周易64卦384爻占断
343、兌為沢(だいたく)初爻
◇ 兌為沢とは何か?
兌為沢(だいたく)は、沢(兌)が重なる卦です。
兌は「よろこび」を表しますが、その核にあるのは、ただ楽しいという感情ではなく、人と心が通い、場が和らぎ、言葉が滑らかに通るような喜びです。笑顔や軽やかさが生まれ、互いに角が取れていく――兌の明るさは、そうした「和やかな空気」をつくります。
ただ、兌は軽くなりやすい面も持っています。楽しさが先に立つと、言葉が過ぎたり、欲が混ざったり、安易な方向へ流れたりしやすい。兌為沢は、喜びを正しく保つには、どこに軸を置くべきかを教える卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
兌のよろこびは、強く押し出して作るものではなく、整えた和の中から自然に立ち上がるものです。
だから兌為沢が重んじるのは、「もっと盛り上げる」よりも、偏りをつくらず、ほどよさを守ることです。
よろこびがある時ほど、余計な一言や、分を越える行動、私的な欲が入り込みやすい。崩れるのは、外の事情よりも、たいていはこちら側の軽さです。兌為沢は、明るさを失わないためにこそ、足元の和を丁寧に保て、と告げています。
◆ 初爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「和(わ)して兌(よろこ)ぶ。吉。」
【象伝】
「和(わ)して兌(よろこ)ぶの吉(きち)は、行(おこな)いていまだ疑(うたが)わざるなり。」
● 解釈
ここで言う「和」は、単に仲良くするというより、味が偏らず、尖らず、ほどよく整っているという意味合いです。初爻は、兌の始まりの位置にあって、喜びがまだ素直で純粋な段階です。だから爻辞は、派手さや刺激ではなく、和の中で自然に喜べることを、そのまま「吉」としています。
象伝の「行いていまだ疑わざるなり」は、初爻のよろこびは、疑いを呼び込みにくいことを述べています。つまり、駆け引きや裏読みを先に立てず、素直な気持ちで動ける。そのために、行いが疑惑を招くことなくまっすぐ通り、相手から不審に見られにくい。ここが初爻の強みです。
ただし、この吉は「和」に支えられているので、軸を外すと途端に困厄を招きます。喜びを大きくしようとして、言葉を足し過ぎる、約束を増やし過ぎる、分を越えて踏み込む――そうすると、和が薄れ、相手の受け取り方も変わり、疑いの芽が生じやすくなります。だからこの爻が示す要点は、今ある調和を崩さない範囲で進むことです。
結局、兌の初爻における最善は、他に働きかけたり私欲を満たしたりする楽しさではなく、自分の分を守り、和して喜ぶことです。派手な変化より、現状を保ちながら誠実に進める。そこにこそ「和して兌ぶ。吉」の実感があります。
◆ 含まれる教え
- よろこびは「和」を保持してこそ吉として働く。
- 疑いを招く前の素直さを守ると、関係が安定する。
- 盛り上げようとして手を加え過ぎると、和が乱れやすい。
- 自分の分にとどまって他からの誘惑を受けず己の本分を尽くすと、兌の明るさは長続きする。
◆ 仕事
仕事では、空気が丸く、合意が通りやすい時です。対立を煽るより、和解・調整・歩み寄りが成果になりやすい。打ち合わせも、互いの面子より着地点を大切にすると、まとまりが見えます。
ただし初爻は、勝負を仕掛けるより、今の調和を保って進めるのが合っています。
- 体制や方針を大きく変えない
- チーム内の親和を崩さない
- 交渉は長引かせず、ほどよい線で結ぶ
こうして和を守ると、よろこびが「成果」として現れやすくなります。
◆ 恋愛
恋愛では、言葉が通りやすく、自然に気持ちが和む時です。無理に飾らなくても、相手が安心しやすい。ここで大事なのは、相手に多くを求めて温度を上げ過ぎないことです。求めるものが増えるほど、和が偏り、疑いも生まれやすくなります。
初爻が勧めるのは、
- 相手の反応を確かめながら、心地よい範囲で進む
- 約束を増やすより、安心を増やす
- 余計な詮索をせず、素直に受け取る
といった姿勢です。盛り上げるより、穏やかな信頼を育てるほど吉が安定します。
◆ 兌為沢・初爻が教えてくれる生き方
よろこびは、追いかけて得ようとすると疑いをかけられ、動かずに周囲と和して待つと深まりやすい。
兌の初爻が教えるのは、和を保てば、平安の喜びは自然に得ることができるという道です。みだりに動いて疑いを増やさず、自分の分を越えず、他からの誘惑を受けず、本分を尽くして現状を丁寧に守る。そうして生まれる明るさが、吉として続いていく――それが、この初爻の教えです。


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