周易64卦384爻占断
345、兌為沢(だいたく)3爻
◇ 兌為沢とは何か?
兌為沢(だいたく)は、兌(よろこび・悦び)が重なる卦です。
兌の力は、人の心をほぐし、場を和ませ、関係を近づけます。けれど同時に、悦びが傾けば、口先・迎合・甘い誘惑にもなりやすい。
この卦は「悦びを徳として用いるか」「悦びを手段にして身を崩すか」を、はっきり分けて見せます。
◆ 卦全体が教えてくれること
悦びは人を引き寄せます。だからこそ、扱いを誤ると害も大きい。
兌為沢が教えるのは、悦びを広げるには、まず正しい筋に立つこと、そして節度を失わないことです。
その筋を外れて悦びを求めると、悦びは品を失い、いつの間にか「媚び」や「巧言」に変わり、最後は信用も立場も損ねます。
◆ 三爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「来(きた)りて兌(よろこ)ぶ。凶(きょう)。」
【象伝】
「来(きた)りて兌(よろこ)ぶの凶(きょう)は、位(くらい)当(あた)らざるなり。」
● 解釈
この三爻のポイントは、「兌ぶ」そのものよりも、“来りて”兌ぶにあります。
悦びが自然に整って生まれるのではなく、自分から悦びを取りに行く姿です。
兌の悦びは、本来、和やかさの中に落ち着きがあり、相手も自分も無理がない形で広がってゆくものです。
ところが三爻は、その悦びを 自分の都合で引き寄せようとしやすい。たとえば、
- 相手の機嫌を取って事を通そうとする
- うまい言葉、愛想、持ち上げ方で流れを作ろうとする
- 本筋の努力より、雰囲気や口先で近道をしようとする
こうした方向に寄りやすく、悦びが「徳」ではなく、巧みな見せかけの悦びになってしまいます。
象伝が「位当たらざるなり」と言うのは、まさにここです。
悦びを用いる場所が当たらないため、悦びが正しく働かず、かえって
- 信用が薄くなる
- 侮られる
- 表面は整っても、裏面で破れが生じる
という形で凶が出やすいのです。
この爻は、「悦びを求める気持ち」そのものを咎めるというより、悦びで人を動かそうとするやり方が危うい、と告げています。
悦びを作るのに熱心になるほど、肝心の正しい筋道が抜け落ちやすい。そこが落とし穴です。
◆ 含まれる教え
- 悦びは「やってくるもの」で、追いかけて掴もうとするほど歪みやすい。
- 機嫌取り・口先・迎合で事を運ぶと、信用を失ってゆく。
- 表向きが良いほど、裏に無理が溜まっていることがある。
- 正道から外れた悦びは、最後に凶へ傾く。
◆ 仕事
仕事では、評判・印象・場の空気で押し切ろうとすると凶が出やすい時です。
交渉や営業で、うまい話・甘い約束・過剰な持ち上げに頼るほど、後から痛みが出ます。
- 条件や根拠を固める
- “言い方”より“中身”を先に整える
- おだてや迎合でなく、筋を通して進める
- その場の歓心を買うより、信用を積む
これが三爻の処し方になります。
◆ 恋愛
恋愛では、雰囲気や愛嬌に流されやすい時です。
相手の見せ方、口のうまさ、周囲の口添えに引かれるほど、判断が甘くなりやすい。三爻はそこに凶を見ています。
- 相手の言葉より行いを見る
- 甘い誘いほど急がず確かめる
- 外見の魅力だけで決めない
- 仲介の言葉を鵜呑みにしない
“悦び”を急いで掴みに行かず、落ち着いて筋の正邪を確かめることが大切です。
◆ 兌為沢・三爻が教えてくれる生き方
悦びは、正しく使えば人を救い、場を明るくします。
けれど、悦びを「道具」にしてしまうと、言葉は柔らかくても心は濁り、信用はなくなってゆきます。
三爻が教えるのは、悦びを追いかけるよりも先に、誠実さをもって地道に行う正しい筋に立てということです。
誠実さの筋が整えば悦びは自然に生まれ、筋が外れれば悦びは仇になる。
悦びを“取りに行く”のではなく、“地道に正道を履んで育てる”――それがこの爻の要点です。

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