307、艮為山(ごんいざん)初爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

307、艮為山(ごんいざん)初爻

◇ 艮とは何か?

艮為山(ごんいさん)は、山のように動かず、みだりに出ないことで身を保つ時を表す卦です。ここでいう「止まる」は、ただ何もしないという意味ではありません。動きたくなる気配や、外からの誘いが立ったときに、そこへ軽く乗らず、まず足もとを正して筋を外さないこと――その慎みが中心になります。艮は、動くことよりも「動かぬことで崩れを防ぐ」道を教えています。

◆ 卦全体が教えてくれること

艮の卦は、事を動かすよりも、止まって守るほうが理にかなう局面があることを示します。進めば進展しそうに見える時ほど、実は判断が粗くなり、無用の障碍を招きやすいものです。だからこそ、まず止まり、乱れを鎮め、分を守り、次に動くべき道が整うのを待つ――それが艮の筋道です。

◆ 初爻の爻辞と象伝

【爻辞】

「その趾(あし)に艮(とど)まる。咎(とが)なし。永貞(えいてい)に利(よろ)し。」

【象伝】

「その趾(あし)に艮(とど)まるは、未(いま)だ正(せい)を失(うしな)わざるなり。」

● 解釈

初爻は卦の最下にあり、「止まる」働きがまず趾、すなわち足もとに現れる段階です。足が止まれば、身は軽々しく前へ出ません。したがってこの爻の要点は、今は動いて成果を取りに行くより、まず止まって身を乱さないことにあります。

爻辞が「咎なし」と言うのは、ここで不用意に動かなければ、道を踏み外しにくいからです。さらに「永貞に利し」と続くのは、止まる姿勢を一時の我慢で終わらせず、貞しさを長く保つほど益がある、という意味合いです。動きたい気持ちや他からの誘いが強まる時ほど、進んでもよいと見てしまいがちですが、この爻はむしろ「止まる方針を堅持すること」を勧めます。

象伝の「未だ正を失わざるなり」は、位の形だけを言っているのではなく、艮の「止まるべき道」から外れていないという点を捉えた言葉として読むのが自然です。趾で止まっている限り、身が勝手に動いて筋を外すことがない。つまり、止まることそのものが正しさを守る働きになっている、ということです。

また、艮の卦では、上の位ほど「止まる道」の良さが大きく表に出ますが、初爻は大きな栄達を語るよりも、まず「咎なし」によって無事を得る段階として現れます。ここで前へ出ると、変じて山火賁(さんかひ)となる含みもあり、体裁や見栄に引かれて飾り立てるほど失敗を招きやすい、という戒めにもつながります。ゆえに、新規の企てや拡げる動きは慎み、今ある土台を守ることが筋にかないます。

◆ 含まれる教え

  • 動きたくなる時ほど、まず足もとを止めて乱れを防ぐことが大切です
  • 「止まる」は消極ではなく、正しさを守るための積極的な選択です
  • 一時の停止では足りず、貞しさを長く保つほど損を避けやすくなります
  • 体裁や見栄に引かれた動きは破れやすいので、守りを重視します。

◆ 仕事

仕事では、動けば展開が早まりそうに見えても、足場が固まりきっていないことが多い時です。この初爻の「趾に艮まる」は、まず基礎を動かさないという教えですから、転職・増資・拡張・新規の大きな計画など「広げる動き」よりも、現状を整え、守りを厚くする方針が適します。

具体的には、未処理の案件の片づけ、手順の見直し、数字や契約条件の詰め、関係者との合意形成、体制の補強など、いま動かずにできる整備を丁寧に積み上げることです。誘いが来ても即断で乗らず、情報を揃え、リスクを洗い、決めるなら決める、見送るなら見送るという筋を立てるのがよいでしょう。「咎なし」は、派手な前進よりも、失点を作らないことに価値がある局面を示しています。

◆ 恋愛

恋愛では、関係を進めたい気持ちが出やすい一方で、進め方を誤ると後にしこりを残しやすい時を示します。「止まる」は、関係を断つという意味ではなく、急いで形を整えようとしない、という慎みです。相手の反応を確かめたくて押しすぎる、結論を急ぐ、周囲の目を意識して体裁を整える――そうした動きは、かえって不安定さを増しやすくなります。

ここは、言葉の選び方や距離感を整え、誤解の種を増やさないことが第一です。相手の生活や事情を尊重し、確認すべきことは静かに確かめ、焦りで関係を動かさないことが「永貞に利し」に通じます。縁談についても、まとめにかかるより、いったん見合わせて無事を取るほうが安全、と読むのがこの初爻の筋です。

◆ 艮為山・初爻が教える生き方

艮為山の初爻は、足もとで止まることで正しさを失わずに済む、という道を示します。動けば何かが変わりそうに見えても、今は動かず、貞しさを保ち咎を免れる。大きく勝ちに行くより、崩れを防ぎ、無事を積み重ねる――それがこの爻の教える生き方です。

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