周易64卦384爻占断
361、風沢中孚(ふうたくちゅうふ)初爻
◇ 風沢中孚とは何か?
風沢中孚(ふうたくちゅうふ)は、「まこと(孚)」が内側に満ちて、人と人の間にも通い合う卦です。
外から飾って信じさせるのではなく、内実の誠が自然に表へにじみ出て、信頼が形になる――その働きを示します。
互いに兌口を接して親和し、心を通わせるのが中孚の姿です。
◆ 卦全体が教えてくれること
この卦が繰り返し示すのは、信頼は「器用さ」より「一貫した誠」によって立つ、という点です。
誠が一点に定まっていると、人の助けも得やすく、物事の筋が通ります。反対に、心が別の方向へ向いた途端、落ち着きはなくなり、人間関係も仕事も不安定になりやすい。
中孚は、信じ合う関係を“育てる”卦であると同時に、心の散りを“戒める”卦でもあります。
◆ 初爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「虞(はか)れば吉(きち)。它(た)あれば燕(やす)からず。」
【象伝】
「初九(しょきゅう)虞(はか)れば吉(きち)は、志(こころざし)いまだ変(へん)ぜざるなり。」
● 解釈
ここでの「虞」は、単なる心配ではなく、事情や道筋をよく知り、迷いなく取り違えない“通暁”を含む語です。
初爻は卦の出だしで、まだ力も十分とは言えません。だからこそ、闇雲に動くのではなく、分かっている筋・慣れた領分・確かな手掛かりを押さえて進むことが吉になります。
象伝が「志いまだ変ぜざる」と述べるのは、心が一つに定まっている状態を指します。
この段階では、誠の芯が揺れないほど、四爻(相手・支えとなる側)との呼応も得やすく、結果として「吉」に近づきます。
一方、「它あれば燕からず」の「它」は、正しい相手や本筋とは別のものへ心を寄せることです。
中孚は信頼が要になる卦ですから、心が二つに割れると、安心して腰を据える場所(燕=安息)が作れない。落ち着かず、判断もぶれ、信頼も薄れやすい――それを端的に戒めています。
要するに初爻は、
- よく分かる道で誠を立てるなら吉
- 他へ心が移れば不安が生まれる
という、始まりの心得を示しています。
◆ 含まれる教え
- まず「分かっている筋」を踏むことが吉を呼ぶ
- 誠は一点に定まるほど強い
- 心が他へ移ると、落ち着き(燕)が失われる
- 信頼は増やすより、守りぬくことが先
- 誘い・新奇・乗り換えは、初動ほど慎むべき
◆ 仕事
仕事では、「専門」「本業」「得意領域」に忠実であるほど伸びます。
- これまで積み上げた分野、通暁している領域に集中すると吉
- 方針変更や路線転換を急ぐと、手応えを掴めない
- 相談役・援助者は、誠を守っていると自然に現れやすい
- “買収・引き抜き・別口のうまい話”に心が揺れると不安定になる
- 誠信で当たればまとまるが、成果は控えめに見積もるのが堅い
◆ 恋愛
恋愛では「移り気を戒め、信頼を育てる」ことが必要です。
- 急がず騒がず、着々と進めるほど縁が安定する
- 余計な駆け引きや、他へ目を向ける気配は“燕からず”を招きやすい
- 信頼して任せるところと、節操を重んじることの両方が要る
- 誠実さが評価される一方、軽い気移りはすぐに不穏を招く
◆ 風沢中孚(初爻)が教えてくれる生き方
中孚の始まりは、「誠を立て、他に心を動かさない」ことに尽きます。
自分がよく知っている道に身を置き、信頼できる相手と誠を通わせる――それだけで吉は育ちます。
反対に、あれこれと心を散らし、別の甘い誘いへ傾くと、安心を得られず心が落ち着かない。
志を変えず、誘惑に乗らず、得意のことに傾注する。
それが、この初爻のまことの強さです。


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