、風沢中孚(ふうたくちゅうふ)2爻
◇ 風沢中孚とは何か?
風沢中孚(ふうたくちゅうふ)は、「まこと(孚)」が内側に満ちて、人と人の間にも通い合う卦です。
外から飾って信じさせるのではなく、内実の誠が自然に表へにじみ出て、信頼が形になる――その働きを示します。
互いに兌口を接して親和し、心を通わせるのが中孚の姿です。
◆ 卦全体が教えてくれること
この卦が繰り返し示すのは、信頼は「器用さ」より「一貫した誠」によって立つ、という点です。
誠が一点に定まっていると、人の助けも得やすく、物事の筋が通ります。反対に、心が別の方向へ向いた途端、落ち着きはなくなり、人間関係も仕事も不安定になりやすい。
中孚は、信じ合う関係を“育てる”卦であると同時に、心の散りを“戒める”卦でもあります。
◆ 二爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「鳴鶴(めいかく)陰(いん)に在(あ)り、その子(こ)これに和(わ)す。我(われ)に好爵(こうしゃく)あり。吾(わ)れ、爾(なんじ)とこれを靡(とも)にせん。」
【象伝】
「その子(こ)これに和(わ)するは、中心(ちゅうしん)より願(ねが)うなり。」
● 解釈
この爻は、目立つ場所ではなく「陰」に身を置きながら、そこから発する声が届き、それに応える声が生まれる、という情景で語られます。
大事なのは、声を張り上げて引き寄せるのではなく、中心からの誠が先に立っている点です。象伝が「中心より願う」と言い切るのは、まさにここで、打算や飾りではなく、内側からの願いが交感を起こすと見ています。
「好爵」は、外から見て立派な爵禄・名誉と捉えてもよいのですが、爻の息づかいとしては、手元にある“よいもの”を喜びとして持っていることが核です。そして、この爻が美しいのは、それを自分だけで抱え込まず、相手と共にすると述べるところにあります。
つまり、誠の交感は「与え合う」形で完成する、独占は禁物――そういう筋です。
一方で、この爻が兌(悦び)に根を持つ以上、喜びが強まるほど、情に棹さして流される危うさも同時に出ます。
誠から始まった交感が、いつの間にか「好きなほうへ寄る」「甘いほうへ傾く」だけになれば、同じ“和する”でも、芯のある和ではなく、崩れやすい和になります。だから、交わりが深いほど、節度と注意が必要だ、という含みもここにあります。
また、この爻は「分かち合う」徳があるため、何かを施せば見返りが来る、という流れも生みやすい。
ただしそれは、見返りを狙って与えるのではなく、誠で分かつからこそ、結果として酬いが伴う、という順序で理解するのが自然です。
◆ 含まれる教え
- 誠は、派手さより“心からの願い”により声をかけることで伝わる
- 交感は、呼びかけと応えが自然に結ばれるときに強くなる
- 良いものは独占せず、分かつことで心が結ばれる
- 喜びが深いほど、情に流される危険も増える
- 与えるときは打算でなく、誠で分かつのがよい
◆ 仕事
仕事では、信頼関係が深まり、協力が集まりやすい時を示します。
- 水面下で積み重ねた働きが、きちんと評価・協力に結びつきやすい
- 一人の手柄にせず、成果や利益を分かち合うほど、組織の結束が強まる
- チームで動くほど力が出るが、甘さや馴れ合いが増えると統制を失う
- 適材を得て任せる(番頭・支配人のような役)ほど、運びがよくなる
- 交渉も「誠実な条件」「互いに益のある形」を作るとまとまりやすい
◆ 恋愛
恋愛では、相思の応答・気持ちの呼応が起こりやすい象です。
- 想いが真実であれば、相手の反応も自然に返ってきやすい
- “秘密めいた親密さ”が深まりやすい一方、情事の間違いも起こりやすいので注意
- 好きなものに溺れると誠心が濁り、関係が乱れやすい
- 障りがあっても、心が通い合えば成立しやすいが、軽い気分の揺れは禁物
◆ 風沢中孚(二爻)が教えてくれる生き方
誠が心の底にあるなら、声は届き、相手もこれに和します。
そして、獲得した喜びや良いものは独り占めせず、分かち合うことで、信頼はさらに深くなる。
ただし、悦びが強いほど、情に流される危険も増えます。
誠で結び、誠で分かち、節度で守る。
この三つを揃えることが、中孚二爻の吉を長く保つ道です。

コメント