周易64卦384爻占断
288、水風井(すいふうせい)上爻
◇ 井とは何か?
水風井(すいふうせい)は、井戸の象によって、人や世を潤す力(徳・才・資源)は、正しく汲まれてこそ生きることを示す卦です。
下で濁りを遠ざけ、側を整え、清い水を保ち、最後は上で「どう扱うか」が問われます。
上爻は陰なので水そのものではなく、井戸の上部――ふたをする場所に当たります。卦の終わりにあり、用の終わりとしては「汲み終えたところ」に立つ爻です。
◆ 卦全体が教えてくれること
井の徳は、独り占めせず、分け隔てなく、人が求めれば汲ませるところにあります。
ここで大切なのは、「得たから守りに入る」ではなく、
- 価値あるものほど自分だけのものとしない
- 誠(まこと)を保って人に渡す
- 井の働きを、最後までやり切る
という姿勢です。上爻は、その完成形を示します。
◆ 上爻の爻辞と解釈
【爻辞(読み)】
井(せい)收(く)みて幕(おお)う勿(なか)れ。孚(まこと)有(あ)りて元吉。
【象伝(読み)】
元吉上に在(あ)り、大(おお)いに成(な)るなり。
● 解釈
上爻は、井戸の「いちばん上」、ふたをする位置にあります。けれども爻辞は「井(せい)收(く)みて幕(おお)う勿(なか)れ」――汲み終えたからといって、ふたをして閉じるなと告げます。
これは、無用心に放置せよ、という意味ではなく、井の徳である「往来井井」の精神――分け隔てを設けず、必要な人が自由に汲めるようにしておけということです。人にたとえるなら、濁りを去り、難きを修め、それを人が汲み取って養いとし、しかも尽きず拒まず――そういう「大徳」の姿になります。だからこそ「孚(まこと)有(あ)りて元吉」。誠が通って、はじめから大いに吉なのです。
象伝の「元吉上に在り、大いに成るなり」は、まさにここが人としての大成・仕上げに当たることを言っています。これまで繰り返し努めてきたことが、ここでようやく功を奏し、その利益は自分だけに留まらず、多くの人にも及びます。
また、この爻は「一段落だから休め」と言うより、むしろ「幕う勿れ」とあるぶん、安心して止まるのではなく、誠を保ったまま働きを続けよという含みがあります。変じて巽為風(そんいふう)となる意も踏まえるなら、風のように広がり、利益を生む面も出ますが、「果たさず」の気配もあるので、最後の詰めを怠らない――そこが要点です。
◆ 含まれる教え
- 価値が定まったときほど、成果を回収することなく開いて活かす
- 誠(まこと)を保つほど、吉は大きくなる
- 自分の成果を独占せず、周りも潤す形にする
- 「終わった」と思うところで、もう一段の努力が要る
- 広がり(利益)が出た時ほど、詰めの甘さに注意する
◆ 仕事
滞っていたことが動き出し、形になり、利益にもつながりやすい時です。
これまでの辛労刻苦や、同じことを繰り返し努めた積み重ねが「効いてくる」局面で、成果が自分一人に留まらず、周囲にも及びます。
ただし「幕う勿れ」です。いったんうまく回り始めたからといって、守りに入りすぎたり、手を緩めたりすると「果たさず」の含みが出ます。開いたまま、整えたまま、多くの人にその成果を提供して吉です。
◆ 恋愛
全体としては「誠が通るほど吉が大きい」爻です。ただ、この爻には「往来井井」の象があり、恋愛に当てると、関係の区切りが曖昧だとこじれやすい面が出ます。
- 誠実さを第一にして、言葉と行動を揃える
- 相手に安心できる“線引き”をはっきり示す
- 話が広がりやすい時ほど、誤解の芽を早めに摘む
このあたりを丁寧に守れば、吉のほうがよく働きます。
◆ 水風井・上爻が教える生き方
上爻が教えるのは、大成の後は、退いて守ることではなく、誠をもって多くの人にその成果を公開して活かすことだという一点です。
濁りを去り、整え、清め、ここまで来たなら――最後は「多くの人に渡る形」にしてこそ井の功が立つ。
そして、うまくいったときほど「幕う勿れ」。
安心して手を止めることなく、誠を保って、もう一段きちんと歩み切る。上爻は、その完成の美しさを静かに示しています。


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