周易64卦384爻占断
305、震為雷(しんいらい)5爻
◇ 震とは何か?
震為雷(しんいらい)は、雷のように突然の変化や動きが起こり、人の心や状況を大きく揺さぶる時を表す卦です。震は単なる驚きや混乱を意味するのではなく、その驚きを通して人が身を慎み、態度や行動を正すことで、災いを避け、秩序へと立ち戻る働きを含んでいます。動揺は避けられないものですが、それをどう受け止め、どう対処するかが問われる卦です。
⸻
◆ 卦全体が教えてくれること
震の卦は、事態が落ち着かず、先が読みにくい時における心構えを教えています。出来事が急に起こり、繰り返し揺さぶられる中でも、恐れを単なる不安として終わらせず、戒めとして受け取るならば、行動に節度が生まれます。震は混乱の始まりであると同時に、立て直しへ向かう入口でもあり、乱れの中でこそ「何を守るべきか」が明らかになります。
⸻
◆ 五爻の爻辞と象伝
【爻辞】
「震(しん)往来(おうらい)すること厲(あやう)し。億(おお)いに有事(ゆうじ)を喪(うしな)うことなし。」
【象伝】
「震(しん)往来(おうらい)すること厲(あやう)きは、危行(きこう)なり。その事(こと)中(ちゅう)に在(あ)り。大(おお)いに喪(うしな)うことなきなり。」
⸻
● 解釈
五爻に示される「震往来する」とは、出来事が一度起きて終わるのではなく、動揺が繰り返され、落ち着く間がない状態を表しています。問題が解決したと思えば再び動き、状況が行きつ戻りつするため、心身ともに休まらず、「厲し」と感じられる局面です。
しかし、この爻は混乱の中で「大きく失う」とは語っていません。ここで言う「有事」とは、財や目先の利益ではなく、放り出してはならない役割や責任、続けるべき務めを指します。震が往来して危うい状況にあっても、根本となる役目までは失わずに保てる、というのがこの爻の眼目です。
象伝が「危行なり」と述べるように、進み方は決して安定したものではありません。足場は揺れ、判断も容易ではなく、慎重さを欠けば転びかねない状態です。ただし同時に「その事中に在り」とあります。五爻は中を得た位置であり、偏りすぎず、極端に走らず、揺れの中でも中心を外しにくいところにあります。そのため、力で事態を抑え込もうとせず、中庸を心がけ、柔らかく状況に応じることで、守るべき事柄を保ち続けることが可能になります。
この爻が示す吉意は、混乱が収束することではありません。動揺は続き、危うさも消えません。その中で、投げ出してはならないものを見失わず、持ちこたえることができる点に価値があります。変動期において、耐えながら役目を全うする姿を表す爻です。
⸻
◆ 含まれる教え(箇条書き)
- 物事が行きつ戻りつ動揺する時ほど、拙速な判断を避ける必要があります
- 混乱の中では、新しい成果よりも、守るべき務めを保つことが重要です
- 強く押し返すより、柔らかく受け止めて中心を保つ姿勢が安全です
- 変動期には「失ってはならないもの」を見極める力が試されます
⸻
◆ 仕事
仕事においては、環境や条件が安定せず、方針変更や予定の揺り戻しが起こりやすい時です。状況が二転三転し、腰を据えて進めにくいため、判断に迷いが生じやすくなります。象伝のいう「危行」とは、この不確かな足場で仕事を続ける難しさを示しています。
この爻が勧めるのは、混乱の中で新しい成果を狙うことではありません。業務の根幹や、自分が担うべき役割を手放さず、状況に応じてやり方を調整しながら持ちこたえることです。計画の見直しや段取りの変更はあっても、責任の中心を外さない姿勢が、結果として大きな損失を防ぎます。派手な前進よりも、継続と維持が評価される時です。
⸻
◆ 恋愛
恋愛では、気持ちや関係性が定まりにくく、距離感が揺れやすい時を示します。相手の態度が変わりやすかったり、関係が進みそうで進まなかったりして、不安が増えやすい局面です。「厲し」とされるのは、この落ち着かなさが心に負担をかけるためです。
ただし、この爻は関係の根本が失われることまでは示していません。大切なのは、感情に振り回されて無理に結論を出そうとしないことです。誠実さや節度といった、関係の土台を守りつつ、相手や状況の変化に柔らかく対応していくなら、決定的な破綻は避けやすくなります。今は大きく動かすより、関係を保つ工夫が求められる時です。
⸻
◆ 震為雷・五爻が教える生き方
震為雷の五爻は、思いがけない事態や驚きごと、動揺などが繰り返され、危うさの中に置かれても、為すべき務めを投げ出さず、中庸を保って事態に柔軟に対処して忍耐する姿勢を教えています。混乱を消滅させようとするのではなく、その中で何を守るかを見極め、柔らかく対応し続けること。変動期において大きな喪失を避けるための、生き方の指針がこの爻には示されています。

コメント