周易64卦384爻占断
318、風山漸(ふうざんぜん)上爻
◇ 漸とは何か?
風山漸(ふうざんぜん)は、「物事が少しずつ段階を踏んで整っていくさま」を表す卦です。
急激な変化や一気の成功を良しとせず、時間をかけて秩序を守りながら進むことに価値があると教えます。
漸の道とは、進みながら同時に身を正し、形を整えていく道なのです。
◆ 卦全体が教えてくれること
この卦が一貫して語るのは、「順を守ること」です。
才能や勢いがあっても、段階を飛ばせば必ず歪みが生じます。
反対に、控えめでも順序を外さなければ、やがて確かな成果に至ります。
卦の終わりである上爻では、進みきった後の在り方が問われます。
得たものをどう扱うか、ここで卦の真価が試されるのです。
◆ 上爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「鴻(かり)・逵(き)に漸(すす)む。その羽(はね)もって儀(ぎ)となすべし。吉。」
【象伝】
「その羽(はね)もって儀(ぎ)となすべきの吉(きち)は、亂(みだ)すべからざるなり。」
● 解釈
上爻は、鴻がついに雲の路を飛ぶ姿を示しています。
水辺から始まり、岩、陸、木、丘と段階を踏んで進んできたものが、最終的に空へ至る――これは、努力が実を結び、地位や役割が定まった状態を象徴します。
しかし、この爻の吉は「さらに上へ進めばよい」という意味ではありません。
象伝が強調するのは「亂すべからず」、つまり秩序を崩してはならないという点です。
雁が列を乱さず飛ぶように、立場が高くなった時ほど、振る舞いを整え、常道から外れないことが求められます。
ここでは、成果そのものよりも、成果を得た後の態度が問われています。
慢心して新たな欲を追えば、これまで築いた秩序は一気に崩れます。
だからこそ「もって足れり」と心得て、これ以上を望み過ぎない慎みが、この爻の吉を守ります。
また、外からは華やかに見えても、内側が空虚になりやすい時でもあります。
高い評価や名声に包まれている時ほど、足元を点検し、支えとなる中身を保つ必要があります。
進むよりも、内実を整え、これを守る――それが上爻の示す正しい姿勢です。
◆ 含まれる教え
- 成果を得た後こそ、態度と行いを整えることが大切
- 高い位置にある時ほど、秩序を乱さない自制が求められる
- これ以上を望み過ぎず、「十分である」と知ることが吉を保つ
- 外の評価より、内実が伴っているかを確かめる時
- 進むよりも、守ることで価値が完成する
◆ 仕事
仕事では、長年の積み重ねが認められ、役割や立場が確立する時です。
周囲から信頼され、見本のように扱われる場面も増えるでしょう。
ただし、この段階で新しい拡大や強引な改革を行うのは適しません。
やり方を崩さず、決まりや手順を丁寧に守ることが、結果的に評価を安定させます。
成果を広げるよりも、今ある仕組みを整え、無理のない形に保つことが最善です。
◆ 恋愛
恋愛では、関係が落ち着き、周囲からも安定して見られやすい時期を示します。
感情に振り回される段階を越え、礼や思いやりを大切にできる状態です。
ただし、関係を急に進めたり、理想を押しつけたりすると、かえって歪みが生じます。
今は派手な進展よりも、日常のやり取りを丁寧に重ねることが重要です。
穏やかさと節度を保つことで、関係は自然に深まっていきます。
◆ 風山漸・上爻が教える生き方
風山漸の上爻は、努力が実を結び、一定の完成に至った姿を示します。
しかし、その完成は「さらに上を目指す」ことで守られるのではありません。
秩序を乱さず、己を誇らず、内実を整えて保つ。
この慎みこそが、上爻の吉を真の吉にする生き方です。


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