周易64卦384爻占断
332、火山旅(かざんりょ)2爻
◇ 火山旅とは何か?
火山旅(かざんりょ)は、が山(艮)の上にある火(離)が止まることなく燃え移ってゆく卦で、人生の「旅」――つまり仮の場所に身を置く時期を表します。旅先では、いつものやり方が通りにくく、立場も足場も安定しません。だからこの卦は、成果を誇るよりも、そこでの身の処し方・礼儀・控えめな振る舞いが運命を分けると教えます。
◆ 卦全体が教えてくれること
旅の時は、勢いで押して道を開くより、先に“安定のために必要なもの”を整えて守るほうが安全です。
仮の場だからこそ、言葉や態度の小さな乱れが大きな摩擦になりやすい。反対に、宿舎・資金・助力者を得て、分を守って進めるなら、派手さはなくても崩れにくい――それが旅の処世術です。
◆ 二爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「旅(りょ)・次(じ)に即(つ)き、その資を懐(いだ)き、童僕(どうぼく)を得。貞(てい)なり。」
【象伝】
「童僕(どうぼく)を得(え)て貞(てい)なるは、終(つい)に尤(とが)めなきなり。」
● 解釈
二爻は、旅の卦の中で「旅を成り立たせる要点」がきれいに揃うところです。
まず「次に即く」は、移動のさなかでも腰を下ろせる宿・居場所が決まり、無用な流転が止まることを言います。次に「資を懐く」は、旅に欠かせない手許の資金・用立て・持ち分が保たれること。そして「童僕を得」は、身辺を支える実務の助け・手伝い・協力者を得て、旅がより安全になる姿です。
ただ、この爻の結論は「吉」ではなく「貞なり」です。ここが肝心で、二爻は“勝ちを得る”よりも、旅の条件にかなう振る舞いを守ることを求めています。旅はそもそも大きな伸長を狙う局面ではなく、乏しさや不自由を抱えながら、まずは身の安全を保つ局面だからです。だから象伝も「終に尤めなきなり」と言い、称賛よりも、最後まで大きな咎めを受けずに済むという着地の堅さを示します。
まとめると、
- 居場所が定まり
- 手許の資金が尽きず
- 助力者も得られる
そのうえで分を守れば、旅の不安定さの中でも崩れずに持ちこたえられる――それが二爻の趣旨です。
◆ 含まれる教え
- 旅の局面では「宿(拠点)・資金(持ち分)・助力者(実務)」が揃うと、安定する。
- 派手に手を広げるより、「分を守る」ほうが安全を保つことができる。
- 余裕が出ても深追いしない。旅は“自ら足る”で止めるのが強い。
- 仕切り直すなら、まず土台(居場所・手許の資金・役割)から。
◆ 仕事
仕事では、まず「次に即く」が効きます。つまり、担当者・席次・現場・拠点が決まり、動き方が安定する暗示です。「資を懐く」は、必要な予算・材料・時間など、当面の運用に足りる“手許の資金”が確保されること。「童僕を得」は、現場を回す人、補佐役、裏方など、支える力が加わることを示します。
ただし二爻は拡張発展の爻ではありません。
いま必要なのは、
- 無理に成果の拡張を狙わない
- 役割分担と手順を整える
- 取れる範囲のものを確実に取る、
という運びです。交渉や取引も、欲を張って長引かせるより、程よい線でまとめるほうが信用が残ります。
◆ 恋愛
恋愛では、「次に即く」がまず“安心できる形”として出ます。会う場所や距離感、連絡の型などが整い、関係が落ち着きやすい。
「資を懐く」は、気持ち・時間・余裕が少し戻り、相手と向き合うための持ち分ができること。「童僕を得」は、関係を助ける段取りや、自然な流れ、理解者など、間接的な支えがつくと読むと筋が通ります。
ここでも大切なのは「貞」です。盛り上げて一気に決めに行くより、
- 無理のない頻度で会う
- 約束を増やし過ぎない
- 心地よい型を作って守る
このほうが“旅の恋”は安定します。結果として「終に尤めなき」――後で揉めにくい、静かな良さにつながります。
◆ 火山旅・二爻が教えてくれる生き方
仮の場では、力で押す人より、整えて守れる人が強い。
居場所を確保し、手許の資金を保ち、助けを得て、分を越えない。そうして静かに歩めば、旅の不安定さの中でも安定を保つことが出来、最後に咎めを受けにくい――火山旅の二爻は、その堅実な道を教えています。

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