周易64卦384爻占断
308、艮為山(ごんいざん)2爻
◇ 艮とは何か?
艮為山(ごんいさん)は、山のように動かず、立ち止まることで身と道を守る時を示す卦です。艮の「止まる」は、消極的な停滞ではなく、動きたい衝動や外からの圧に対して、節度をもって身を制する働きを意味します。進めば失い、止まれば整う――その分かれ目に立つ時の心得を教えるのが艮です。
⸻
◆ 卦全体が教えてくれること
艮の卦は、判断や行動を前に進めるよりも、まず足元を固めるべき局面があることを示します。周囲が動いている時ほど、こちらも動かねばならぬように感じますが、無理に流れに乗ると心身の安定を得る事ができなくなります。止まるべき所で止まり、余計な動きを抑えることで、過ちや後悔を避ける道が開けます。
⸻
◆ 二爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「その腓(こむら)に艮(とど)まる。その随(したが)うを拯(すく)わず。その心(こころ)快(こころよ)からず。」
【象伝】
「その随(したが)うを拯(すく)わざるは、未(いま)だ退(しりぞ)き聴(き)かざるなり。」
⸻
● 解釈
二爻は「腓(こむら)」、すなわちふくらはぎに止まる姿で表されています。腓は自ら主導して動く部分ではなく、腰や上体の動きに従わざるを得ないところです。このため二爻は、止まろうとする気持ちはあっても、自分一人の判断だけでは進退を決めきれず、周囲や上の動きに引きずられやすい立場を示しています。
「その随う」とは、こちらが従っている相手や状況を指しますが、相手はこちらの言を聞きいれいてくれません。そこで「拯わず」となります。相手を助けて軌道修正する力もなく、かといって自分の意志で離れることもできない。その結果、心が晴れず、「快からず」と感じる状態になります。象伝の「いまだ退き聴かざるなり」は、退くべき時に退かず、相手の動きを受け流す余裕も持てないために、関係がぎこちなくなっていることを示しています。
つまりこの爻は、物事が自分の思い通りに運ばず、誰かや何かに従わざるを得ない立場で不満を抱えやすい時を表します。艮の本義である「止まる」ことが十分に行えず、進退の板挟みになって心が乱れる――それが二爻の姿です。
⸻
◆ 含まれる教え
- 止まりたいのに止まれない時は、外の力に引かれていることを自覚する
- 相手を動かそうとするより、まず自分の距離の取り方を整える
- 退く判断を曖昧にすると、不快と消耗が積み重なりやすい
- 無理に従うより、身を引く準備をすることが守りにつながる
⸻
◆ 仕事
仕事では、上司や関係者の意向に左右され、自分の考えが通りにくい時です。方針に違和感があっても、従わざるを得ず、心が晴れない状態になりやすいでしょう。ここで無理に主導権を握ろうとすると摩擦が強まり、かえって立場を不安定にします。
この爻が示す処し方は、正面から流れを変えようとするのではなく、関わり方を調整することです。役割や責任の範囲を明確にし、深入りを避ける。退くべき所では一歩引き、判断を先送りにすることで、無用な衝突を避けるのが賢明です。共同事業や連携は、条件が整うまで慎重に扱うべき時です。
⸻
◆ 恋愛
恋愛面では、相手の気持ちや都合に引きずられやすく、自分の本心を抑え込みがちな時と見ます。距離を置きたいのに流されてしまう、関係を見直したいのに言い出せない、といった不快感が溜まりやすいでしょう。
この爻は、相手を変えようと働きかけるより、自分の立ち位置を守ることを勧めています。連絡や会う頻度を調整するなど、具体的な線引きをすることで、心の負担を軽くすることができます。気持ちが定まらないまま関係を進めるより、一度立ち止まる方が後悔を避けられます。
⸻
◆ 艮為山・二爻が教える生き方
艮為山の二爻は、止まるべきと知りながら、周囲に従わざるを得ず、心が快くない局面を示します。そのような時こそ、無理に合わせて進まず、退く準備を整えることが大切です。身の分を守り、距離を正すことで、やがて心も落ち着きを取り戻す――それがこの爻の教える生き方です。

コメント