周易64卦384爻占断
354、風水渙(ふうすいかん)上爻
◇ 風水渙とは何か?
風水渙(ふうすいかん)は、「渙=散らす」卦です。
ただ散って無くなってしまうのではなく、閉塞して通らなくなったものを散らし、滞った流れを通すところに眼目があります。
心のこわばり、誤解、隔たり、行き詰まり――そうした“固着した障害”がゆるみ、動き出す入口を示します。
◆ 卦全体が教えてくれること
渙の時は、これまで艱難があった人は、辛苦から解放され、これまで順調だった人は、渙散の危険に晒されます。
停滞を吹き散らすには、独りで抱え込むより、信頼できる助力者・仲介者・仕組みを借りて、まず流れを生む。
散らすべきもの(疑い・こだわり・混線)を散らし、守るべき核心(誠・筋道)は残す――この仕分けが、渙の吉凶を分けます。
卦の終わり(上爻)では、「攻めて散らす渙」ではなく「害から離れて身の安泰を保つ渙」が眼目になります。
◆ 上爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「その血(ち)を渙(ち)らす。去(さ)りて逖(とお)く出(い)づ。咎(とが)なし。」
【象伝】
「その血(ち)を渙(ち)らすは、害(がい)に遠(とお)ざかるなり。」
● 解釈
ここで言う「血」は、傷つくこと・揉め事・禍の気配を指す語です。
「血を渙らす」とは、血なまぐさいところへ踏み込まず、そこから生じる痛みや損傷を“蒙らないようにする”態度です。
続く「去りて逖く出づ」が肝要で、少し引く程度ではなく、危うい圏内そのものから外へ出ることを求めています。
そして、その結果として「咎なし」――退くことは弱さではなく、害を避けるための正しい身の処し方であり、責めを残さない、という結論になります。
象伝が「害に遠ざかる」とまとめるのは、まさにこの爻の核心が「勝つ・通す」ではなく、危険を遠ざけて無傷で終える点にあるからです。
この場面では、立て直しを“自ら前へ出てやる”より、争いの種から離れて自分の身の安全を高尚に保つほうが、渙の働きにかなっています。
◆ 含まれる教え
- 争いの気配があるなら、勝つよりも「傷を負わない」を優先する
- 退くなら中途半端にせず、距離を十分に取る
- 危うい縁・危うい場から離れて、身を清く保つ
- “手を出さない判断”が、結果として最善になる局面がある
◆ 仕事
仕事では、「関わるほど損が増える局面」からの撤退・距離の取り方がテーマになります。
- 争点に踏み込みすぎず、役割と責任の境界を明確にする
- 無理にまとめに行かず、いったん離席・担当替え・延期などで火勢を弱める
- 有利に見える話でも、裏にリスクがあるなら口を挟まない
- 引退・撤退・縮小・撤収は、むしろ好機になりうる
◆ 恋愛
恋愛では、情に引きずられるほど傷つきやすい場面での「退き際」を示します。
- こじれた関係を力で戻そうとせず、距離を置いて熱を冷ます
- 相手の言動が荒れやすい時は、議論で勝つより安全を優先する
- 好き嫌いとは別に、傷つく縁からは離れる決断が必要
- 退くことで、結果的に自分の品位と平安を守れる
◆ 風水渙・上爻が教えてくれる生き方
渙の終わりにあたる上爻は、「散らして救う」よりも、「害から遠ざかって身を安全に保つ」ことに重心があります。
血なまぐさいものに巻き込まれず、争いの場から十分に離れ、静かに自分を整える。
その退き方は消極的なものではなく、状況を見抜いたうえでの節度ある判断です。
近づけば傷が増えるとき、最もよい道は、遠ざかることによって咎を残さない――ここがこの爻の教えです。


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