周易64卦384爻占断
299、火風鼎(かふうてい)5爻
◇ 鼎とは何か?
火風鼎(かふうてい)の「鼎(かなえ)」は、食物を煮る器を象徴としつつ、易ではそれを超えて、人や物事を養い、整え、価値ある形へ仕上げていく働きを表します。
壊して改めるだけでは終わらず、新しい中身を迎え入れ、時間をかけて煮込み、香りと滋味を引き出して完成させる。鼎はその段階を担います。
また鼎は、器として「耳の中が空である」ことに意味があり、空であるからこそ良いものを受け入れ、育て、広く役立てられる――そうした徳も含みます。
◆ 卦全体が教えてくれること
鼎の卦が教える中心は、堅実な育成です。
勢いで押し切るより、良いものを見分けて取り入れ、整え、少しずつ確かな形へ仕立てていく。そうしてこそ、人も仕事も、長く続く実りになります。
とくに鼎は「聖賢を養う」と言われるように、目立つ成果だけを追うのではなく、中身を充実させることが運を強くします。五爻はその要点が最もよく現れる場所です。
◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞(読み)】
「鼎(かなえ)・黄耳(こうじ)金鉉(きんげん)。貞(てい)に利(よろ)し。」
【象伝(読み)】
「鼎(かなえ)黄耳(こうじ)は、中(ちゅう)もって実(じつ)となすなり。」
● 解釈
五爻は鼎の「耳」に当たります。鼎の耳は、鉉(つる)を掛けて持ち上げ、火から離し、煮えたものを正しく取り扱うために欠かせない部分です。ここが整っていなければ、どれほど中身が良くても、鼎としての働きが安定しません。
「黄耳」とあるのは、耳が立派だというだけではなく、偏りのない中正の徳を備えた“受け取る力”を言っています。聞くべき言葉を聞き、良い助言を取り入れ、物事を整えていく姿勢が確立している――それが黄の意味です。
そして「金鉉」は、その耳に掛けられる支えです。自分だけで抱え込まず、助けとなる存在・補佐してくれる力を得ることで、鼎は初めて安定して用いられます。ここで大切なのは、助けを借りることが弱さではないという点です。鼎の耳は本来「中虚」で空いていますが、その空があるからこそ鉉が掛かり、実際に機能する器になる。
象伝の「中もって実となすなり」は、まさにこのことを一息で言い切っています。空であること(受け入れられること)が、正しい支えを得ることで現実の力(実)に変わる。 だからこそ「貞に利し」と結ばれます。ここでは派手な勝負よりも、正しい姿勢を保ち、筋を守り、堅実に積み上げることが最上とされます。
要するにこの爻は、器が整い、良い言葉と良い支えによって、物事がうまく取り運ばれていく段階を示しています。自分の才を誇るより、善きものを受けて活かし、成果を長く保つ。鼎の徳が最も美しく働くところです。
◆ 含まれる教え
- 受け入れる余地(中虚)を保つことが、器を大きくする
- 偏らない耳(黄耳)があってこそ、言葉も人も活きる
- 支え(鉉)を得ることで、力は安定して発揮される
- 善言を受け入れ、堅実に積み上げるほど、成果は長く続く
◆ 仕事
仕事では、独断で押し切るより、助言を受けて整えることが成果につながる時です。
上の立場・経験ある人の言葉、あるいは現場の声を落ち着いて受け取り、手順を整え、無理のない形に仕立てていく。そうすれば、結果は派手ではなくとも確実に積み上がります。
一方で、周囲の意見にただ流されるのではなく、「貞に利し」の通り、軸を保ちながら用いるのが肝要です。
◆ 恋愛
恋愛では、相手を理解し、関係を整える力が増す時です。
感情の勢いで結論を急ぐより、相手の言葉をよく聞き、落ち着いてやり取りを重ねることで、信頼が育ちます。
相手の気持ちを受け止めつつ、自分の大切なところも守る――そのバランスが、関係を長く安定させます。
◆ 火風鼎・五爻が教える生き方
この爻が教えるのは、善言を受け入れ、内容を整え、成果を長持続させるという生き方です。
空であることは欠けではなく、器の強さです。そこに善い言葉と善い支えが掛かるとき、器は確かに働き始めます。
派手に勝つより、筋を守って実績を積み上げる。人材を起用し、善言を用い、自分もまた養われていく。そうして鼎の功を長く保つ――それが五爻の到達点です。

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