周易64卦384爻占断
297、火風鼎(かふうてい)3爻
◇ 鼎とは何か?
火風鼎(かふうてい)は、古いものを取り除いて器を整え、新しい中身を入れて煮あげ、世を養うことを象(かたど)った卦です。
鼎は「料理の器」であると同時に、「人や才を用いて、価値あるものを世に出す仕組み」でもあります。だからこそ、中身が良くても、扱い方(火加減・手順・引き上げ方)を誤ると、食べられるものが食べられない――という現実的な教えが強く出ます。
三爻は、まさに“美味が鼎の中にあるのに、取り出せない”場面を描くところです。
⸻
◆ 卦全体が教えてくれること
鼎が教える大枠は、次の通りです。
- 中身が良いほど、取り扱いの失敗が目立つ
- 勢いが強すぎると、器の要所(耳・鉉)が役目を失い、取り回しができなくなる
- いったんは止まり、冷まし、整えることで、悔いが消え、最後に吉へ収束する
鼎は「中身」だけでなく「扱い方」まで含めて完成です。三爻はその急所を突きます。
⸻
◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞(読み)】
鼎(かなえ)・耳(みみ)革(あらた)まる。
その行(こう)塞(ふさ)がる。
雉(きじ)の膏(あぶら)食(く)らわれず。
方(まさ)に雨(あめ)ふれば悔(くい)を虧(か)き、終(つい)に吉(きち)。
【象伝(読み)】
鼎(かなえ)の耳(みみ)革(あらた)まるは、その義(ぎ)を失(うしな)うなり。
⸻
● 解釈
三爻は陽爻で、鼎の中身としては充実しています。しかも三陽の真ん中にあって、最も滋味のある部分に当たると見ます。そこで「雉の膏」という、たいへん旨いものにたとえられています。
つまり、欲しい結果・価値ある成果は、すでに目の前(鼎の中)にある。ここが出発点です。
しかし問題は「耳が革まる」です。鼎の耳は、鉉(つる)を掛けて持ち上げ、火から外して、料理を供するための要所です。そこが熱や勢いで変形してしまう。すると「行塞がる」――取り出せず、外へも運べない。
中身は良いのに、肝心の中身を取り出す事ができず、食べることができない。これが「雉の膏、食らわれず」です。
ではどうするか。ここで「方に雨ふれば」と言います。雨は火勢を鎮め、熱を冷まし、沸騰を落ち着かせます。
つまり、今の局面に必要なのは、勢いのまま押し通すことではなく、火加減を落として冷ますこと、言い換えると、
- 強硬に押さない
- いったん間合いを取り、態度・手順・体制を整え直す
という方向転換です。
「悔を虧き」は、痛い思いが消えるというより、“食べられるのに食べられない”という悔しさが、冷まして整えることで解けていくという筋です。
象伝が「その義を失う」と言うのは、鼎の耳が変形すると、鼎としての正しい働き(道理・用い方)を失ってしまう、という警告です。
だから三爻は、強さや勢いが裏目に出て、せっかくの価値を取り逃がす危険を示しつつ、冷静に手順を整えれば最終的に吉へ至る、と結びます。
⸻
◆ 含まれる教え
- 価値ある成果があっても、勢いに任せて取り出す仕組み(要所)を壊すとそれが無駄になる
- 勢いが強すぎる時ほど、やり方が粗くなり、ゆき詰まる
- いったん「冷ます」ことで、悔いが薄れ、最後に取り戻せる
- 強硬策は“得たいもの”を目の前で失わせやすい
- 方針転換は敗北ではなく、失敗を未然に防ぐための調整
⸻
◆ 仕事
仕事では、伸びしろも実力も利益も見えるのに、運び方が強すぎて詰まる時です。
押し切ろうとするほど、周囲が固くなり、要所(決裁・段取り・協力者)が機能しなくなる。結果として、取れるはずの成果が手元に来ません。
ここは、
- 強硬な進め方をいったん緩める
- 詰まっている要因(手順・体制・温度感)を冷静に整える
- “取り出す役”が働ける状態に戻す
この調整が最優先です。そうすれば、最後は吉に寄ります。
⸻
◆ 恋愛
恋愛では、気持ちが熱くなりやすく、勢いで押すほど、相手の心や環境が固くなって、かえって進まなくなる象です。
魅力や可能性はあるのに、「言い方」「詰め方」「距離の詰めすぎ」で、手応えを失いがちです。
いったん落ち着いて、
- 温度を下げる
- 進め方を柔らかく変える
- 余裕ある時間を作る
こうすると、悔いが薄れて、最終的にまとまりやすくなります。
ただ、支障や苦情が多い時でもあるので、無理に押し通すのは避けるのが賢明です。
⸻
◆ 火風鼎・三爻が教える生き方
「中身はある」のに、勢いが強すぎて“取り出す方法”を失う――これが三爻の核心です。
欲しいものがあるほど、力があるほど、強く出たくなる。けれど、その強さが手がかりを壊し、手順を塞ぎ、目前の実りを遠ざけます。
だからこそ、いったん冷ます。態度を変え、仕組みを整え、運びを回復させる。
その調整ができれば、悔いをなくす事が出来、最後は吉へ収まる――三爻は、過熱による悔いを制して成果を取り戻す道筋を教えています。


コメント