周易64卦384爻占断
323、雷沢帰妹(らいたくきまい)5爻
◇ 雷沢帰妹とは何か?
雷沢帰妹(らいたくきまい)は、
正規の順序を踏まない結びつきや、
立場に差のある関係性を象徴する卦です。
「帰妹」とは、若い女性が正妻として迎えられるのではなく、
本来の中心ではない位置で関係に入ることを指します。
そのためこの卦では、感情や勢いに流されることへの戒めと、
分を守ることの大切さが一貫して語られます。
五爻は、その雷沢帰妹の中でも、
最も整ったかたちで徳が発揮される位置にあたります。
◆ 卦全体が教えてくれること
雷沢帰妹の卦が示すのは、
欲や衝動に従って前に出ると、かえって道を誤りやすいという教えです。
一方で、立場をわきまえ、控えめで誠実な態度を保つならば、
大きな破綻を避け、穏やかな吉を得る道も残されています。
五爻は己の分を守り、驕らず、慎んだ態度を貫くことで吉に至る
という、この卦の最も良い姿を示しています。
◆ 五爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「帝乙(ていいつ)妹(まい)を帰(とつ)がしむ。
その君の袂(たもと)は、その娣(てい)の袂(たもと)の良(よ)きにしかず。
月(つき)望(ぼう)に幾(ちか)し。吉。」
【象伝】
「帝乙(ていいつ)妹(まい)を帰(とつ)がしむ。
その娣(てい)の袂(たもと)の良(よ)きにしかざるなり。
その位(くらい)中(ちゅう)に在(あ)り、貴(とうと)きをもって行(い)くなり。」
● 解釈
この爻は、王である帝乙が、自らの妹を諸侯に嫁がせる場面を象徴しています。
ここで重視されているのは、身分の高さや外見の華やかさではありません。
「その君の袂は、その娣の袂の良きにしかず」とは、
衣服が粗末であるという意味ではなく、
飾り立てて夫の寵を求めることをしないという態度を表しています。
外見や立場を誇らず、内に徳を備えることこそが尊ばれています。
また「月望に幾し」とあるのは、
満月の直前、すなわち満ち切る一歩手前で止まる姿勢を意味します。
行き過ぎず、欲張らず、控えめであることが、
妻として、また人としての正しい在り方であると説かれています。
象伝が述べる「位中に在り、貴をもって行く」とは、
地位の高さを誇ることではなく、
精神的な品位を重んじて物事にあたることを指しています。
慎みと節度を失わずに進むことで、自然と吉が備わるのです。
◆ 含まれる教え
- 控えめであることは弱さではなく徳である
- 外見や条件より、内面の整いが信頼を生む
- 欲を満たし切らず、八分で止める姿勢が長く続く
- 分を守ることで、結果として安定と吉を得る
◆ 仕事
仕事においてこの爻が示すのは、
前に出て成果を誇るよりも、全体を整える役割に徹する時であるということです。
能力や実績があっても、それを強く主張すると、
周囲との調和を崩しやすい時期にあたります。
この時は、
- 組織やチームが円滑に回るよう支える
- 無駄を省き、内部を整える
- 上に立つ立場であっても、威圧せず穏やかに導く
といった姿勢が、結果的に評価につながります。
拡大や改革を急ぐより、
今あるものを整え、足元を固めることが、
後の発展の確かな土台となるでしょう。
◆ 恋愛
恋愛面では、焦らず、飾らず、
自然な距離感を保つことが最も大切になります。
相手の気を引こうとして無理をしたり、
自分を大きく見せようとすると、関係に歪みが生じやすくなります。
この爻が示すのは、
- 相手の反応を急がない
- 結論を早く出そうとしない
- 魅力を誇示するより、安心感を大切にする
という姿勢です。
満月の一歩手前にたとえられるように、
今は結実の途中にあり、静かに待つことで完成に近づく関係と読めます。
控えめな誠実さは、やがて深い信頼へと変わっていくでしょう。
◆ 雷沢帰妹・五爻が教える生き方
雷沢帰妹の五爻は、
分を守り、成果の拡大を望まず、慎みを失わないで静かに整えることが最上の吉である
と教えています。
満たし切らず、出過ぎず、誇らない。
その姿勢が人との関係を長く安定させ、
結果として最も確かな幸福へとつながります。
今は万事に慎み深くして八分目のところで良しとし、出過ぎないように心がける時。
その在り方こそが、この爻の示す正しい歩みです。

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