周易64卦384爻占断
357、水沢節(すいたくせつ)3爻
◇ 水沢節とは何か?
水沢節(すいたくせつ)は、「ほどよく区切る」「節制する」ことで、物事を健やかに保つ卦です。
出過ぎを抑えるのはもちろん、止まり過ぎて滞るなら、その滞りもまた調整する――つまり節とは、進む/退くの加減を知る働きだといえます。
◆ 卦全体が教えてくれること
節の時は、勢いだけで動くと上手く行きません。
一方で、ただ縮こまるのでもなく、場に応じて「ここまでは出る」「ここからは出ない」という線引きが要ります。
この卦が求めるのは、強さよりも分限を知る慎みであり、外へ広げるより先に、内側を整える態度です。
◆ 3爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「節若(せつじゃく)たらざれば、則(すなわ)ち嗟若(さじゃく)たり。咎(とが)なし。」
【象伝】
「節(せっ)せざるの嗟(なげ)きは、また誰(だれ)をか咎(とが)めん。」
● 解釈
三爻は、節の卦の中で「節制を忘れやすいところ」です。
位置が安定せず、しかも兌の気(よろこび・楽しさ・ゆるみ)を帯びるため、気が緩みやすい。――その結果、「節制を守らなければ、嘆くことになる」と言い切られています。
ここで重要なのは、嘆きが生じる仕組みです。
外から不運が降ってくるというより、自分で度を越え、最後に自分で困窮する。
だから象伝は「誰を咎めようか」と言うのです。原因を外に求めたくなる局面でも、実は節制を守らなかった責任は自分の側にある――この冷たいほどの明晰さが、この爻の骨格です。
そして爻辞の「咎なし」は、よくある「無難」という意味ではありません。
「責める相手がいない」という意味合いが強い。
つまり「罰が当たる」というより、「自己責任の結果として嘆く」のであって、他人に押しつける余地がない、ということです。
また、この爻は急に立て直そうとしても、土台がすぐ整うわけではない。焦って大きく方針転換するより、まずは怠りや気の緩みと言った習性を一つずつ改めるところから始めよ、という含みになります。
◆ 含まれる教え
- 度を外すと、最後は自分が嘆く
- 嘆きの原因を外に探しても、責める先は見つからない
- 立て直しは「急な奮起」ではなく「緩みを直す順序」から
- 快楽・惰性・気のゆるみは、節の時には最も危険な敵になる
◆ 仕事
仕事面では、「楽(らく)な方」「気分の楽な方」に流れて、締め切り・品質・責任の帳尻が合わなくなる象が出ます。
- 先延ばしや怠りが積み重なり、追い込まれて崩れる
- 自分の力量以上の責任を背負い、やり切れずに苦しくなる
- 優柔不断のまま動いて、後から悔いが残る
- 立て直そうとして急に無理をし、健康や継続性を損ねる
この爻が勧めるのは、「一気に挽回」ではなく、度を越えたやり方をやめることです。
現実を明らかにして、上の意見や助言を取り入れ、勝手な見通しで押し切らない。節の卦らしく、まず基準を定めるのが要点です。
◆ 恋愛
恋愛では、快い方に流れて節度が薄れやすい、という警告が強く出ます。
軽い気持ち、警戒の欠如、場の空気に流されること――それが後に嘆きへつながる。
- その場の楽しさに引かれて判断が甘くなる
- 相手を見極める前に深く踏み込んでしまう
- 後になって「なぜあの時…」と自分を責める形になりやすい
ここは、相手の問題というより「自分の節度」の問題として出ます。
だからこそ、最初の線引き(会う頻度・約束・距離感)を曖昧にしないことが、この爻の処方になります。
◆ 水沢節・3爻が教えてくれる生き方
節の時に節を外せば、最後には悲嘆を招く。
そしてその嘆きは、誰かのせいにできない。――この厳しさが三爻の芯です。
けれども、これは突き放しているのではなく、立て直しの入口でもあります。
嘆くほどになってから大改革を夢見るのではなく、まず気の緩みを引き締め、習いを改める。
「節度を守る」という地味な対策が、結局いちばん確かな救いになります。

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