周易64卦384爻占断
339、巽為風(そんいふう)3爻
◇ 巽為風とは何か?
巽為風(そんいふう)は、風(巽)が重なる卦です。風は力で押し切らず、すき間に入り、静かに広がって、いつの間にか流れを変えます。巽も同じで、強さよりも柔らかさ・慎み・丁寧さで物事を通していく時を示します。
ただし風は、向きが定まらないと周囲がかき乱されます。巽も、従い方が揺れると「ただ振り回される」形になり、信用や足場を失いやすい。巽為風は、従順でありながら芯を立てることを教える卦です。
◆ 卦全体が教えてくれること
巽の学びは、「従う」そのものではありません。
何に従い、どこで止まり、何を守るか――その基準を持ったうえで、相手に丁寧に合わせていくことです。
芯が決まっていれば、柔らかな対応が“虚礼”になります。芯がなければ、柔らかさは“ぶれ”になり、相手や状況に流されてしまいます。
◆ 三爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「頻(しき)りに巽(したが)う。吝(りん)。」
【象伝】
「頻(しきり)に巽(したが)うの吝(りん)は、志(こころざし)窮(きゅう)するなり。」
● 解釈
ここで言う「頻りに巽う」は、よく従う・丁寧に従うという褒め言葉ではありません。
「頻り」は“たびたび”で、従い方が落ち着かず、相手や場面に合わせて態度や方針が何度も変わることを指します。
たとえば――
ある人には強く同調し、別の人には引き、状況が変わるとまた言い分を変える。
その時は丸く収まったようでも、積み重なるほど「この人の本心はどこにあるのか」が見えなくなります。巽のよさは“信頼を育てる丁寧さ”ですが、頻りになると、丁寧さではなく軽さ・あやふやさとして受け取られやすいのです。これが「吝」です。
象伝の「志窮する」は、その結果を示しています。
ぶれる従い方を繰り返すと、周囲に主導権を握られ、信用も薄れ、やがて選択肢がなくなる。
自分で決めて進む力が弱まり、状況に押されて動くばかりになって、最後は行き詰まりやすい。
だから三爻は、まず従い方を一本に定めよと戒めています。
要点はこうです。
- 従うことを“その場の安全策”にすると、自分の志がおろそかになる。
- 発言のブレが続くと、誠意が疑われ、信用が薄れる。
- 信用が薄れると、選択肢が減り、志が窮する。
つまり三爻は、「従う量」ではなく、従い方の安定を求めています。
◆ 含まれる教え
- その都度相手に従うほど、かえって立場が苦しくなることがある。
- その場を収めるより、長い目の信用を優先する。
- 「譲れる線」と「譲れない線」を先に決める。
- 迷いが出たら、相手に合わせる前に一度止まって整える。
◆ 仕事
仕事では、
- 上司ごとに言うことを変える
- 取引先に合わせすぎて条件がぶれる
- 方針が頻繁に変わって周囲がついてこない
といった形で「頻りに巽う」の吝が出やすい時です。
最初は器用に見えても、変更が続くと「結局どれが本決まりなのか」「誰の言葉を信じればいいのか」と不信を招き、周りの信用を落とします。
ここは、強く出るよりも、決めごとを固定することが大切です。
- 方針を一つに絞る
- 条件の線引きを先に作る
- “今日はこれを決める”と論点を限定する
こうして軸を立ててから相手に丁寧に合わせると、巽が生きます。
◆ 恋愛
恋愛では、相手に合わせすぎて、
- 距離を詰めたり空けたりが続く
- 好意を示した直後に不安で冷たくなる
- 相手の反応で言葉や態度が変わる
という不安定な「頻り」が出やすい。
本人は「嫌われたくない」だけでも、相手からすると不安定で、気持ちが読めません。すると関係がまとまりそうでまとまらず、心が疲れていきます。これが三爻の「吝」の出方です。
ここは、駆け引きよりも安定した歩幅が吉です。
- 連絡の頻度を無理に変化させない
- 約束や言葉を増やしすぎない
- 不安な時ほど一度時間を置いて丁寧に整理してから返す
“風向を一定にする”ように、落ち着いたペースを守るほど信頼が育ちます。
◆ 巽為風・三爻が教えてくれる生き方
巽は、柔らかく従う道です。けれど、柔らかさが優柔不断になると、風の方向性は乱れ、居場所を失います。
三爻は、「従うなら、従い方を定めよ」と教えます。
自分の本心・本分は何かということをしっかりと確認し、その本心・本分に沿った方向性に徹底してしたがう。そうすれば巽は卑屈ではなく、静かな強さになります。頻りをやめ、一定の風として進む――それが、この三爻の道です。

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