周易64卦384爻占断
331、火山旅(かざんりょ)初爻
◇ 火山旅とは何か?
火山旅(かざんりょ)は、山(艮)の上にある火(離)が止まることなく燃え移ってゆく卦で、「旅=仮の身」「寄寓(きぐう)」「場を移して過ごすこと」を示します。旅先では、土地の習いも人との距離感も、自分の思う通りにはなりにくい。だからこそこの卦は、勢いで押すよりも、身の置き方・節度・分を守ることが運を左右すると教えます。小さな振る舞いが大きく響きやすい――その繊細さまで含めて「旅」です。
◆ 卦全体が教えてくれること
旅の時は、根を下ろして大きく広げるより、無用な摩擦を作らず、淡々と処理するほうが吉になりやすい。
焦って成果や名声を取りに行くと、かえって足場の弱さが露わになり、損失が膨らみます。
「ここは仮の場」という感覚を保ち、礼を失わず、必要なことだけを着実に通す――それが旅の処世術です。
◆ 初爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「旅(りょ)・瑣瑣(ささ)たり。斯(こ)れその災(わざわ)いを取(と)るところ。」
【象伝】
「旅(りょ)瑣瑣(ささ)たるは、志(こころざし)窮(きゅう)するの災(わざわ)なり。」
● 解釈
初爻の「瑣瑣(ささ)」は、旅の入り口で心が落ち着かず、小さな利や小さな体裁にとらわれて、せわしなく動く姿です。
旅の始めは、能力や熱意があっても、不慣れな環境や人間関係の未構築から段取りが整いきらず、思い通りに進みにくい。そこを埋めようとして、目先の得を拾いに行ったり、細部にこだわり過ぎたりすると、かえって不利益や争いを生じることになります。
象伝が言う「志窮するの災」は、「うまく行かないこと自体」が凶だというより、行き詰まりへの焦りが心を狭くして、振る舞いを小さくし、結果として災いを呼び込むという戒めです。
この段階で大切なのは、勝利や栄達を求めて動き回ることではなく、まず自分の足元を整えること。小さな欲で動けば大きな損を招きやすいので、分を守り、争いを避け、心を落ち着けて余裕を持つ――そうすれば「災いを取る」流れを断ち切れます。
◆ 含まれる教え
- 旅の始まりほど、焦りから“こせこせ”が出やすい。
- 小利に動くほど、本筋(信用・段取り・礼儀)がおろそかになる。
- 行き詰まった時に焦って動けば災いに変わる。落ち着きが必要。
- まず心を落ち着けて整える。求めるのはその後。
◆ 仕事
仕事では、慣れない場・新しい取引・環境変化の中で、成果を急いで細かな数字や小さな手柄を拾いに行きやすい時です。けれどこの初爻は、そこで動き過ぎると、
- 重要な根回しが抜ける
- 説明不足で誤解が生まれる
- 些細な摩擦が拡大する
という形で、かえって損が増えると見ます。
良い対処方法は、
- まず段取りと合意を固める(順序を守る)
- 小さな成果より、信頼と再現性を優先する
- 争わず、無理な勝負に出ない
です。ここで“忙しさだけ増える動き”を減らすほど、次の展開が整います。
◆ 恋愛
恋愛では、不安から「確かめたい気持ち」が強くなり、連絡頻度や言葉尻など、些細な反応に心が引っぱられやすい時です。瑣瑣は、そうした小さな不安を埋めるための動きが増えて、かえって関係の空気を固くしてしまう象でもあります。
吉の整え方は、
- 返事や反応を急がせない
- “確認のための連絡”を増やさない
- 自分の心を落ち着かせて、穏やかな会話を続ける
です。旅の初めは「まだ土台づくり」の段階なので、焦って距離を詰めるより、安心感を育てるほうが結果的に進みます。
◆ 火山旅・初爻が教えてくれる生き方
旅の入り口は、足場が弱いぶん心細くなりがちです。だからこそ、こせこせ動いて取り返そうとせず、分を守り、礼を失わず、静かに落ち着いて対処する。
小さな利得を得るために落ち着き無く動くことをせず、また騒がしくして小さな乱れを作らない人が、災いを避けて次の道を開く――それが、この初爻の教えです。


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